気候変動と脆弱性に関する外務省報告書フォローアップ 気候変動・地域情勢研究専門家の意見交換会
3月28日,外務省において「気候変動・地域情勢研究専門家の意見交換会」を開催しました。同意見交換会には科学分野の研究者,地域情勢分野の専門家,外務省及び文部科学省関係者が集まり,各分野における気候変動に関する最新の知見が共有されたほか,気候変動と社会的・経済的脆弱性について,政策決定者及び各分野の研究者がどのように対策を講じていくべきかについて,活発な意見交換が行われました。
1 意見交換会の目的
気候変動及び地域情勢に関しては,それぞれの分野での研究は盛んに行われていますが,両者を結びつけた実証的な研究はまだ数が少ないのが現状です。今回の意見交換会は,外務省が昨年9月に公表した報告書「気候変動に伴うアジア・太平洋地域における自然災害の分析と脆弱性への影響を踏まえた外交政策の分析・立案」のフォローアップ会合として開催しました。この報告書の作成とその後の対外公表を通じ,気候変動を専門とする科学者が,地域情勢の専門家との連携を強め,また,地域情勢の専門家も中長期的な気候変動の課題を十分把握した上で研究を進めるべきではないかとの意見が,報告書の作成に協力した関係者から数多く聞かれました。今回の会合は,このような幅広い分野の研究者及び専門家の交流の活発化を目的としたものです。同報告書の執筆協力者である研究者及び専門家のほか,同報告書では深く取り上げなかった分野の研究者及び専門家の方にも参加いただきました。
2 意見交換会で示された主な論点
各機関における気候変動に関する最近及び今後の取組について情報共有を行った後,アジア・太平洋地域における気候変動と社会的・経済的脆弱性の対策を講じるにあたり,研究者,専門家,政府に求められている取組みは何かについて意見交換を行いました。
- (1)研究について
- 気候変動の影響に関する研究や地域における気候変動対策を行う際には,ユーザー側(影響評価機関,自治体,支援機関,事業者等)が求める情報を把握し,提供することが重要。
- 地域特性を考慮した気候変動の影響の予測が求められているところ,予測の不確実性の統計的な評価が求められている。
- 気候変動が及ぼす社会的・経済的な影響については十分な研究がなされていない。両分野においてお互いの視点を取り入れることが重要。
- (2)気候変動対策について
- 気候変動対策については,生態系を考慮した対策と工学的な対策の両方を組み合わせることで,より高い効果が得られると期待できる。
- 気候変動対策をすることで,かえって他の環境に悪影響を及ぼしてしまう場合もある。気候変動の影響評価だけでなく,気候変動対策の影響評価も求められている。
- (3)地域情勢について
- 人の移動については気候変動による影響だけでなく,社会的・経済的要因もある。気候変動対策を講じるにあたり,地域情勢についても考慮に入れる必要がある。
- 気候変動が社会経済に与えるリスクについては,その評価の重要性は指摘されているものの,分析手法等については課題が多い。より幅広い論点を踏まえた検討を行わないと,リスク評価が偏った内容となるおそれがある点に注意が必要。
今回の意見交換会で得られた知見や課題は,今年外務省主催で開催を予定している気候変動と脆弱性に関する国際会議において議論される予定です。
3 参加者の所属機関
気象研究所,キヤノングローバル戦略研究所,国際協力機構(JICA),国立環境研究所,コンサベーション・インターナショナル・ジャパン(CIジャパン),笹川平和財団海洋政策研究所,世界自然保護基金(WWF)ジャパン,太平洋諸島センター,地球環境戦略機関(IGES),東京大学,農業・食品産業技術総合研究機構,防災科学技術研究所外務省,文部科学省