北海道地方ESD活動支援センター

<ESDヒアリング>脱プラスチックへの取り組み~美幌博物館(美幌町)~

近頃海洋ごみ問題やマイクロプラスチック問題が多く取り上げられています。

今回、道内で海洋プラスチックごみの問題解決につながる取り組みとして、美幌博物館 学芸員の町田善康さんに、美幌町で行ってきた活動を伺いました。

【聞き取り日時】 2021年2月5日(金)

【場所】 オンライン(オンライン会議システム「Zoom」を使用)

【話し手】 美幌博物館 学芸員 町田善康さん

      美幌博物館 HP http://www.town.bihoro.hokkaido.jp/bunya/museum/

      参考資料はこちらをご覧ください 

【聞き手】 福田、小路

マイクロプラスチック調査を始めるきっかけ

美幌博物館 町田さんは、魚類がご専門分野とのこと。もともと魚の棲む川や海の水質に関心があり、全国各地の河川でマイクロプラスチックが検出されていると聞いて、「網走川の流域でもマイクロプラスチックは検出されるのか?」と疑問に感じたそうです。そこで、流域市町村である網走市、美幌町、大空町、津別町に、マイクロプラスチックの現状調査をしないかお声がけをして、2019年度北海道e-水プロジェクト(http://heco-spc.or.jp/emizu/) に応募し、調査を始めることになったそうです。

網走川流域の一斉清掃とマイクロプラスチック調査

 2019年度の活動は、網走川流域のマイクロプラスチックごみの分布状況を知るため、網走川流域の一斉清掃と、1市4町でマイクロプラスチック調査を行ったそうです。

の範囲は、網走川の上流から下流まで、1市4町でそれぞれ実施。総勢416名による清掃活動が行われ、合計770kgのごみを拾ったそうです。プラスチックごみの割合が多く、参加した方からは、「こんな多くのごみが拾えると思っていなかった」など感想があったそうです。

マイクロプラスチック調査は、網走川流域の上流から下流間の4か所で実施されたそうです。東京理科大学協力のもと分析した結果、網走川流域はすべての調査箇所からマイクロプラスチックが検出されたそうです。検出されたプラスチックごみの成分は、意外にもポリエチレン(PA)やポリプロピレン(PP)の固形物よりも、ポリエステルなどの繊維が多かったとのこと。国内平均(マイクロプラスチックの平均個数は1.6個、平均質量0.44mg/㎡)と比べると、調査で検出された数値は国内平均を下回るものだったそうです。(資料参照)

2020年には、前年と同じくe-水プロジェクトの採択を受け、美幌高等学校と駒生川のマイクロプラスチック調査を実施されたそうです。調査地は、市街地、農地、森林が占める最上流から最下流までの4地点で実施。結果は、下流になるにつれてマイクロプラスチックの量が多くなったとのこと。全国平均(1.6個/㎡)よりも少なく、網走川(0,9個/㎡)よりも多いという結果になったそうです。

勉強会、展示会の実施

美幌博物館では、地域の人に対して、プラスチックごみが増えている現状を知らせるため、勉強会や展示会を実施してきたとのこと。勉強会では、主にマイクロプラスチックごみの状況にフォーカスして情報提供を実施。参加者の反応は、プラスチックごみがこんなに自分の身の周りにあるとは、と驚いていた様子だったそうです。展示会では、美幌博物館にて現状を伝える内容の展示を行ったとのこと。勉強会や展示会を通して、プラスチックは軽くて便利なものなので、脱プラスチックとなると、年配の方にとっては不便だった時代に戻らなければいけないように感じてしまうかもしれないと懸念を感じたそうです。

「海洋汚染問題について、どのように取り組むと良いと思うか?」という私たちの問いに対して、町田さんからは、「まずは排出抑制をすること。プラスチックの使用量を減らすことが第一だと思う。そのあとにごみを回収する技術や政策提言が必要になってくるのではないか。」とお答えいただきました。また、これほど、社会が醸成した日本ですら、いまだにゴミのポイ捨てがあります。今後さらなるモラル向上が必要だと訴えています。

町田さんは、引き続き海洋汚染対策やプラスチックごみが増えている状況、自分たちができること等情報発信をしていきたいとお話ししていました。

町田さん、ありがとうございました!