北海道地方ESD活動支援センター

【開催報告】北海道経済連合会 SDGs普及啓発セミナー 「2030年のより良い未来に向けて企業が貢献できること」

去る10月5日、ホテルオークラ札幌にて、SDGs(持続可能な開発目標)普及啓発セミナー~「2030年のより良い未来に向けて企業が貢献できること」~を開催しましたので、ご報告いたします。なお、このセミナーは北海道経済連合会が主催のもと、北海道地方ESD活動支援センター、北海道、北海道エネルギー基本問題懇談会、エコロジア北海道21推進協議会が共催いたしました。

概要

[開催趣旨]

SDGsは、2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goalsの略称)」です。SDGsの達成に企業の貢献が一層重要となっており、経団連が2017年11月に改定した「企業行動憲章」においても、Society5.0の実現を通じたSDGsの達成が目標に掲げられています。しかし、道内経済界や企業において、SDGsの認知度は低いのが現状です。

本セミナーでは、SDGsの概要、企業での取組の必要性・取組事例等を紹介し、道内経済界・企業に対するSDGsの普及啓発の機会にするとともに、地方自治体にも参加を呼びかけ、SDGsについて共に学び、地域や企業の課題解決に向けた関係を構築するための一助とします。

[日 時]平成30年10月5日(金)14:00~17:00

[会 場]ホテルオークラ札幌 2階フォンテーヌ(札幌市)

[参加者]143人

[主 催]北海道経済連合会

[共 催]北海道地方ESD活動支援センター、北海道、北海道エネルギー基本問題懇談会、

     エコロジア北海道21推進協議会

[後 援]北海道市長会、北海道町村会

[内 容]

1.開会

2.基調講演 「国連SDGsと企業等がSDGsに取り組む意義について」

  損保ジャパン日本興亜 CSR室シニアアドバイザー 関 正雄 氏

3.取組事例紹介 

「下川町におけるSDGs達成に向けた取り組み」

 下川町長 谷 一之 氏

「北海道におけるSDGs推進について」

 北海道総合政策部政策局計画推進担当局長 谷内 浩史 氏

4.質疑応答(ファシリテーター:北海道地方ESD活動支援センター 大﨑 美佳)

・損保ジャパン日本興亜 CSR室シニアアドバイザー 関 正雄 氏

・下川町長 谷 一之 氏

・北海道総合政策部政策局計画推進担当局長 谷内 浩史 氏

5.閉会

セミナー内容

 基調講演

  基調講演として損保ジャパン日本興亜 CSR室シニアアドバイザーの関 正雄氏から「国連SDGsと企業等がSDGsに取組む意義について」をテーマに、お話しいただきました。

はじめに、SDGs採択文書「2030アジェンダ」に掲載されているSDGsの理念、「大変革(transformation)」と「誰も置き去りにしない(leave no one behind)」の2点の理解が重要であり、環境と貧困の2大課題の同時解決が「持続可能な発展」の本質であると説明されました。

「企業がSDGsにどのように取り組むべきか」という回答としては、2030年までにSDGs実現のため企業は今何をするべきなのか、本来企業は何をするべきかを考え、現時点での優れた取組みを基準とするのではなく、より意欲的な目標設定をしようとするべきである、と説明されました。

また、日本企業のSDGsへの取り組み状況について約7割の企業がSDGsについて対応、あるいは対応予定と回答し、SDGsの取組みとして一番多い回答は、マッピングであることを紹介されました。しかし、自社取組みとの紐づけ作業で終わってしまうと意味がなく、SDGsを基準にして自社では何ができるかを検討することで、新しい戦略が生まれてくる、と説明されました。

 その他、SDGsの取組みへのヒントとして、「企業のための温暖化適応ビジネス入門」(発行:経済産業省)や、中小規模の事業者向けの「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」(発行:環境省)が紹介されました。

最後に、「SDGsへの取組みは社会貢献としてではなく、ビジネスそのものを通じて行うべきものであり、社会における企業の役割そのものをもう一度考え直そうというものでもある。SDGsとは、これからの企業経営の在り方を示し、実現するべきビジネス目標をはっきり示したものだといえる。今後、我々が取組むべき目標が明確にされたので、SDGsを指針にして進んでいくと良いと考える。」と基調講演を締めくくられました。

取組み事例紹介~下川町~

次に下川町の谷町長から、「地域を変革する『SDGs』~『SDGs』を取り入れた持続可能なまちづくり~」をテーマに、下川町のSDGsへの取組みをご紹介いただきました。

谷町長は、下川町は町の特長である森林が生み出した「生産資源」と、道路や川、公共施設等を指す「文化資源」の両方を生かす「経済資源」が乏しいことを指摘し、ヒトやモノ、情報やノウハウ等を補完するために地域外の企業や研究者と連携していくことが大事であり、そのような危機感を持って森林資源の活用を進めてきたと説明されました。

