【開催報告】ESD for 2030学び合いプロジェクト 気候変動教育連続勉強会第6回「学校教育におけるESDの実施状況と教員の意識 -中学校、高等学校に対する全国調査2020の結果から-」
2050年脱炭素社会の実現に向けて各分野で必要とされる人材像を共有し、その育成・輩出に向けた体系の確立や推進戦略の構築に向けて、国内外の「気候変動教育」に関する動向や事例を学びます。この度、第6回を開催しました。
※ この勉強会は、環境省・文部科学省が中心となって進めている「ESD(持続可能な開発のための教育)推進ネットワーク」による「ESD for 2030 学び合いプロジェクト」
https://esdcenter.jp/2021/07/starting_manabiai_project/ の一環として実施します。
開催概要
[日 時] 令和4年2月25日(金)18:00~19:30
[開催形態] オンライン会議システム「zoom」を使用
[参加対象] 気候変動教育の実践者・関係者、関心をお持ちの方
[参加者数] 56人
[主催] 北海道地方ESD活動支援センター(環境省北海道環境パートナーシップオフィス)
内容
芝浦工業大学の谷田川先生、栗島先生を講師にお迎えし、気候変動教育の推進においては不可欠な学校教育におけるESDの実施状況と教員の意識に関する研究成果、実践事例についてお話を伺いました。
[講師] 谷田川 ルミ さん(芝浦工業大学 工学部 教職課程 教授)
1969年,千葉県生まれ。上智大学大学院総合人間科学研究科教育学専攻満期退学。博士(教育学)。立教大学大学教育開発・支援センター学術調査員を経て,2013年より芝浦工業大学工学部に勤務,主に教職課程を担当。専門分野は教育社会学。キャリア教育を中心に研究を行っていたが、最近は、持続可能な地域社会の構築と若者のキャリアを組み合わせた「地域人材育成型キャリア教育」に関心を寄せて、種子島、米沢などの中学校、高等学校で教育プログラム開発と実践、評価を行っている。
講演資料はこちら
https://epohok.jp/wp-content/uploads/2022/03/220225_yatagawa.pdf
動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=bqNrMlNHgAg
栗島 英明さん(芝浦工業大学 建築学部 建築学科 教授)
1975年,愛知県生まれ。1998年に茨城大学教育学部を卒業後,2003年に筑波大学大学院地球科学研究科地理学専攻修了。博士(理学)。独立行政法人(現,国立研究開発法人)産業技術総合研究所ライフサイクルアセスメント研究センター研究員,芝浦工業大学工学部を経て,2018年より現職。専門分野は環境政策,都市地理学,持続性科学。元々は基礎自治体の廃棄物政策の評価等を行っていたが,最近は持続可能な都市・地域を実現するための各種研究(評価指標開発,ソーシャルキャピタル研究,消費者行動研究,地域人材育成プログラムの開発等)を進めている。
講演資料はこちら
https://epohok.jp/wp-content/uploads/2022/02/CCE6_2.pdf
動画はこちら
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質疑応答
Q 評価ルーブリックのポイントについて教えてください。
A 谷田川氏:ルーブリック自体は、生徒の学び自体を測定しており、自身の将来と持続可能な地域社会と絡めたもので、レポートの作法やテーマとの整合性等を踏まえて作成しています。これは高校の先生が評価に悩んでいた点から生まれたものです。先生方からは観点別評価についての相談を受けることも多かったので、定量的な目標については、学習指導要領で求められている力をSDGsに落とし込み、事前事後で評価しています。
Q ESDについて教員の関心をどのように高めていけば良いでしょうか。
A 栗島氏:先生方の業務量が多すぎるなど様々な要因があるのでやはり難しいところはあるかと思います。ただ、先生方が取り組みたいと思った時に、できるものを用意しようというのが今の段階です。普通の先生方が使いやすい教材やワークブックをつくっていくことも大事だと思います。分かっていないことを教えることに抵抗がある先生も多いこともアンケートで明らかになっていますが、取り組むのは「答えのない問い」なので、先生に一緒に学びましょうと伝えています。こうして先生方のハードルを下げることが大切だと考えています。
谷田川氏:現場の先生方は、教える内容は重いものと捉えているようです。ESD自体、内容が難しいと感じており、かつ勉強する時間もないとなると、心理的ハードルがどんどん上がっています。みんながアクセスできるような教材を開発していくことが一つの手段かなと思います。
Q 主権者教育、政治参加などの視点がとても大事なのですが、教員の側は「及び腰」になってしまい、方法が分からないといった場面をみかけます。そこを突破するための、教員の政治リテラシーを高めるにはどうすればよいでしょうか。
A 栗島氏:先生方にとって、イデオロジカルなテーマは扱いにくいと思います。自然科学的な気候変動のように、考え方が複数に大きく分かれることのないような話題から政治参加、政治リテラシーに結び付けていくのがいいのではないかと考えます。種子島でもセンシティブな話はあります(例えば無人島を基地にする等)が実際そうしたものは扱うのが難しいです。しかしこうしたトピックに対する取り組みを経て、高校1年生の8割は社会を変えることが難しいと考えていたところが、3年生は8割が変えることができるという認識に変化します。これは生徒が社会変革思考で取り組むことができている大きな成果だと考えています。
Q 未来ワークショップでのファシリテーションで期待することとは具体的にどんなことでしょうか。
A 栗島氏:我々がオンラインで授業を実施する時に、画面越しでは我々生徒の反応がまったく分からず、生徒のテーブルをまわることもできないので、緊張と緩和のモチベーター的な役割をお願いしています。具体的には発言の少ない生徒に対して例示したり、掘り下げた説明をしたりなどです。その他にも、オンラインワークショップで教育以外のところでサポートいただきました。
Q 研修を受けた教職員の方々は、その後どの程度実践に移されたかについての調査はありますでしょうか。また、実践にあたってサポートを個別にされていますでしょうか。
A 栗島氏:アンケートを取ったわけではないですが、先生方の変化について探究の担当の先生に聞いたところ、大学の先生の話を生徒が聞いているときに、はじめは横でなんとなく聞いているだけでしたが、生徒の学びにどんどん介入してくださいということをお伝えすると、黒板に書きだすようになったり、補足をお願いしますと戻してもらったりするようになり、現場の先生の中で動きが出てきたとのことでした。また、バックキャスト思考は生徒に伝えていましたが、その思考は先生方にも伝わっていて、校長先生から聞いたお話では先生方が「この子はこのように育つとよいので、このように関わっていく」というように、先生方も学びを得ていったようです。