【開催報告】SDGs未来都市から学ぶ!~SDGsの取り組み方を見つけよう!~
北海道地方ESD活動支援センターでは、自治体におけるSDGsの取り組みに関する学習会を札幌市、北海道と共催で開催しましたので、報告します。
開催概要
[日 時]2019年8月13日(火)13:00~16:00
[会 場]札幌ドーム内 SDGs ゾーン(札幌市)
[対 象]SDGsの取組を検討する行政職員等
[参加者数]36名
[内 容]
〇講演:SDGsと自治体の取組
講演者:国連大学サステイナビリティ高等研究所
プログラムコーディネーター 増田 大美さん
〇情報提供:各SDGs未来都市のテーマについて活動状況等について
〇情報共有を受けて各自治体の相違点や共通点の解説・質疑応答
解説者:(公財)北海道環境財団事務局次長 久保田 学さん
〇グループワーク:自身の事業とSDGsを結びつける
ファシリテーター:(一財)北海道国際交流センター 専務理事 池田 誠さん
〇全体共有・質疑応答
[主 催]札幌市、北海道、北海道地方ESD活動支援センター
[協 力]ニセコ町、下川町
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講演「SDGsと自治体の取組」
国連大学サステイナビリティ高等研究所 増田 大美さん
SDGsに関する国際比較研究の結果によると、多くの国はSDGs実施を進めているが、SDGsにもとづく新しい戦略・計画づくりや地域のモニタリングはまだ始まったばかりである。日本においてもSDGs推進本部の立ち上げ、SDGs実施指針の策定、国の各計画へのSDGs反映が行われている。
地域がSDGsに取り組む意義は、地域の様々な課題の解決に向けて経済、社会、環境面に統合的に取り組む点にある。地域の弱みや強みを客観的に認識し行動することで、パートナーシップの広がりや地域価値の向上につながる。また、国際的にも地域におけるSDGsは注目されており、OECDやASEAN等で自治体の支援プログラムが始まっている。
SDGsは統合(Integration)がキーワードであり、個別ではなく全体を見て取り組み、ゴール間のシナジーやトレードオフを考える必要がある。2030アジェンダ「我々の世界を変革する」という言葉どおり、今の状況をよくする、「変える」ためにSDGsに取り組むことが重要。
情報提供:各SDGs未来都市のテーマについて活動状況等について
道内4つのSDGs未来都市(下川町、ニセコ町、札幌市、北海道)より取り組み状況等について情報提供をいただきました。
下川町SDGsアンバサダー 清水 瞳さん/
下川町 環境未来都市推進課 SDGs推進戦略室長 蓑島 豪さん
人口約3,300人、町の面積9割が森林である下川町。産業の衰退にともない大幅人口減少へ。その現状を打破するために森林に着目し、森林の伐採量と育成量を同等に行う循環型森林経営システムを目指した。2001年、住民からなるまちおこし団体が経済・社会・環境の調和による持続可能地域づくりを打ち出し。2007年には、下川町自治基本条例前文に「持続可能な地域社会の実現を目指す」ことを位置づけ、2008年環境モデル都市、2011年環境モデル都市の認定を受けながら、SDGsの考え方に合致する政策を推進してきた。
取り組みを続けていく中で、移住者の増加、熱自給率5割の達成、個人住民税16%増加等となり環境と経済の好循環が発生している。ここに満足せず、2030年下川町のありたい姿、下川版SDGsを策定した。この実現がSDGsの貢献になる。
下川版SDGsのポイントは、地域住民による策定、進捗を計るための指標の策定、実現に向けて町内外の多様な方と連携して推進すること、誰ひとり取り残さないためにすべての社会問題を包括すること。住民を中心で取り組みを進めてきたことから下川町におけるSDGs認知度は100%に近い。
SDGsはチェックリスト、バックキャスティング、ブランディング等のツールとして下川町は活用している。“誰ひとり取り残さない”は、裏を返せば、全員が取り組むことと思う。自治体は全員が取り組むために何ができるのかを一緒に考えていきたい。
ニセコ町企画環境課長 山本 契太さん
人口5,000人うち約300人の外国人の方が在住しており年々増加している。また、住宅を増やせば人口増加が見込めるのがニセコの現状。転入理由に「ニセコだから」とあげる方がいてブランディングが効いていると感じている。
