行政(経済産業省)の環境情報

「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)」を新たに立ち上げます

近年のグローバルにおけるマルチステークホルダー議論や、ESG投資やSDGs経営の重要性の高まりから、サステナビリティに関しての企業と投資家の対話や非財務情報の開示に関心が高まっています。

経済産業省では、2014年に『伊藤レポート』を発行して以来、2017年に『伊藤レポート2.0』『価値協創ガイダンス』を示し、中長期の企業価値向上に向けた企業と投資家の対話を後押ししてきました。さらに、昨年8月に、「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」(※1)において、対話の実質化を進めるために、社会のサステナビリティと企業のサステナビティを同期化し、長期の時間軸の中で、社会課題を経営に取り込むことで企業の稼ぐ力を強化していく「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」を提唱しました。

今回、この「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」の取組を具体化させるため、「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)」を立ち上げます。

この研究会では、長期の時間軸の中で社会のサステナビリティを取り込む企業の長期の経営、サステナビリティ要素を取り込み中長期の企業価値向上に向けた企業と投資家との対話や非財務情報の開示に関する課題や在り方を明確にします。そして、そうした要素を、企業と投資家との対話の「共通言語」として策定された『価値協創ガイダンス』(※2)に反映することで、同ガイダンスを、サステナビリティを踏まえた企業と投資家の対話や統合的な情報開示のフレームワークとして改訂することを目指します。

また、こうした企業と投資家の、サステナビリティを踏まえた中長期の企業価値向上に資するための対話の課題や考え方を『伊藤レポート3.0』としてとりまとめる予定です。

1.目的・背景

経済産業省は、伊藤レポート(※3)公表後の6年間のレビューを行った「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」(以下「実質化検討会」といいます。)において、投資家と企業の間の事業ポートフォリオやイノベーションに向けた種植え等の対話に関するギャップを解消するために、「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」(企業の稼ぐ力の持続的向上に向けた「長期の時間軸」を前提にした経営、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティの時間軸を同期化し、社会課題を企業経営に時間軸を踏まえて取り込んでいく取組み、不確実性に備えるため企業と投資家と継続的な対話によるレジリエンスの強化等)の重要性を提唱いたしました(2020年8月中間取りまとめ公表)。

近年、ステークホルダー資本主義が提唱されている中で、企業が創造すべき価値を、ステークホルダーそれぞれへの独立した価値と捉えるべきか、ステークホルダーに対する価値をバリューチェーンの中で還元した後に、最終的には株主に対して還元される価値と捉えるべきかについて、企業・投資家間で認識のギャップが存在しています。

また、非財務情報、特にサステナビリティの要請が企業の情報開示や投資家との対話の中でも高まっていますが、その際、社会環境等の外部性の企業への影響という企業の財務インパクトを重視するのか、企業による社会への影響という社会的なインパクトを重視するのかについて、国際的に多様な情報開示・対話のフレームワークが存在し、立場が異なっています。さらには、IFRS財団による非財務情報の開示に関する新たな審議会設立など国際的に非財務情報の開示に関するルールメイクについての議論が活性化してきています。

経済産業省は、2017年に、「伊藤レポート2.0」(※4)の発表と併せて、中長期の価値創造の立場からの価値創造ストーリーに関する情報開示・対話のフレームワークとして『価値協創ガイダンス」』を策定し、企業と投資家の対話を促進してきましたが、実質化検討会において指摘されたように、実質的な対話に向けた課題は、引き続き存在しています。

そのため、本研究会では、実質化検討会で提唱された企業のサステナビリティと社会のサステナビリティの同期化など「SX」の考え方を踏まえて、企業の長期経営や投資家の長期投資、それに伴う具体的な対話の課題や在り方を明確にします。また、その要素を『価値協創ガイダンス』に反映させることで、『価値協創ガイダンス』を、「SX」を踏まえた企業と投資家の対話や統合的な情報開示のフレームワークとして改訂するための検討を行います。

また、実質化検討会では、対話の実質化に向けたもう一つの課題として、対話の手法や対話そのものに対する企業間の認識のギャップが指摘され、それを改善するために実質的な対話の要素を整理しました。本研究会では、こうした要素についても整理を行った上で、同ガイダンスの改訂の検討を行います。

なお、本研究会の立ち上げと合わせて、非財務情報及びその指針に関する世界的な動向に関する情報の共有を行いながら、質の高い非財務情報の開示を実現する指針のあるべき方向性を検討するため、「非財務情報の開示指針研究会」も立ち上げる予定です。

2.本検討会で議論・検討を予定している事項・論点例

(1) グローバルなステークホルダーに関する議論を踏まえた、企業が創造すべき「価値」の考え方

※誰に対してどの媒体で何を伝えていくのかという整理

(2) 「SX」を踏まえた中長期の時間軸の中での経営や対話についての課題

① 企業のあるべき方向性、存在意義(パーパス)の特定・明確化
② 重要性(マテリアリティ)の考え方
③ 長期の時間軸を前提にした長期ビジョン・長期経営計画等の経営戦略の構築の在り方

※①~③の連続性、一貫性の課題
※長期ビジョン等と中期経営計画の連続性、財務・非財務の繋がりの課題

④ 長期ビジョン等を達成するための具体的な戦略、取組(多角化・事業ポートフォリオ戦略、無形資産投資、イノベーションの種植え等)の考え方

④-1 時間軸を踏まえた事業ポートフォリオの考え方
④-2 無形資産投資の考え方
④-3 新規事業/イノベーションの種植えの考え方 等

⑤ 長期の時間軸のガバナンスにについて

(3) 資本市場・投資家の課題

(4) 価値協創ガイダンスの課題

3. 委員

別紙のとおり。

4.スケジュール

第1回は5月31日(月曜日)に開催します。その後、月1回程度開催し、本年夏頃を目途に中間整理を行い、秋頃までに中間整理を踏まえて価値協創ガイダンスを改訂する予定です。

なお、委員による率直かつ自由な意見交換を確保するため、本研究会は非公開としますが、資料及び議事概要は、原則公表する予定です。

関連リンク

(※1)サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間とりまとめ:(2020年8月経済産業省策定)
(※2)価値協創ガイダンス:価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス-ESG・非財務情報と無形資産投資-(2017年5月経済産業省策定)
(※3)伊藤レポート:「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト最終報告書(2014年8月経済産業省策定)
(※4)伊藤レポート2.0:持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会報告書(2017年10月経済産業省策定)

関連資料

担当

経済産業政策局産業資金課長兼企業会計室長 呉村
企業会計室企画官 田代
担当者:増本(ましもと)、瀧澤(たきざわ)

電話:03-3501-1511(内線 2641~5)
03-3501-1676(直通)
03-3501-6079(FAX)

引用:https://www.meti.go.jp/press/2021/05/20210528005/20210528005.html