札幌市では,2018年3月に策定した「第2次札幌市環境基本計画」において,初めて行政計画としてSDGs(持続可能な開発目標)達成を位置づけ,取組を進めています 。
本計画では,「次世代の子どもたちが笑顔で暮らせる持続可能な都市『環境首都・SAPPORO』」を将来像とし,環境,社会,経済分野の統合的取組を推進することで,SDGs達成にもつなげていくこととしています。
特に近年の気候変動をはじめとする環境問題は,地球温暖化の影響による大型の台風や干ばつなどによる世界的な気象災害の増加により,経済的被害やそれに伴う貧困の悪化や健康被害など,我々が消費する資源やエネルギーによる影響が環境分野にとどまらないグローバルな課題につながっており,SDGsはこのような世界の現状への気付きと解決に向けた視点を得るための非常に重要な目標となっています。
札幌市におけるSDGs達成に向けた取組
1 はじめに
2 「SDGs未来都市」と「フェアトレードタウン」
2018年にSDGs達成に向けて優れた提案と取組を行う都市を「SDGs未来都市」として政府が選定する制度が開始され,同年6月に全国から29の都市が選定され,札幌市もその一つに選定されました(翌年2019年にさらに31都市が選定され,現在は60都市が選定) 。
一方,札幌市民のSDGsに関する認知度は必ずしも高いとは言えず,2018年に実施した市民アンケートでは,回答した約半数の市民はSDGsについて「全く知らない」という状況であったことから,まずはSDGsに対する認知度を向上させるため,札幌市が札幌ドームで開催している「環境広場さっぽろ」というイベントでSDGs達成に向けて取り組む企業や団体の紹介を行うほか,様々な主体と連携した企画などにより,その普及を図っています。その取組の一環として2018年から実施している「SDGsクリエイティブアワード」という短編動画作品の表彰制度(主催,SDGsクリエイティブアワード 実行委員会,共催:北海道,札幌市)では,全国から150以上の作品が集まり,第1回札幌市長賞は札幌新陽高等学校の生徒が制作した作品でした 。
この受賞作品は「貧困層をなくすために私達ができること」と題し,途上国の生産物を適正な価格で購入することでその生産者の生活を守る貿易の仕組みである「フェアトレード」を広めるための内容となっています。
この「フェアトレード」についても,札幌市におけるSDGs達成に向けた取組の一環であり,札幌市は,市民団体や企業などとともにまちぐるみでこの「フェアトレード」を推進する自治体として,世界では約2,000都市が認定されている「フェアトレードタウン」に,国内5都市目の自治体として2019年6月に認定されています。
札幌市内では,197万人もの市民が生活するために非常に多くのモノやサービスが販売され,それを消費することで市民生活が保たれています。その一方,「フェアトレード」への取組は,この消費に伴う資源やエネルギーも莫大なものとなっている事実を認識させてくれるほか,この取組自体が私達の消費の先にある途上国の生産者の貧困や飢餓といったSDGsが解決を目指す目標や,「誰一人取り残さない(取り残されない)- No one will be left behind」というSDGsの理念にもつながっていることをは教えてくれます。
3 まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2019とLEED for Cities and Communities
札幌市は2022年に市制施行から100周年という大きな節目を迎えます。市制が施行した1922年には約12万人だった人口は約197万人まで増加し,北海道の中心都市として大きく発展してきました。
その一方,人口減少や少子高齢化という時代の転換点に直面し,今後は,経済規模の縮小や税収の減少が懸念されるほか,医療・介護を始めとした社会保障費の増加や,老朽化した都市基盤の更新需要の集中などにより,財政状況はより一層厳しくなることが予測されています。
このような状況にあっても,誰もが安心して暮らしていける街を実現するため,全ての市民がこの札幌でいつまでも元気に活躍できる環境づくりに取り組むとともに,札幌が魅力と活力を創造し続ける街であり続け,将来にわたって持続可能なまちづくりを進めていく必要があることから,札幌市の行財政運営や予算編成の指針となるものとして,2019年12月に「札幌市まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2019」を策定しました 。
本計画では,SDGsの理念や目標に沿って持続可能なまちづくりを進めていくため,重点プロジェクトや各施策についてSDGsとの関連を示すとともに,多様な主体と連携しながら事業を推進することとしています。
また,近年は,環境(Environment),社会(Social),ガバナンス(Governance)の各分野への取組を判断基準とした投資が注目を集めており,これを評価するものとして,国際的に最も認知されている環境性能評価システム「LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)」の認証を受ける都市や企業が国際的に広がりを見せています。
このような状況を踏まえ,札幌の街を世界基準で捉えるとともに,客観的な評価を活用したシティプロモーションを展開するため,LEEDの認証システムのカテゴリの1つである「LEED for Cities and Communities」の登録申請を2019年9月に行い,2020年1月に最高ランクの「プラチナ」の認証を取得しました。同カテゴリの認証を取得するのは日本の都市では初であり,取得時点において世界で最高得点を獲得したLEED認証都市となりました。
4 おわりに
SDGsは国連で採択されたグローバルな目標ではありますが,気候変動や食品ロス,またそれに伴う世界の貧困や飢餓問題など,地域から取り組むべき課題も数多くあることから,そのような課題解決に向けた取組を率先して実施し,持続可能なまちを構築することで,まちの価値が高まっていくものと考えています。
引用 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/local/page23_003071.html