ESDの推進

「帯広の森・はぐくーむ」の取り組みについて

 帯広の森の育成管理や森づくりイベントの開催などをとおした森の利活用の拠点として平成22年にオープンした「帯広の森・はぐくーむ」。平成27年12月4日(金)、副施設長の日月伸(たちもり・しん)さんにお話を伺いました!

「帯広の森・はぐくーむ

 

1. 帯広の森とは

始まりは昭和34年 テーマ「近代的田園都市」

 帯広の森は、面積:406.5ha、幅:約550m、延長:約11kmの都市公園です。
昭和34年に策定された「帯広市総合計画」のなかで「近代的田園都市」のテーマの下、都市人口の最適規模を20万人と位置づけ、都市周辺部に緑地帯を設けるグリーンベルトの考えを含む構想が掲げられました。
 そして、昭和44年当時の帯広市長である吉村氏がオーストリアのウィーンの森に出会ったことをきっかけに、帯広の森構想が具体化されていくことになります。ウィーンの森とそこに共生をするウィーン市民に大きな感銘を受けた吉村氏は、第2期帯広市総合計画で「帯広の森」をまちづくりの主要な施策としました。
 その後、開墾してきた畑に木を植えて森に育て、十勝川・札内川とつなげることによって帯広市街地を緑で包み込む「帯広の森」の森づくりがスタートすることになります。

昭和50年からの100年計画 「開墾地を森へ」

 広大な開墾地を森に戻すという壮大な計画の下、昭和50年から毎年市民植樹祭が行われ、30年間にわたり約23万本の木が植えられました。計画していた用地での植樹は平成16年度に終了しています。平成3年度から平成17年度までの15年間は、植樹した樹木を育てるために「帯広の森市民育樹祭」が開催されました。
 その後、平成22年には「帯広の森・はぐくーむ」が開設し、植樹・育樹など森の育成や市民と森の共生の拠点としての役割を担うこととなります。
 帯広の森の区域内には、散策路など森に親しむ施設のほか、野球場や体育館などスポーツ施設も整備されており、市民の憩いの場となっています。また、5つの市民団体がエリアごとに森づくり活動を行っています。平成27年度には、それぞれの活動団体のエリアを含む森全体の育成の指針となる森づくりガイドラインができ、市民協働での100年を目指した森づくりが進められています。

※詳細は、以下をご覧ください。

みんなで創ろう!帯広の森(帯広市ホームページ)
「市民参加の森づくり〜帯広の森について〜 (帯広市都市建設部みどりの課)」(PDF)
 

2.「帯広の森・はぐくーむ」とは

 間伐などの森づくり体験、自然観察会などの森に関連したイベント開催や小学校等の森林学習など通して森に親しむ機会を提供したり、帯広の森に関する様々な情報を発信している施設です。
 施設は、木材をふんだんに使用した作りになっており、冬は薪ストーブとペレットストーブによって暖を取ることができます。多目的室は、イベントや学習会など様々な方に利用されています。

 

3.森のプログラムについて

五感を通した気づきをうながす

 森にかかわる様々な体験プログラムが提供されていますが、大切にしていることは「自分の五感を通して感じること」。体験を通した気づきを促すことを意識してプログラムが組まれています。
 また、「森から暮しへのつながりを意識すること」も大切にしています。森づくりやものづくりの際は、なるべく多くの作業を自分たちの手で行い、何かを作る時の原料(燃料、材料)は自分たちで現地調達するようにしています。そこには、自分で森の手入れをして出てきた材料を使って、自分で何かをつくるという活動を通して、森への愛着、暮らし(モノ)への愛着を持ってもらいたいという思いもこめられています。

例)たき火パン(パン作り)
 生地を作るところからスタート、たき火用の枝や樹皮は自分たちで集め、火おこしも自分たちで行います。体験を通して森づくりや食、エネルギーについても考えられる機会です。火を見ることも稀な現代におけるスペシャルな体験です。

 学校や団体向けに体験プログラムを行う場合には、引率する先生方とスタッフが事前に打ち合わせを行って、プログラムを組み立てます。人数や年齢などの基本的な情報はもちろんのこと、利用者の背景や特徴を把握し、ねらいを共有した上で、対象者に応じたオーダーメイドのプログラムを作っていきます。
 プログラム実施に際しては、はぐくーむや帯広の森の活動を支える市民ボランティアさんの協力も得ています。親や学校の先生以外の大人とふれあう機会が少ない現代の子どもたちにとって、様々な大人と関われるというのも貴重な機会となっています。

学校教育との関係

 学校の利用が年々増えてきているとのこと(平成26年度49団体2,366人)、これは先生方の口コミによる広がりが大きいそうです。単発の課外行事で終わるのではなく季節の変化を感じられるように春夏秋冬と季節をかえて体験に訪れる学校も出てきています。利用の増加により、夏季などの利用が集中する時期には、日程調整が難しくなっているのがうれしい悲鳴とのこと。
 森の中での授業は、「総合的な学習」の時間を利用する学校が大半ですが、森の中で算数の実践をしてみたり、各学年で他教科で習う内容を活動の中でおりまぜる工夫もしています。
 先生方に実際に体験していただく機会を設けるために、教職員研修も実施されています。子どもの目線にたって体験してもらったり、森での活動の注意点などを理解してもらうほか、先生方とスタッフで新しいプログラムを企画する内容なども盛り込んでいます。

市民と協働の森づくり「一町歩の森」(1ha=1町歩)

緒につくる森
と共生する森
ける親しみやすい森

 帯広の森の一部の約1haの林で、間伐、道づくり、植樹などの森づくりと、モノづくり、森遊びなど森に親しむ活動を実施しています。老若男女誰もが気軽に参加できる活動で、リピーターとなった方がやがて新しい企画を考えてくれたり、展開も広がりをみせています。

今後の展望

 間伐やたき火など普段できないスペシャルな体験と、「一町歩の森」のような親しみやすい日常の中の森。様々な体験の場を提供しているはぐくーむさんですが、今後は、帯広の馬文化を活用した体験、絵本をからめた体験などさらに広がりをもった活動を模索中とのことです。

・「帯広の森・はぐくーむ」のイベント情報は こちら

 教え込むのではなく、体験をとおした気づきを大切にしたプログラム。すべてを準備するのではなく、参加者自らが材料の調達から工作までを行うことによって生まれる森やモノへの愛着、それの積み重ねが環境を大切にする人となり、持続可能な地域づくりへとつながっていく。そのための大切な取り組みをされていらっしゃいます。
 貴重なお話をしていただきました、日月さんに改め感謝申し上げます。ありがとうございました。