行政(環境省)の環境情報

環境省ナッジ事業の結果について

 環境省では、ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)を始めとする行動科学の知見を活用してライフスタイルの自発的な変革を創出する新たな政策手法を検証するとともに、産学政官民連携・関係府省等連携のオールジャパンの体制による日本版ナッジ・ユニットBEST(Behavioral Sciences Team)の事務局を務めています。
 この度、平成29年度から実施している「低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業」で採択された事業者のうち、事業を終了した事業者の結果を公表するとともに、当該結果を用いて海外のナッジ・ユニット等と意見交換を行った旨をお知らせします。
  1. 結果の概要

     事業を実施した日本オラクル株式会社及び株式会社住環境計画研究所は、北海道ガス株式会社、東北電力株式会社、北陸電力株式会社、関西電力株式会社、沖縄電力株式会社の5社のエネルギー事業者の協力の下、当該事業者の供給エリア内の約30万世帯を対象に、行動科学の知見に基づく省エネアドバイス等を記載したレポート(ホームエネルギーレポート)を送付して、その後の電気やガスの使用量にどのような効果が表れるかを実証しました。

     本事業は平成29年度から令和2年度までの4年間実施され、毎月ないし2か月に1回程度の頻度でレポートを2年間送付し、ランダム化比較試験と呼ばれる頑健な効果検証の手法により、レポートを送付していない世帯との比較により統計学的に効果を検証しました。また、レポートの送付を停止した後1年間の効果の持続性についても検証しました。

     その結果、レポートの送付により、平均で約2%の省エネ・省CO2効果が統計的に有意に確認されるとともに、レポートの送付停止後も同程度の効果が少なくとも1年間継続することが統計的に有意に確認されました。事業を実施した4年間での累積のCO2削減量は4万7千トンに及び、効果の持続により今後累積で11万1千トンのCO2排出が削減されることが推計されています。この今後の累積削減効果については、事業を実施した事業者の試算では、4万1千世帯の年間CO2排出量に相当するとともに、13万5千台の冷蔵庫買替効果に相当するとされています。

     本事業の結果の特筆すべき点としては、国内最大規模での実証により、実証期間中に家庭でのCO2排出量を実際に大幅に削減したことに加え、一般にナッジの効果は持続しにくいとも言われる中で、世帯毎に最適化された働きかけにより、ナッジを実施している期間はもとより、ナッジを中断した後も少なくとも1年間にわたり効果が持続することを明らかにしたことが外部有識者等により挙げられています。

     より詳細な結果については、事業を実施した事業者による以下の報道発表資料を参照ください。

    ○ナッジを活用して家庭の省エネ行動を促しCO2排出量 47,000トン削減(日本オラクル株式会社のウェブサイト)

    <https://www.oracle.com/jp/corporate/pressrelease/jp20210629.html>(日本語)

    <https://www.oracle.com/news/announcement/oracle-helps-utility-customers-reduce-co2-with-ministry-of-environment-japan-program-2021-06-29/>(英語)

    ○ 脱炭素社会の実現に向けた、4年間・全国30万世帯の国内最大規模実証事業ーナッジを活用して家庭の省エネ行動を促しCO2排出量 47,000トン削減ー(株式会社住環境計画研究所のウェブサイト)

    <http://www.jyuri.co.jp/3667/>

     なお、本事業の初年度の結果については、以下の報道発表により公表しております。

    ○ 平成29年度低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業の結果について(速報)(平成30年4月24日付け報道発表)

     <http://www.env.go.jp/press/105428>

  2. 海外のナッジ・ユニット等との意見交換について

     上記の結果を含む、我が国の行動科学を活用した取組については、令和3年8月31日(火)に開催された第8回気候変動・省エネルギー行動会議BECC JAPAN 2021の最終パネルディスカッション「世界のナッジユニット」においてイギリスやアイルランドのナッジ・ユニット等と共有し、今後も継続して意見交換をしていくことなどについて議論しました。

     会議のプログラムや登壇者等に関するより詳しい情報については以下のウェブサイトを参照ください。

    ○第8回気候変動・省エネルギー行動会議BECC JAPAN 2021

      < https://seeb.jp/eventcontents/3748 >

    ○意見交換先(パネリスト及びモデレーター)

     【パネリスト】

    • Jin Han Kim氏(イギリス:The Behavioural Insights Team (BIT) US office アドバイザー)

    • Karl Purcell氏(アイルランド:Sustainable Energy Authority of Ireland (SEAI) the Behavioural Economics Unit プログラムマネージャー)

    【モデレーター】

    ・ Ken Haig 氏(アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)アジア太平洋 エネルギー・環境 政策責任者/在日米国商工会議所(ACCJ)エネルギー委員会 委員長)

    ○ 気候変動・省エネルギー行動会議について

     気候変動・省エネルギー行動会議(代表:中上英俊株式会社住環境計画研究所会長)は、エネルギー利用の高効率化と地球環境保全に寄与するため、人間の行動や意志決定に注目した省エネルギー行動の普及促進及び啓発を目的として2017年に設立され、(1)省エネルギー行動に関する知見共有及び普及促進に向けた検討を行う研究会議(BECC JAPAN)の開催等の活動、(2)その他の省エネルギー行動の普及促進及び啓発に必要な活動等を実施しています。

    (参考)日本版ナッジ・ユニットBESTについて

    <http://www.env.go.jp/earth/best.html>

     日本版ナッジ・ユニットBEST(Behavioral Sciences Team)は、関係府省庁や地方公共団体、産業界や有識者等から成る産学政官民連携のオールジャパンの取組です(事務局:環境省)。ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)を始めとする行動科学の知見(行動インサイト)に基づく取組が政策として、また、民間に早期に社会実装され、自立的に普及することを目的に、環境省のイニシアチブの下、2017年4月に発足しました。その後、同年10月のノーベル経済学賞の受賞分野が行動経済学であったことの後押しもあり、取組が深化し、連携体制が次第に強化されています。どのような取組も、地域に根付くものとするためには、関係するあらゆるステークホルダーを巻き込んでいくことが必要不可欠です。このため、行政内に限った取組ではなく、参加者が同じ立場で自由に議論のできるオールジャパンの実施体制としています。

    ○ 日本版ナッジ・ユニットBESTのウェブサイト(会議資料、報道発表等)

    <http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge.html>

    ○ 平成29・30年度年次報告書(日本版ナッジ・ユニットBEST活動報告書)

    <http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/report1.pdf>

    ○ 報告書「ナッジとEBPM~環境省ナッジ事業を題材とした実践から好循環へ~

    <http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/EBPM.pdf>

    ○ ナッジ等の行動インサイトの活用に関わる倫理チェックリスト ①調査・研究編

    <http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/renrakukai16/mat_01.pdf>

    ○ ナッジ等の行動インサイトの活用に関わる倫理チェックリスト ②社会実装編

    <http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/renrakukai19/mat_01.pdf>

    ○ 我が国におけるナッジ・ブースト等の行動インサイトの活用の広がりについて

    <http://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/hirogari.pdf>

連絡先

環境省地球環境局地球温暖化対策課脱炭素ライフスタイル推進室

  • 代表03-3581-3351
  • 直通03-5521-8341
  • 室長岩山 政史(内線 6725)
  • 室長補佐池本 忠弘(内線 6266)
  • 担当井筒 廉(内線 6793)

 

引用:https://www.env.go.jp/press/109939.html