気候変動教育

【開催報告】ESD for 2030学び合いプロジェクト 気候変動教育連続勉強会 第7回「オーストリアにおける地域の気候変動対策を担う人づくり」

気候変動連続勉強会では、2050年脱炭素社会の実現に向けて各分野で必要とされる人材像を共有し、その育成・輩出に向けた体系の確立や推進戦略の構築に向けて、国内外の「気候変動教育」に関する動向や事例を学びます。この度、第7回を開催しました。

※ この勉強会は、環境省・文部科学省が中心となって進めている「ESD(持続可能な開発のための教育)推進ネットワーク」による「ESD for 2030 学び合いプロジェクト」https://esdcenter.jp/2022/07/2030manabiai/  の一環として実施します。

開催概要

[日  時] 令和4年11月8日(火)14:00~15:30
[開催形態] オンライン会議システム「zoom」を使用
[参 加 者] 63名
[主  催] 北海道地方ESD活動支援センター(環境省北海道環境パートナーシップオフィス)

内容

地域における気候変動教育の実践が進むオーストリアにおける気候エネルギーモデル地域(気候変動適応モデル地域)の紹介と、各モデル地域に気候変動対策のスペシャリストとして配置されているマネージャーの地域での活動内容等についてお話をうかがいました。

[講師] 高橋 敬子 さん(立教大学社会学部特定課題研究員・ESD研究所特任研究員)
    大学在籍時にドイツのボン大学に交換留学。ドイツ・アイフェル自然保護センターで環境教育に関する研修を受講し、環境教育の評価に興味を持つ。大学卒業後は、環境NGO、高等教育機関、研究機関等で、自然、地球、社会に関連する幅広い環境教育企画(数百人規模まで)を、子どもから高齢者、日本人から外国人までを対象として実施。
2006年に環境NPOを設立し、豊島区池袋で持続可能な地域づくりに向けて、地域住民とともにさまざまな教育活動を行う。その取組が評価され、2021年2月刊行の 「 GEO-6 for Youth(第6次地球環境概況 ユース版)(UNEP(国連環境計画) 」 (https://content.yudu.com/web/2y3n2/0A2y3n3/GEO-6-for-Youth/html/index.html?refUrl=https%253A%252F%252Fwww.unep.org%252F&page=133 )でグッドプラクティスを行っている世界の環境教育者として紹介された。( https://www.youtube.com/watch?v=0Dw-KMosacg )
大学院では、自然系環境教育の評価手法の研究を実施(2007年)。IPCC第5次評価報告書の編集に携わったことがきっかけとなり、2014年より日本・海外の気候変動教育の研究・実践を行う。その他、アメリカ・コーネル大学やドイツの環境教育、気候変動教育関連のオンラインコースの受講、ドイツ・オーストリアでのESD・気候変動教育の先進事例の調査等を精力的に行っている。

講演資料および動画は肖像権の関係で非公開とさせていただきます。ご了承ください。

質疑応答

Q MRM(気候エネルギーモデル地域マネージャー)のベーススキルは、ISO9000とISO14000 シリーズの理解&実践経験という程度で考えればいいのでしょうか?
A  MRMになるために必要な要件について、KEM(気候エネルギーモデル地域パンフレットでは具体的な知識については書かれておらず、簡単な項目しか書かれていません。私がインタビューやアンケートをしたところ、MRMはそれぞれの地域に合った再生可能エネルギーについて調査ができる必要があるようでした。1人でできることには限界があるので、林業の専門家など他の組織と連携している人も多いようです。他組織と協働できる力も求められることになります。

 

Q 写真に写っている様子から見ると、KLAR!(気候変動適応モデル地域)・KEMのどちらも若い人達が多そうに見えます。全体を通して、KLAR!・KEMの立場にある人達の年齢構成はどうなっていますか。また、活動している人たちは期限採用なのですか。それとも終身制なのですか。子育てが絡むため所帯持ちの人の占める割合も関心があります。
A まず、年齢はだいたい40代~50代が多いように感じます。社会人として経験をある程度積んできている人です。また、採用については期限採用です。プロジェクトが終わると、仕事も終わりということになります。ただ、3年以降も継続するケースが多いので、そのまま仕事を続けている人が多いです。他の仕事と兼業されている方もいました。中にはKEM20時間、KLAR!20時間という時間の使い方で両方で働く人もいます。モデル地域としての雇用期間は3年間なので、終了後に次のプロジェクトに移って仕事を続ける方もいます。基本的にはプロジェクトが終わっても何かしらの形で続ける方ばかりなので仕事がなくなった、やめた方の話は、私が聞く限りではありませんでした

 

Q KEMの申請を行うには複数自治体でなければならないとのことですが、複数自治体の協力・調整はどのように行われているのでしょうか。事例などをご存じでしたら教えてください。
A 申請段階の協力や調整についてはよくわかりません。フォーアールベルク州の方は、9つの自治体で応募されていると話していました。10名(9つの自治体の担当者とMRM)でチームを編成し1ヵ月に1回、会議は9つの自治体を、アルファベット順で地域を巡るように打ち合わせをしているそうです。また、各自治体の首長が集まるネットワークもあります。政策を変更する等の議論があれば、MRMが首長に話をし、首長の集まる会議で政策等の議論が行われます。 9つ自治体があるとうまくバランスをとっていく必要はありますが、お互いの自治体でどんな対策をしているか、確認し合えるメリットがあります。また、数の圧力のような形で、政策に後ろ向きな自治体があっても、前向きな自治体が多ければ、実施の方向になっていくということもあるそうです。

 

Q どういった人がMRMになるのですか?
A 私がインタビューをした方では、大学の修士課程で適応策に関する研究をした方やエネルギー関連の研究所で働いていた人がいました。NPO事務所に所属しながら働いている方もいます。社会人経験が求められるので新卒は基本的にいないようです。

 

Q MRMの評価はどのようになっているのですか
A プロジェクトのマネジメントはしっかりしていて細かい指標が存在します。それに合わせてMRMが毎年報告書を提出しているという形です。

 

Q KEMのMRMについて、MRMになるための特別なコースがあるとのことですが、これはどういう組織が提供しているのでしょうか?また修了した際に学位か、あるいは何か全国資格のようなものは得られるのでしょうか?
A 気候同盟などがやっている気候保護委員というプログラムや、シュタイアーマルク州では60時間の研修があるので、それらを受けているのだと思います。修了することで資格のようなものが得られます。気候同盟の講座は受講後に修了証をもらえますが、学位にはならないと思います。自治体の方が受ける場合は自治体側から一部参加費の支援があります。自治体職員が受けることで、職員自身が色々な知識を得られるので、自治体としてもメリットが大きいということもあるかもしれません。また、ステータスとしての信頼性もあります。