ニセコ町の取り組み自体SDGsと親和性が高いと考えている。住民参加に長く取り組んできたので、町と住民の情報共有やパートナーシップができている。また、持続可能なまちづくりには環境が要であり、水の保全計画や条例を作ってきた。
ニセコ町のSDGsに関する象徴的な事業は、市街地に超高気密高断熱の住宅建設、地域エネルギー会社の設立である。お金の地域外流出を止め、低炭素社会と持続可能な社会の両立を目指している。今後、新築の建物の燃費についてニセコ町に提出を義務付ける条例の策定予定。それにより地元の工務店さんが高気密高断熱の家を建てられるようになり、お金が地域で回る仕組みにしていきたい。ニセコ町のCO2排出量の7割は建物由来であることから、この問題を解決したい。
これらの考え方を実現するために、6つの条例策定を検討している。環境保全と地域内で経済を回すことで社会もよくしていきたい。
札幌市環境局環境都市推進部環境計画課推進係長 佐竹 輝洋さん
札幌市もSDGsに取り組むことで企業から声がかかる機会が増えるなど、パートナーシップが進んでいるという実感がある。札幌市は、第2次札幌市環境基本計画策定時に国の情報等を見ながらSDGsを取り入れた計画を策定した。同計画ではSDGsのターゲットを踏まえて、長期的目標と管理指標を作成し、SDGsのどのゴールにつながるかを明示した。同計画にSDGsを取り入れた根拠としては、札幌市環境審議会という外部会議において委員からSDGs導入についての意見などがあった。その流れでSDGs未来都市に手をあげた。持続可能な都市を目指しながら、環境から経済、環境から社会への発信を行っていきたい。
SDGsを活用したパートナーシップ。2017年6月に市長へのSDGsへのインプットとして北海道大学等とSDGsをテーマにしたシンポジウム「持続可能な地域づくりシンポジウム~世界が憧れる札幌を目指して~」(詳細はこちらからご覧いただけます)の実施、2019年6月に日本で5都市目となるフェアトレードタウンの認定をいただいた。市民団体や大学とのつながり、そしてSDGsがあったからこそできた。
現在、札幌市長の2期目の公約にSDGsの視点を入れることが明示され、中期実施計画の位置づけについて内部で検討されている。
札幌市民のSDGsの認知度、全く知らないという方が半数近い。しかし、SDGs未来都市になったことから、吉本興業、HTB、中高生、大学生等々いろいろな人と連携できることになった。様々なパートナーシップを活用して持続可能なまちづくりを環境の面から進めていきたい。
北海道総合政策部政策局計画推進課SDGs推進グループ 主幹 渡邉 訓男さん
北海道では、2018年4月に知事を本部長とする北海道SDGs推進本部を設置したところ、いろいろな反響があった。SDGsを具体的にどのように進めていくのかがわからないという声を受け、SDGsに関心のある方であれば誰もが入れる北海道SDGs推進ネットワークの設置を進め、現在の会員は271(2019年7月末 ※2020年2月末 622)となった。また、北海道SDGs推進懇談会を設置し、道の基本的な指針であるSDGs推進ビジョンの策定、そしてSDGs未来都市に認定された。
北海道でなぜSDGsに取り組むのかという声がある。人口だけみても北海道全域で人口減少、札幌市は65歳以上の人口流入が全国でも多い。医療格差等、経済や社会、環境の面で多様な問題があり、道内全体での解決が必要である。また、2016年に改定された北海道総合計画そのものがSDGsのテーマに沿っていて、各種分野別計画の改定の際にSDGsを反映するようにしている。
道民のSDGsの認知度は、「知らない7割」、「知っている1割」であるが、世界では「知っている6割」という調査結果がある。認知度の向上や自分事化にしてもらうために2019年は道内各地域でSDGsのセミナーを開催する。SDGsという言葉はとっつきにくいが、自治体はすでに取り組んでいること。タグ付けだけではなく、何ができるのか、足りないのかを検証していくことが大切である。
情報共有を受けて各自治体の相違点や共通点の解説・質疑応答
解説者:公益財団法人北海道環境財団事務局次長 久保田 学さん
Q 札幌市はSDGsをボトムアップ型で取り組んできたとのことであったが、他の都市の取り組み動機について伺いたい。
下川町は、ボトムアップ型。元々持続可能な地域づくりが町の方針であり、SDGsとの親和性が高かった。職員から総合計画にSDGsを加えてはどうかという提案があり進めていった。
