気候変動教育

【開催報告】気候変動教育連続勉強会 第1回「地域におけるこれからの気候変動教育を考える」

北海道地方ESD活動支援センター(EPO 北海道)では、脱炭素社会への転換を見据えた人材育成のために「気候変動教育」について国内外の動向や事例を学び、その体系確立や普及戦略の構築に向けた連続勉強会を開催します。この度、気候変動教育連続勉強会 第1回を開催しました。

開催概要

[日 時] 2021年7月14日(水)13:30~15:00
[開催形態] オンライン会議システム「zoom」を使用
[参加対象] 気候変動教育の実践者・関係者,関心をお持ちの方
[参加者数] 91人
[参加費] 無料
[主 催] 北海道地方ESD活動支援センター(EPO 北海道)

内容

立教大学社会学部特定課題研究員・ESD研究所特任研究員の高橋 敬子さんを講師にお迎えし、オーストリア・ドイツ・アメリカ等の、地域を拠点とした気候変動教育の実践事例や傾向についてのお話の他、イギリス、ドイツ、アメリカで実施されている学習手法・教材を採用して開発・実施されている気候変動教育プログラムについてのお話をうかがい、質疑応答を行いました。

[講師] 高橋 敬子 さん(立教大学社会学部特定課題研究員・ESD研究所特任研究員)    

大学在籍時にドイツのボン大学に交換留学。ドイツ・アイフェル自然保護センターで環境教育に関する研修を受講し、環境教育の評価に興味を持つ。大学卒業後は、環境NGO、高等教育機関、研究機関等で、自然、地球、社会に関連する幅広い環境教育企画(数百人規模まで)を、子どもから高齢者、日本人から外国人までを対象として実施。
2006年に環境NPOを設立し、豊島区池袋で持続可能な地域づくりに向けて、地域住民とともにさまざまな教育活動を行う。その取組が評価され、2021年2月刊行の 「 GEO-6 for Youth(第6次地球環境概況 ユース版)(UNEP(国連環境計画) 」 でグッドプラクティスを行っている世界の環境教育者として紹介された。( https://www.youtube.com/watch?v=0Dw-KMosacg )
大学院では、自然系環境教育の評価手法の研究を実施(2007年)。IPCC第5次評価報告書の編集に携わったことがきっかけとなり、2014年より日本・海外の気候変動教育の研究・実践を行う。その他、アメリカ・コーネル大学やドイツの環境教育、気候変動教育関連のオンラインコースの受講、ドイツ・オーストリアでのESD・気候変動教育の先進事例の調査等を精力的に行っている。

日の講演資料はこちら
https://epohok.jp/wp-content/uploads/2021/10/210714.pdf

趣旨説明資料はこちら(pdf)

動画:講演の様子はこちらから
https://www.youtube.com/watch?v=Q_I0BQMtJBo

関連リンク:気候変動適応のミステリー(気候変動適応情報プラットフォーム)

参加者からの質問

Q. オーストリアのプログラムの広がり具合や、社会へのインパクトへの貢献の程度は印象としてどのようなものか。

A. オーストリアシュタイアーマルク州の事例については、波及効果は特に聞いていないので分からないが、年間のワークショップ数は200~300程度実施されていると言われている。また、2015-2016年のパートナーは2団体のみであったが、現在は20以上のさまざまな団体と協働しており、広がりがあると感じている。

 

Q. 学校現場において、教科横断的なテーマになるため複数の教科の教員の協働があれば実践可能だと思いますが、なかなか物理的に難しいというのが現状です。授業で気候変動を取り入れるにあたって、解決のヒントがあれば、ご教示いただきたい。

A. ドイツ、オーストリアで教科横断的な授業の話はあまり聞いたことがなかった。
オーストリアの気候同盟(NGO)が作成している教材では、各教科で温暖化について扱えると考え、気候ソングを取り入れた音楽の授業、サッカーのゲームから気候変動を学ぶ体育の授業等を提案している。ドイツのBW州では、地理と気候変動とが親和性が高いということで、地理の授業で主に気候変動を学んでいるが、宗教や語学の授業でも取り入れている。国内事例でいうと、ミステリーの教材を、英語や社会や家庭科等、温暖化についてトピックとして扱っている教科で使ってもらうことも可能だと思う。

 

Q. Drawndownの日本バージョン・データは、どのように収集作成されたのでしょうか。

A. 共同研究を行っている産業技術総合研究所の歌川学さんが、翻訳版のリスト(高橋翻訳)を見ながら、日本のデータや気を付けるべき点について補足した。ドローダウンは、海外の研究者の方々が世界の状況についてまとめているため、日本に当てはまらない点もある。そのため、補足等して作成している。現在は特に公開していない。

 

Q. 特にヨーロッパの例について、こうしたプログラムはどういう立場のどういった働きかけから始まったのでしょうか。

A. ドイツの事例は環境省と文科省が動いたことがきっかけで、オーストリアは気候保護コーディネーターがパワフルで、州規模で動くようになって教育プログラムを作り始めたのがきっかけ。2010年ごろからしっかりと時間数を割いたプログラムが行われるようになった。