対話の場づくりと協働

花キャンパスREBUN(礼文高校)

可憐!レブンアツモリソウ日本最北の島、礼文島。春から秋にかけて300種以上の高山植物(寒地性植物)が咲く花の島です。利尻島やサロベツ湿原等も含め、利尻・礼文・サロベツ国立公園となっています。中でも、礼文島にのみ咲く「レブンアツモリソウ」は有名で、多くの観光客の目を楽しませています。
一方で、「レブンアツモリソウ」(写真右)は度重なる盗掘により数が激減した花でもあり、国内希少野生動植物種にも指定されており、増殖事業等の保護活動が盛んに行われています。
「高山植物」については保護活動と併せて、教育活動も盛んに行われています。今回は、礼文高校での取り組みをご紹介します。
(写真全ては礼文高校様より提供)
 

「高山植物」が必修科目に 

『「高山植物」必修科目に 礼文高 郷土解説の知識習得』という記事が北海道新聞に掲載されたのは平成19年10月末。礼文高校では、14から生徒が観光客のボランティアガイドを務める総合的な学習の時間を設けており、この時間が基となって「高山植物」が必修科目となりました。
この科目では、植物の構造や分類の基本から始まり、礼文島の高山植物や地形、森林、湿原等について学んでいきます。併せて、国内外 の自然保護活動の現状や、保護と利用の考え方、自然解説の基礎知識を学習した後に、観光客に対して、実際にガイドを行い、郷土の解説者(インタープリ ター)として育っていくことを目標としています。
授業は、2年生後期~3年生前期に行われます。教科書は現在、同じように郷土の自然学習を行っている屋久島高校等から資料を収集し、礼文高校のオリジナルのものを作成中です。単なる植物の知識ではなく、観光客の方が快適に礼文観光を行ってもらえるように、マナーについても勉強します。
 
・地元の方も先生に
環境NPO礼文島自然情報センターの方による授業風景 この授業には、地元で礼文島の自然を守っている団体の方々が講師として活躍しています。環境NPO礼文島自然情報センターもその一つ。「自然をよく理解したい。未来の子どもたちに豊かで美しい島を引き継ぎたい」との思いから設立された団体で、環境省、林野庁、礼文町等と連携して、自然情報の収集、交換、発信を行っています。
 植物写真家、自然ガイド等の方々が在籍し、それぞれの専門性を活かした授業を展開。授業は、学校を飛び出し現地でも行っています
 
・お互い勉強という感じで面白い
2年生の後期から学んできた礼文島の自然に関する知識を、3年生の前期には、ボランティアガイドとして、実際に観光客に披露します。ガイド資料は手作りです。
スラスラとガイドしていくという感じではなく、ぎこちなさも含んでいますが、わからないことがあったり、うまく説明できないことがあったりしても等身大でガイドをしています。
ガイド中「一 生懸命教えてくれてうれしかった。お互い勉強という感じで面白い」、「これから花を覚えていくと思う。教えたり、教えられたり、楽しかったです」と観光客 の方には好評です。プロのガイドであれば、「教えてもらう」という一方通行になるところですが、島外の人と島内の人がお互いの目線で、同じものを共有して いくという双方向の楽しみがそこにはあるように思えます。
「花が沢山あって観光客の方に喜んでもらえると楽しい」、「花がないときでも礼文島のどんなことを話せば良いのか分かった」、とは実際にガイド を行った生徒の感想ですが、普段接している自然を、観光客というフィルターを通してみることで、地元を再発見することができたはずです。
 
・礼文島再発見
島の人から学んだ地元のことを観光で訪れた方へ伝える。「伝える」ことで島の価値や、他地域の方の考え方等、いろいろなことを学び発見する。観光で訪れた方には、一生懸命ガイドしてくれた生徒の顔とともに礼文島の思い出が残る。ガイドをした生徒のご家族にも、おそらくこの体験は伝わっていることでしょう。
ただ、生徒がボランティアでガイドをするということにとどまらず、関係する多くの方に、“再発見”がおきる可能性を秘めた教育活動となっています。
 
・今後の展望
礼文高校では、6~7月にかけて3回ガイドを行うこととしていますが、「後ろ向きな生徒がいなかったのが良かった。3回目にしてやっと満足に活動できた」と担当の恩塚先生は語っています。1回、2回、3回と回を重ねるうちに積み重なる経験は、一生の宝となったはず。
礼文島では、観光親善大使として小学生、中学生、高校生が修学旅行先で礼文島をアピールしたりする取組も行われています。

礼文島の自然を知り、護り、活かしていく。そんな地域の資源を活かした教育活動は、観光客も含め大きなつながりをもって続いていくことでしょう。