北海道国際航空株式会社(AIR DO)と知床財団
「地域に貢献する企業」なる理念を胸に、世界遺産・知床をフィールドに活動する知床財団との有効なパートナーシップ構築し、「知床キムンカムイ・プロジェクト」に取り組んでいる。また、単なる資金の寄付にとどまらず、寄付グッツの販売を通して、搭乗客へも知床自然保全に参加する機会の提供に取り組むなど、一般の人々を広く取り込む仕組みを構築していることも注目できる。
●「北海道の翼」への困難な道のり
「北海道の翼」を夢見て道内有志が設立したAIR DO。1998年12月、新千歳〜羽田間にその第一便が就航したことは多くの人にとって記憶に残るところであろう。しかしながら、その歩みは困難を極めるものとなり、2002年6月には民事再生手続の申立てを行うに至る。厳しい再生計画のもと必死に業務を立て直し、ついに2005年3月、その再生を完了する。設立・再生の困難を経てきたAIR DOにとって、この時ようやく「北海道の翼として北海道のために貢献する」との理念を本業外においても取り組み得る環境ができたと言える。
●契機になった「東京―女満別」の就航
女満別は、2005年に世界遺産に登録された知床を観光する上での玄関口となる空港で、AIR DOは札幌、旭川、函館への就航に続き、次なる就航地としてこの女満別を選ぶこととなる。道東の地への就航は、道内の航空ネットワークの拡充を図り地域への寄与を企業の理念とするAIR DOにとってぜひとも就航したい空港といえた。
そんな折、対外的に様々な顧客と接する営業担当から疑問の声が上がる。「多くの観光客を知床に運ぶことは、世界遺産・知床の自然環境保全から見ると負の側面もあるのではないか。北海道の翼を掲げる航空会社として、旅客を運ぶ以外に取り組めることはないのか。」もともと「地域への貢献をしたい」との思いのもと設立されたAIR DOにとって、この声が全社の思いとなるのにそう時間はかからなかった。
●取り組みに向けたパートナーシップの構築
航空会社は、本業に付随して自然保護活動を行うということとは関わりが薄く、自身で何ができるかと考えても簡単に案などでない。そこで、知床の自然環境を長く調査・研究してきた知床財団に声を掛け、「知床キムンカムイ・プロジェクト」なるプロジェクトを進めるべく協議を重ねた。本プロジェクトは北海道を象徴する野生動物であるヒグマの生態調査を進め、観光客増加が間違いない知床の地で人とヒグマがともに生きる道を模索するもの。知床財団はその調査の遂行を、AIR DOは2005年度からの3年間で総額2500万円の寄付を行うことで内容が固まった。企業建て直しに取り組んできたAIR DOにとって、本業外といえる自然保全活動に2500万円もの寄付を行うことは前例がなかったことであるが、社内においてこの活動への疑問の声はほとんどなかったという。むしろ、地域のための自然保全活動を目に見える形で行える喜びを持つ社員が多かったようだ。
●取り組みの輪を広げて
AIR DOの取り組みは寄付のみでは終わらない。知床の地を訪れる多くの人々に、知床の自然、そしてその保全活動である「知床キムンカムイ・プロジェクト」を知ってもらうために、その調査活動の様子を機内誌などで定期的に報告。さらに知床の自然を愛し、その保全活動である本プロジェクトに参画したいと考える全ての人々にその機会を提供しようと、寄付グッズ(タオル)を機内などにて販売し、売上げから実費分を除いた全額を知床財団に寄付することとした。2006年度は6000枚もの売上げを上げたという。機内にて乗客と接する場を持つ航空会社だからこそできる優れた取り組みといえよう。
●評価・課題、そして今後へ
知床財団の活動自体は2006年度から始まったものであり、現時点でその成果は計れていない。そもそも乗客数・売り上げの増加などの定量的な数値も持って本プロジェクトの成果を計ることは考えておらず、調査結果が、何らかの形で知床でのクマと人との共生の提案につながる結果をもたらし、知床の自然環境が健全なまま保たれることにつながれば、それこそがこの取り組みの成果であると考えている。それを見るのはしばらく時間をおいてからであろう。
さしあたり本プロジェクトへの賛同は2008年度で一旦終わることとなるが、継続の有無を考えるとき、やはり資金的な余裕の有無が最大の課題である。しかしながら地域貢献はAIR DOの信念であり、できるならばこうした活動は継続していきたいと考えている。
企業データ
所在地 札幌市中央区北1条西2-9オーク札幌ビルディング
連絡先 tel 011-252-5533
CSR・環境報告書の発行 無
CSR担当部局 無
URL http://www.airdo.jp/ap/index.html
*北海道内におけるCSRに基づく社会貢献・環境保全活動 意向・現況調査報告書
(環境省北海道地方環境事務所、財団法人北海道環境財団 2007年3月作成)より転載 詳細はHP「北のCSR」をご参照下さい。
( パートナーシップ事例 / CSR事例 )