「北東アジアにおける大気汚染物質の長距離輸送プロジェクト第4期(2013~2017年)サマリレポート」の公表について
1.経緯
環境省では、「北東アジアにおける大気汚染物質の長距離輸送プロジェクト(LTP)」において、
PM2.5等の大気汚染物質の長距離輸送に関する共同研究を中国・韓国と実施しています。
2013~2017年の第4期では、特に大気汚染物質のモデリングに関する研究において、PM2.5に係る日中韓の発生源の相互の寄与度合いについての解析を行い、その成果を各国におけるPM2.5等のモニタリング結果とともにサマリレポートとして取りまとめました(別紙1、2参照)。
【参考】北東アジアにおける大気汚染物質の長距離輸送プロジェクト
(LTP:Long-range Transboundary Air Pollutants in Northeast Asia)
・北東アジアにおける大気汚染物質の長距離輸送に関して理解を深めることを目的に、韓国の提唱で平成12年に開始された日中韓の研究プロジェクト。事務局は、韓国国立環境研究院。
・専門家中心の会合を毎年開催し、PM2.5等の大気汚染物質のモニタリングとモデリングに関する技術的な研究を実施。我が国からは、環境省、国立環境研究所、アジア大気汚染研究センター等の担当者が参加。
・第1期(2000~2004年)、第2期(2005~2007年)、第3期(2008~2012年)、第4期(2013~2017年)が終了し、現在第5期(2018~2022年)。
2.サマリレポートの概要
1)大気汚染物質のモニタリング結果
LTPで対象とした日中韓3か国の計12箇所のモニタリング地点(中国:大連(3箇所)、厦門(2箇所)、煙台/韓国:高山、江華島、泰安、白翎島/日本:利尻、隠岐)における平成29年までのモニタリング結果について、SO2、NO2、PM2.5、PM10等の大気汚染物質の年平均値は近年減少傾向でした。特に中国では各物質とも大きく改善されました。
2)大気汚染物質のモデリング結果
平成29年の大気中PM2.5濃度について、各国の主要都市(中国:北京、天津、上海、青島、瀋陽、大連/韓国:ソウル、大田、釜山/日本:福岡、大阪、東京)における、日中韓の発生源からの寄与度合いを3か国それぞれのシミュレーションモデルを用いて推定しました。
3か国の結果を平均すると、いずれの国においても、各国都市平均のPM2.5濃度はそれぞれ自国の国内発生源由来の寄与が最大となっていました(中国、韓国、日本それぞれについて、国内発生源由来の寄与率はそれぞれ91.0%、51.2%、55.4%)。
・中国 中国由来 91.0%、韓国由来1.9%、日本由来0.8%
・韓国 中国由来32.1%、韓国由来 51.2%、日本由来1.5%
・日本 中国由来24.6%、韓国由来8.2%、日本由来 55.4%
注)日中韓以外の地域からの寄与もあるため、合計は100%にはならない。
3)まとめ
3か国のそれぞれのPM2.5濃度の推定値は、一定の不確実性はあるものの、3か国のシミュレーションモデルの予測結果は良好かつ類似していました。今後、PM2.5の組成成分に焦点を当てた解析等、さらなる研究が必要ですが、各国のPM2.5は自国の国内発生源由来のものが最大であるという結果から、各国内の発生源対策が北東アジア地域の大気環境改善に重要であることが示唆されました。
3.今後の対応
今回のサマリレポートの公表については、今月、北九州市で開催予定の第21回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM21)に報告される予定です。
我が国としては、日中韓3か国を含むアジア地域における良好な大気環境の共有に向け、PM2.5の組成成分に着目したモニタリングとモデリングを実施する等、LTPにおける活動を今後とも推進し、効果的な大気汚染対策の検討・実施に資する科学的知見の蓄積に努めていきます。
添付資料
- 別紙1 北東アジアにおける大気汚染物質の長距離輸送プロジェクト第4期(2013ー2017年)サマリレポート(英語) [PDF 526 KB]
- 別紙2 北東アジアにおける大気汚染物質の長距離輸送プロジェクト第4期(2013ー2017年)サマリレポート(仮訳) [PDF 569 KB]
連絡先
環境省水・大気環境局総務課
- 代表03-3581-3351
- 直通03-5521-8286
- 分析官宇仁菅 伸介(内線 6532)
環境省水・大気環境局大気環境課
- 代表03-3581-3351
- 直通03-5521-9021
- 課長神谷 洋一(内線 6530)
- 課長補佐清丸 勝正(内線 6580)
- 主査桒村 亮広(内線 7574)
- 係長岩崎 優(内線 6572)