ニセコ町は、トップダウン型。元々ニセコ町とSDGsの考え方の親和性は高い。計画に持続可能性を落とし込まなければならないと首長が考えたのがスタートであった。
北海道は、トップダウン型。2019年1月知事の年頭あいさつにおいて、SDGsに取り組むことが発表された。北海道命名150年という節目の年でもあり、未来世代に持続可能な北海道を残していく必要があるということとも重なった。
Q 計画策定後、職員が事業に反映をさせていく必要があるが、その工夫点について伺いたい。
下川町では、各分野の事業を集めて、政策推進課と連携したプロジェクトを進めている。職員向けには、若手職員を対象とし町とSDGsの関りを考えること、2030年自分が考えられる史上最高の下川町、史上最悪の下川町について考えてもらうワークショップ等をとおして自分事化にしてもらった。
ニセコ町では、経営会議を招集して各担当課長から話を進めた。進めるにあたって議会や住民からも情報公開が足りないという指摘もあった。
札幌市では、SDGs未来都市の提案をする際に他の局との連携するため、計画の改定時にSDGsの導入について提案した。中期実施計画策定の際の調書にSDGsの項目が入っており、職員の意識は増えているが、具体的な進め方や環境・経済・社会の統合についてこれからの課題である。
Q 人口集中に対する対策が都市部、地方では人口減少に対する対策が行われている。北海道における人口に対する取り組みの連携事例があれば伺いたい。
下川町では、流出人口より流入人口が多い。起業者を募集すると5人ぐらい手があるほど。下川町のビジョンとSDGsを共通化させることで連携が可能になった。他に札幌市やニセコ町など全国各地で持続可能な社会をどうつくっていくのかという、学びと実践を行う枠組みに参加している。
ニセコ町は、連携が苦手なのかなと思う。苦手意識を持ちながらも倶知安町と観光局を創生してインバウンド受け入れをどうしていくのかと検討している。
北海道では、関係人口の増加を道内の自治体のネットワークで進めている。
4自治体の共通点
- SDGsは人口規模に関わりなく取り組みができ、課題解決のためのツールである
- SDGsは全く新しいものではなく、これまで行ってきたことを統合的に進めていく相互関連性、まとめて解決していくことがポイント。
- 4自治体一長一短でここまで来たわけではない。地域を変えるには長いプロセスがかかるということを覚悟する必要がある。
ワークショップ:自身の事業とSDGsを結びつける
ファシリテーター:一般財団法人北海道国際交流センター 専務理事 池田 誠さん
SDGsのワークシートを用いて、参加者自身の事業とSDGsの関連があるものをマッピング、そのうち優先的に取り組みたいSDGsと理由を3つピックアップ、その中で行政職員が抱える課題解決に向けて何ができるのかについてグループで意見交換を行った。
最後、各自治体の優先課題と解決に向けた取り組みについて「町内の小学校統合による空き校舎の活用を検討したい(SDG4、17)。農業を基盤とした街づくりをおこなっていきたい(SDG9)」「地産地消による環境にやさしいまちづくりを目指したい(SDG7、13、15)」「子ども達に多様な学びの場を宣言部活動等が成立しなくなる可能性があり、子ども達の多様な学びの場づくりのために他地域と連携する(SDG4、10、17)」「健やかで安心なまちづくりを重点に置いた総合計画を策定した。栄養価の高い野菜作り、市民や企業とのパートナーシップによる事業づくりを行いたい(SDG3、4、17)」、「子ども達に郷土愛を育むための教育を実践しているが、働き場所が不足しているため雇用や起業、創業の支援を行う(SDG8)」等の意見があった。
●参考資料
私たちのまちにとってのSDGs(持続可能な開発目標)-導入のためのガイドライン-(発行者:一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)
持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド(発行者:環境省)
自治体とSDGsは親和性は高く、SDGsを活用し持続可能な地域づくりにつなげていくことがポイントと思いました。ご参加いただいた皆さま、関係者の皆さま、ありがとうございました。
北海道地方ESD活動支援センターでは、引き続きSDGsに関する情報収集・発信や対話の場づくりを行っていきます。(大崎)