対話の場づくりと協働

定山渓地区堆肥化モデル事業実行委員会

選定理由:
行政が支援するモデル事業であるが、事業者が団体として地域の資源循環に取り組んでいる点、また事業者だけではなく、一般市民も入り地域として取り組んでいる好事例である。地域における資源循環に、事業者と一般市民が協働して取り組む点は、パートナーシップでの環境保全活動として非常に良い視点であることから、モデル事業ながら紹介することとした。

●モデル事業の概要
 この事業は、定山渓観光協会、定山渓温泉旅館組合、定山渓連合町内会及び札幌市で実行委員会を組織し、農協、農家などとの連携体制のもと、定山渓地区のホテル等から生ごみを分別収集して肥料に再生し、その肥料を活用した定山渓の地場野菜をホテルの食材として観光客の方に提供したり、地域の特産品として販売するという「定山渓地区の新たな魅力づくり」を目的としたモデル事業である。事業所としてホテルが19件、病院1件が参加した。期間は平成18年4月1日から4月29日までの日曜日を除く延べ25日間である。生ごみの総排出量は25日間にも関わらず、40トンを超え、4軒の農家に20トンの堆肥を供給した。秋には、地場野菜を用いて各ホテルでフェアやイベントなどを開催し、地元住民でにぎわった。

●事業者として生ごみの堆肥化に取り組むきっかけ
 生ごみの分別や堆肥化は、10年ほど前から何社かまとまりながら、視察をしたり、いろいろと新しいものを取り込みながら、何らかの形で取り組んでいた。しかし、採算などさまざまな問題がクリアできず、本格的な活動にはなっていなかった。あるとき札幌市南区におけるタウンミーティングにおいて、上田札幌市長から定山渓で生ごみの堆肥化が地域ぐるみでできなければ、他の地域は無理であり、ぜひやってみないかと提案があり、やってみようということになった。札幌市のモデル事業という位置づけが大きいことは否めないが、今まで以上に地域ぐるみでやっていこうという意識は芽生えた。

●地域資源循環モデル・環境パートナーシップの好事例、と事業継続の問題点
 観光協会や旅館組合では、以前から話し合いの場や協働の実績があったので、意思統一への障壁はあまりなかったが、大手のホテルで自社の堆肥化システムが稼動していたところなどもあり、そういった先を取り込むのは若干ながら手間を要した。町内会も人口1500人、世帯数1000世帯程度の規模なので、連合町内会長から了解を得ることで進むことができた。堆肥は、札幌市を通じて南区内の農家4件で使ってもらい、コマツナ、チンゲンサイ、大根、トマトなどの野菜が栽培された。栽培された食材は、10月16〜20日に各ホテル・旅館で「エコ野菜フェア」が開催され、実際に宿泊客の口に入ったほか、同月15日には本モデル事業のPRイベント「ぐる〜りエコ収穫祭を開催し、生ごみ堆肥で作られた野菜が実際に販売された。野菜はそのまま食材として活用されたり、漬物のなどの加工品として提供されている。また、イベントでは本モデル事業で作られた生ごみ堆肥(500gパック)が先着250名にプレゼントされた。
そこで出来た農産物を地域の名物として付加価値を付け売り出したいと考えていたが、肝心の作物の品種が一般的過ぎて、ブランド化するところまでは行っていない。また、現在のところは堆肥化するために定山渓から石狩のセンターまで運んでいることもあり、輸送にかかるエネルギー消費が大きすぎる。農家での肥料としてだけではなく、飼料として家畜などにも利用でき、豚肉や鳥肉などの商品として温泉街で使うことができれば本当の資源循環と言える。そういった意味で、農家にも夢を持って取り組んでいただけるところが現れて、一緒に組んでいける農家や酪農家が現れることを望んでいる。

●従業員教育という副産物
 生ごみの収集には、分別が非常に重要な作業となるが、それを主に行っている旅館・ホテルの従業員には、大切な従業員教育の場となった。当初面倒と感じていた従業員も分別をする意味や地域循環モデルが軌道に乗ったときのメリットを次第に理解することで、積極的に取り組むをようになっている。

●地域の価値を創造することが、本業の価値につながる
 定山渓地区は、187万人が住む大都市札幌の奥座敷というわれるように地理的に独立した地域で、しかも温泉地区として有名である。環境的に持続可能な取り組みが本地域のブランドとして売り出せるようになれば、自然と地域の利益として還元される。そんな未来を予感させられた事例である。

データ

事業名 平成18年度定山渓地区生ごみ堆肥化モデル事業

参加主体 札幌市、定山渓観光協会、定山渓温泉旅館組合、札幌市環境事業公社、農協、農家

URL http://www.city.sapporo.jp/seiso/jigyousyo/namagomi.html

*北海道内におけるCSRに基づく社会貢献・環境保全活動 意向・現況調査報告書 
 (環境省北海道地方環境事務所、財団法人北海道環境財団 2007年3月作成)より転載 詳細はHP「北のCSR」をご参照下さい。

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