下川町のSDGsに関する取組みについて「森林総合産業」、「エネルギーの自給」、「超高齢化社会の対応」の3点を中心にご紹介いただきました。

「森林総合産業」では、下川町は2014年から伐採、植林、育林のサイクルを回す「循環型森林経営」を取り入れており、木材を余すことなく消費するカスケード利用を進めているとのこと。「エネルギーの自給」においては、木質バイオマスボイラーを導入し、町内の10ヵ所11基30の施設に熱供給を行っているそうです。

さらに「超高齢化社会の対応」では、高齢者が共同居住できるコレクティブハウスを設立するなど、居住環境を整える等を行っているとの説明がありました。

下川町はこれら3点の取組みを題材に「第1回ジャパンSDGsアワード(2011年、政府主催)」に応募したところ、取組みが評価され最優秀賞である内閣総理大臣賞を受賞しました。その他、下川町では2019年度から始まる「第6期総合計画」を策定しており、「SDGs未来都市計画」を含めて、2030年までに様々なビジョン策定を進めているとのこと。

 最後に、下川町長から北海道経済連合会の会員企業である参加者に向けて、「SDGsを理解していただき、優先課題の決定や目標の設定、SDGsの経営への統合、事後報告やコミュニケーションを図る等、このサイクルを管理職や従業員の皆さんに担っていただきたい。また、2030年度までに設定する目標達成に向けて努力していただきたい。CSR及びCSV活動等の連携を通じて企業価値を高めていただきたい」と激励されました。

取組み事例紹介~北海道~

次に「北海道におけるSDGsの推進について」をテーマに、谷内氏から北海道の取組み事例についてご紹介いただきました。
はじめに道内におけるSDGsの認知度について、中小企業を対象とした調査では14%程度、札幌市の市民アンケート等でも15~19%と、依然として低い状態であると説明がありました。
そのような中で、SDGs達成に向けて北海道に求められる役割として、「北海道が自ら率先してSDGsに取組む」、「取組の裾野の拡大」、「ビジョンの提示」の3点を説明されました。
また北海道では、現在多様な主体が共有できる「基本的方針」となるような「(仮称)北海道SDGs推進ビジョン」を策定しており、SDGsの推進によって期待される効果や取組みへのアプローチ方法や、SDGsを関連付けた北海道の現状と課題や強み、それらを踏まえた「北海道の目指す姿」と優先課題5つ、19の対応策等をできるだけ分かりやすく示すこととしていると説明されました。さらに、8月に立ち上げた「北海道SDGs推進ネットワーク」について、会員を募集していることも紹介されました。
最後に、今後もSDGsの普及啓発や情報発信、また企業・団体の皆様との連携・協働に取り組んでいきたいとの挨拶で事例紹介を締めくくられました。

 質疑応答

基調講演と取組み事例紹介が行われた後、登壇された3人へ質疑応答を行いました。

内容は以下の通りです。

Q1.企業に対する行政の効果的な支援は?

A. 関氏:将来のビジョンを明確に示すこと。企業が安心できる政策方針を示すことが大切である。

Q2.企業の事業をベースとしたSDGsへのマッピングは、評価されないのか?

A.関氏:現状確認といった意味でSDGsへの取組みの第一歩ではあるが、マッピングのみで満足してしまう懸念がある。SDGsは17の目標と169のターゲットであり、その達成のために何ができるか考えることが基本。

Q3.金融機関や学術機関に臨む支援とは何か?

A.

関氏:金融機関の強みを生かした多様な支援が提供されるのが望ましい。

谷氏:研究機関には、人・モノ・資金・システム・技術・ノウハウ・進め方等の知見を活かしたアドバイスがあるとありがたい。SDGsは様々な主体とつながることができるツールであるので、金融機関や研究機関には地域の連携強化・発展に向けたコーディネートを期待したい。

谷内氏:金融機関には企業からの相談を通じて、SDGsが浸透するよう協力いただきたい。また、学術・研究機関には、専門的な知見により地域が持つ文化資産を活かすことを期待したい。

<ファシリテーター:北海道地方ESD活動支援センター 大﨑 美佳>

質疑応答の様子

 

今後、SDGsの達成に向けては、社会課題の同時解決を担う人材があらゆる分野で必要とされており、企業や行政でも重要です。SDGsはセクターをつなげるツールであり、本セミナーのような機会を含めて、SDGsの普及啓発や実践に向けた支援をさせていただきたいと思います。開催にあたり、ご参加いただいた皆様ならびに関係者の皆様へ、ありがとうございました。(福田)