対話の場づくりと協働

地域レベルの保全を~釧路国際ウエットランドセンター~

釧路国際ウェットランドセンターは釧路市、釧路町、標茶町、鶴居村、厚岸町、浜中町や関係機関など数多くの団体や個人の参加により組織された団体で、湿地など釧路地方の豊かな自然の保全を図るとともに、ラムサール条約の理念でもある湿地の賢明な利用の推進を図るため活動を行っています。
今回は事務局長を兼ねる釧路市役所の菊地湿地保全主幹にお話を伺いました。

釧路湿原は動植物にとって貴重な生息地であるとともに、人間にとっては開拓を拒み続けてきた土地でもあるため、多くの人々にとっては「不毛の地」と考えられ、地域住民からは遠い存在でした。それでも、専門家や自然愛好家からは湿地の価値が認められていた中で、釧路湿原が1980年にラムサール条約に日本で 最初に登録され、1987年には日本で28番目の国立公園として指定されました。このような出来事が起こるにつれ湿地を大切にしようという考えが地域でも広がり始めました。1993年に第5回ラムサール条約締約国会議が釧路で開催された時には、海外の国々から政府関係者や学者が訪れ、釧路湿原の中で希少な動植物が生息し自然の生態系が守られていることに注目し賞賛の声を上げましたが、これが地域住民の湿地への意識が「不毛の大地」から「地域の宝物」へと転換するきっかけのひとつになりました。

このラムサール世界中から釧路に集まった専門家たち会議では、多くの人々がそれぞれの得意分野でボランティアとして活動し、会議開催に協力しましたが、この時の自然環境に対する地域住民の熱い関心と温かいホスピタリティは、国の内外から高い評価を受けました。このように地域住民自身が、出来ることから始めて次第に環境保全に関わりを持ち、その活動の輪を拡げる姿勢は今も変わらず続いています。
写真で見るときれいな湿原も実際は乾燥化や土砂流入など、周辺では病み始めています。そこで、地域では自然環境を再生しようとするさまざまな活動も行われています。そのような中、生物の多様性を保ちながら、ラムサール条約の理念である湿原のワイズユース(賢明な利用)を普及させ、湿原からの恵みを享受するために地域が一緒になって活動しようと呼びかけているのが釧路国際ウェットランドセンターの活動のひとつです。

絵画とともに湿原の歴史と未来を語る2010年には釧路湿原がラムサール条約に登録されてから30周年を迎えましたが、湿地に関心が払われてきたこれまでの年月を振り返りながら、地域の大切な宝物で ある湿地を将来の世代に引き継いでいくためにできることを考える記念事業を実施しました。「みんなで調べる復元河川の環境・2010年」というフィールド ワークを春と夏に2回実施しましたが、釧路川茅沼地区(標茶町)の復元河川の現場で、人の手で直線化された川を復元事業によって元に戻すことにより湿地の 環境にどのような変化や影響があるのか、参加した住民の皆さんと一緒に考える機会としました。また12月には記念イベント「湿原たからばこ」を開催し、シ ンポジウム「未来へはばたく釧路湿原」や地域で活動する団体や個人が出展した展示コーナーなど、地域の活動の成果を集めた催しとなりました。(詳細はこち らにhttp://www.kiwc.net/ 掲載中)

市民と楽しむ冬の湿原の魅力
今年は、ラムサール条約がイランのラムサールで採択されて40周年を迎え、世界各地や日本国内でも湿地の日を記念した行事が行われていますが、釧路国際 ウェットランドセンターでは、1月29日(土)に地域の住民の皆さんを対象にした「冬のエコツアー2011」をラムサール条約40周年記念事業として実施 しました。

SL冬の湿原号から、湿原を見ながら釧路町細岡の釧路湿原駅を訪れ周辺のハンノキ林や沢地を散策し、湧水やヤチボウズを観察するなど、冬の湿原を体験してもらいました。

このように、釧路国際ウェットランドセンターでは、これからも「地域が世界に誇る自然財産の釧路湿原」をPRしながら、地域レベルでの湿原保全の活動につなげていきたいと考えています。
(取材協力:釧路市役所)