気候変動教育

【開催報告】気候変動教育連続勉強会 第4回「学校向けプログラム開発と実証」

2050年脱炭素社会の実現に向けて各分野で必要とされる人材像を共有し、その育成・輩出に向けた体系の確立や推進戦略の構築に向けて、国内外の「気候変動教育」に関する動向や事例を学びます。この度、第4回勉強会を開催しました。
※ この勉強会は、環境省・文部科学省が中心となって進めている「ESD(持続可能な開発のための教育)推進ネットワーク」による「ESD for 2030 学び合いプロジェクト」 https://esdcenter.jp/2021/07/starting_manabiai_project/  の一環として実施します。

開催概要

[日時] 2021年9月29日(水)16:00~17:30
[開催形態] オンライン会議システム「zoom」を使用
[参加対象] 気候変動教育の実践者・関係者,関心をお持ちの方
[参加者] 70人
[主催] 北海道地方ESD活動支援センター(環境省北海道環境パートナーシップオフィス)

内容

学校における本格的な授業プログラムの開発・実践について、福井県及び秋田市における事例をご紹介いただきました。

(1)福井県版気候変動教育プログラム2種の紹介~方法と成果分析
[講師]水上 聡子 さん(アルマス・バイオコスモス研究所代表)
 津田塾大学国際関係学科にて開発社会学を学んだ後、東京にて都市計画・地域づくりに従事し、故郷の福井で独立。一人一人が社会の一員として育ち合うことをテーマに、シティズンシップ教育(市民性教育)の実践研究を進め、ワークショップや授業など参加の場づくりを行っている。福井県地球温暖化防止活動推進センター事務局長在任時から今日まで、様々な気候変動教育プログラムを開発。博士(工学)。

関連リンク:水上聡子、高橋敬子(2021)福井県版「気候変動ミステリー」を用いた教育プログラムの可能性

(2)「気候変動対策×主権者教育」プロジェクト
[講師]福岡 真理子 さん(一般社団法人あきた地球環境会議理事兼事務局長)
 秋田市出身。中間支援組織から環境団体へ移籍後、本格的に活動を開始し、気候変動等に関する事業を多数実施。2010年にはあきた地球環境会議を設立。秋田市地球温暖化防止活動推進センター指定を受け、理事・事務局長として気候変動対策、環境教育、環境保全の3本を柱に、海外(マレーシア、タイ)でもプロジェクトを展開している。特に気候教育は、小中学校から高校や大学、一般等幅広い層へ年間30件以上を実施している。

当日の資料はこちら(pdf)
動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=GOg6mM-AyTY

参加者からの質問

Q プログラムを採用する学校を決めるのは誰ですか?決定にあたり誰が一番影響力を持っているのでしょうか?
A 水上氏:学校でどの授業をどれくらいのコマ数使わせていただけるか、内部調整をしながら決まりました。先生の中でも主任や教頭、校長など、打ち合わせに出て下さった顔ぶれも学校によって違いました。学校との調整は県の担当者がされました。
福岡氏:福岡氏:同様の講義について企業向け一般向けもやっており、いろんな方からオファーを頂いています。事業は3年間、毎年報告書を作成し学校に配布しており、魅力を感じて連絡いただきました。最初の一校を決めたきっかけは、コマ数が確保できていた秋田商業高校です。ユネスコスクールでもあるので、付き合いが元々あったことが大きく、プログラム計画から実行まで、時間はかかりませんでした。

 

Q 今後身近な地域社会に出ていくといった展開の予定はありますでしょうか。
A. 水上氏:もともと地域づくりやまちづくりの仕事をしていることもあり、地域で考え実行する大切さ、難しさを理解しています。生徒にとって学校の中から地域社会へ出ていくのは非常に重要。地域には様々な方がいらっしゃるので、関心の高い人だけでなく様々な人へのアプローチができると良いと思います。地域のまちづくり組織等で住民参加型のまちづくりワークショップをしていますが、そうした場では色々な課題を扱います。その中には環境、防災、健康、福祉、交通など気候変動と関わる多彩なテーマがあり、課題を重ねることで、地域が今後の持続可能性を考える良いチャンスとなると思います。
福岡氏:現在、高校等から授業依頼が多いテーマとしてSDGsがある。17個のゴールをひとつひとつひも解き、別の地域課題にも展開するのは実現しやすい可能性を秘めていると感じます。秋田商業高校ではエコロジカルビジネス班というクラスで実施しています。担当している授業では生物多様性や気候変動を取り上げるが、起業家の視点を盛り込む等、地域を元気にしていくために自分たちは何を目指すのか、といった部分を大事にしています。

 

Q プログラムの手応えを得て、行政・学校・NPO等実施に関わってきたスタッフ側で、次にトライしようと話し合っているようなことはございますか。また、行政の評価はいかがでしたか。
A.水上氏:今後は県内全域にすそ野を広げていく必要があると考えています。「福井県版ミステリー」の成果は論文として審査に通り公開されたので、「課題解決ワークショップ」の方についても論文にすることでしっかり手法や効果を伝えていきたい。行政の方では、この事業の価値をしっかりとサポートしていただき、とても感謝しています。
福岡氏:講師養成について、生徒の発想の引き出し方など均一なレベルで実践できるようにしていきたいです。評価については事例発表の場は増えており、お褒めの言葉をいただいています。また、明るい選挙推進協議会から賞をいただいたり、メディアで取り上げられたことをきっかけに問い合わせも増えています。

 

Q プログラムの実施にあたり、何人くらいの指導者・スタッフが必要となりますか?
A.水上氏:自分とこのプログラムを共同開発した高橋さん、県の担当者で実施しました。教員の方々には事前準備から当日の運営まで側面サポートをしていただきました。今後のために、この授業ができる外部講師養成の研修会を開催しました。教員の方々にも体験会を開催できるとよいと思います。
福岡氏:スタッフは4人。各ステークホルダーにも手伝って頂き、講師は8人。今後は規模を拡大したり、教員への知識やノウハウ移転も希望があればできるような体制を整えています。