北海道立オホーツク流氷科学センター
平成28年12月2日、北海道紋別市にある流氷をテーマにした世界初の科学館である北海道立オホーツク流氷科学センター(紋別市)にて、学芸員の桑原尚司さんにお話をうかがいました。
北海道立オホーツク流氷科学センター
北海道は北半球で最も低緯度まで流氷がやってくる地域です。その北海道に1991年に設立された北海道立オホーツク流氷科学センターは、世界にただ一つの「流氷」をテーマにした科学館です。
館内では、流氷の姿、仕組み、不思議を模型、パネル等で紹介しています。流氷がどのように生まれ、大きくなっていくかの仕組み、流氷はどこから来るのか……どうして、オホーツク海は凍りやすいのか? その謎を、模型や展示パネルで学ぶことができます。また、流氷の上を歩く疑似体験、流氷観光船・ガリンコ号の模型等、流氷を科学の面からも、産業や文化的な面からも、多角的に学ぶことができる場となっています。
「流氷の天使」の愛称もあるクリオネの展示水槽「クリオネハウス」もあります。水槽の中にはたくさんのクリオネが泳いでおり、その姿を観察することができます。この水槽の中には中には、貝類博物館「貝の館」(後志管内蘭越町)の山崎友資学芸員と桑原さんの共同研究で発見した新種のクリオネも展示されています。
また、館内にはマイナス20度を体験できる「厳寒体験室」があります。ここでは冬の間に採取された流氷が通年展示されています。いつ来ても「本物」の流氷がみられるのです。厳寒体験室の中にはほかにも、透明な氷の中に魚を閉じ込めた「流氷水族館」、シャボン玉や濡れたおしぼりを凍らせる実験等を体験することができます。寒いのが苦手な方には、ドームシアターにて、流氷を中心としたオホーツクの四季を映像で見ることができます。
環境学習・地域学習の場として
オホーツク流氷科学センターは地域の環境学習の一端を担っています。市内の小学校が授業の一環として川の生き物観察や水質調査などを、総合的な学習に応じたプログラムで実施しているとのこと。
また、学校での授業以外にも、紋別の様々な関係主体とともに連携事業も行っています。そのうち、教育に関係する事業をいくつか紹介します。
紋別わくわく科学教室
紋別市内の子どもたちが科学に親しむ場として、流氷科学センターは毎年「紋別わくわく科学教室」を開催しています。体験屋台形式で、様々な団体がブース出展、子どもたちは実験や工作を楽しみながら、科学に触れ、学ぶことができます。
北海道教育大学釧路校や北見工業大学等の高等教育機関、紋別高校、網走地方気象台や紋別警察署などの官公庁、そして市民団体と、様々なセクターと連携しながら実施されており、回を追うごとに参加者が増えてきているそうです。
わいるどトレック
流氷科学センターと紋別市立オホーツク青年の家と合同企画として開催されている宿泊型のイベントで、子どもたちの野外活動の場となっています。
テーマは毎年変えながら実施されてるそうで、2016年は安全講習をテーマに、いかだづくり、そして作ったいかだを浮かべて進めるなかで、安全技術を身につけながらチームワークを高めたとのこと。また、ビーチコーミング等も行い、海辺の漂着物をきっかけに、紋別と世界とのつながりや海洋環境問題を考える機会にもなっているとのことです。
世界でもっとも流氷が南下するという稀な環境、その環境と、地域の産業のつながり、豊かな生物相。流氷科学センターは、地域の子どもたちには地域の環境を学び、親しみ、科学とふれあう機会を提供し、旅行者にとってはいつでも流氷の恵みを知り、ふれあえる観光の場でもあります。
桑原学芸員、貴重なお話をありがとうございました。
流氷を知り、感じ、学び、考える。地域学習の場である北海道立流氷科学センター。オホーツク訪問の機会にはぜひ足をお運びください。
・北海道立オホーツク流氷科学センター http://www.giza-ryuhyo.com/