協働取組

大沼 地域と連携~国際協力、環境・森林保全、そしてまちづくり

大沼国際ワークキャンプの活動のようす
今年で4回目になる「大沼国際ワークキャンプ」が行われていま す。ヨーロッパやアジアなど世界中から若者が集まり、地域が持続可能な形で発展していくために、環境保全活動をしています。植樹・間伐などによる森づくり、大沼湖の水質保全、ゴミ拾いなどさまざまな形のボランティア活動をしています。 このワークキャンプは、参加者が一緒に共同生活をしながらじっくりと活動に取り組むボランティアプロジェクトであり、日本を含めた世界各地で行われています。日本ではNPO法人NICE(日本国際ワークキャンプセンター)が主催をし、国内の共催団体へボランティ アを派遣します。国内受け入れ先は約70箇所。そのほとんどが15日間のプログラムを実施していますが、2007年国内では唯一、大沼で3ヶ月という中期 滞在型のボランティアを受け入れました。このプロジェクトの地元受け入れ団体である「大沼マイルストーン22」は大沼周辺の環境保全作業、森林保全活動な どの活動を盛り込んだ中長期・短期の2種類のプログラムを組み、地元住民との協働を図りながらワークキャンプの運営をしています。(この記事は、2007年8~10月、大沼国際ワークキャンプを取材した内容を元に構成しています。)

● 国際ワークキャンプの活動
今年は、中期大沼国際ワークキャンプには日本人1名を含む4名が参加をして、7月中旬~10月中旬の約3ヶ月間、さまざまな活動をしてきました。また、その間の9月上旬~中旬の短期プログラムには、地元大学生らを含む20名が加わって活動をしました。参加メンバーはそれぞれの国・地域から自費で大沼へやってきて、共同生活を営み、環境をメインテーマに活動をしていきます。また、地元の受入先地域としては、メンバーに宿泊と生活に必要な食材を準備・提供します。ワークキャンプでの共通語は英語。日本人のメンバーが通訳をしながら、地元との調整をしてプログラムを進めていきます。プログラムの内容は、吉野山及 び大沼周辺を対象に、森(国有林)の手入れ、植林、湖の浄化作業、カヌーに乗って湖のごみ拾い、街のごみ拾い、地域活動などと多岐に渡っています。主に大 沼の環境保全のためにできることを活動内容としていますが、まちのお祭りやイベントなどにも積極的に参加し、地元の人との交流を深めるきっかけをつくっています。大沼でのワークキャンプは、今年で4年目を迎えました。今までは、参加者全てが国内外含め外部の人間がほとんどだったのですが、今年は、大沼の水質浄化をテーマにしている地元大学の研究室などもプログラムに深く関わって一緒に作業を行い、研究者・大学生・ワークキャンプメンバーの間に交流が生まれ ました。

● 大沼の環境の課題
大沼の環境は、地域の観光業、酪農業などと深く関わっています。毎年、大沼公園には沢山の観光客が訪れます。大沼の美しい自然景観が観光地として人気を呼んでいる一方、観光客が乗るモーターボートの起こす波が、湖畔や島の浸食を促進しているなど、観光業が負の影響を与えている現状もあります。また、酪農業も 多く、雨によって流れ出た家畜の糞尿が、大沼の水質汚染につながっています。どちらも地域を支える産業なので、そこに環境負荷の原因があることがわかって いても、経済活動のマイナスにつながることにはなかなか手が出てきません。 30年以上前は、大沼で泳ぐことも出来たと言います。大沼の水質は、有機汚濁の指標として使われるCOD(化学的酸素要求量)で見ると、今年で27年間、 継続して環境基準を超えています。夏の暑い時期には、富栄養化からアオコが発生する様子も見られるようになりました。大沼の現状に不安を抱いている住民も少なくありません。林業関係者は、手入れが行き届かなくなった森や伐採の進む森林の保水力が低下し、土砂が大沼に流れていくことを懸念しています。漁業関係者は、採れる魚が少なくなったことに不安を抱き、汚染の発生源対策に行政が取り組むことを切に願っています。このような状況の中、「ワークキャンプの 3ヶ月間の活動で地域に深く根付く課題を解決するのは難しいかもしれない。ただ、面と向かってどうしたらいいのか分からないような問題の橋渡し、クッションのような役割ができれば、地元にも貢献できるのではないか」-キャンプメンバーは活動を続ける中でそう感じるようになってきました。今年のワークキャンプは、大学との連携のほか、観光協会から、調査・観察のために遊覧船を提供してもらったり、森林管理局に間伐の仕方を教わったりなど、地元協力者が彼らの活動に深く関わっていることも多く、一緒に活動に取り組む姿も見られました。

● ワークキャンプと地域の協働
今年で4年目になるワークキャンプといっても、地元の人々の中での認知度は決して高くはありません。「いいことをしているのだから、もっとアピールしてもい いのでは」、という意見もあります。3ヶ月の活動の中で、地元の人々との距離がだんだんと縮まってきた頃、ワークキャンプの活動は終わります。来年もまた 大沼でワークキャンプは開催されるかもしれませんが、参加してくる青年たちは毎年入れ替わるため、活動がつながらない、という課題も残ります。だからこそ、最終的には地元の方が主導をとって動いていけるような意識付けのきっかけになることを求めざるを得ません。地元の方からは、「ワークキャンプのメンバーが媒体になって、地域内でも今まで交流がなかった人たちの間の繋がりが強くなった」、「当事者たちがなかなか手を出しづらい地元の複雑な問題を、ワークキャンプのような利害関係者以外の第3者が入るといい刺激になる」、という声もありました。 大沼が発展していくためには、その恵まれた自然環境を守り続けることだけではなく、経済効果や人とのつながり、外との交流など様々な要素が必要になるで しょう。持続可能性、そしてそのための教育を考えるESDの視点が活動の中に色濃く出ている大沼ワークキャンプには、地元の方たちとの協働が欠かせません。ワークキャンプが地元に貢献する活動を通して、意識変革のきっかけを作れれば、そしてそれが地域活性化にもつながれば、という思いを引き継ぎ、今後も 大沼での活動は続いていきます。

 

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