対話の場づくりと協働

「株式会社GEL-Design」と「札幌市円山動物園」〜COOLに環境CSR シロクマさんとのパートナーシップ

地球温暖化によって、北極域の環境が悪化し、早ければ2040年には北極海から氷が消失するかもしれない、ということが言われています。2006年5月に 公表された最新版のレッドリストには、ホッキョクグマは絶滅危惧種として追加されました。札幌市円山動物園は、ホッキョクグマの繁殖に成功している数少ない動物園のひとつです。動物たちと触れ合う場を提供しながら、温暖化防止やホッキョクグ マの危機などの環境問題を訴えています。 では、市民や企業はそのために何ができるのか。株式会社GEL-Designは、保冷機能付ランチボックス「GEL-COOL」などをつくっている北大発 のベンチャー企業です。そのGEL-Designが、円山動物園応援企画として、限定2000頭(単位はあくまでも頭)で、円山動物園の人気ホッキョクグ マ、ピリカをモチーフにしたランチボックス、「GEL-COOま」を作りました。1頭の売り上げにつき、ホッキョクグマの餌となる魚を1匹プレゼントす る、という社会貢献の取組みを行っています。 本業を通して円山動物園を応援し、温暖化防止を訴える取組みは、真摯さの中にも茶目っ気が隠されているユニークなものです。 (この内容は、2007年6月〜8月の株式会社GEL-Design代表取締役社長の附柴裕之氏、札幌市円山動物園経営管理課経営係長の北川憲司氏への取 材より作成しております)
 
 ● 札幌市円山動物園の再生-。
同じ北海道内の旭山動物園が注目される中、札幌市が運営する円山動物園のあり方についても議論が深まるようになってきました。2006年3月、札幌市職員 の北川さんは「円山動物園の再生をやってみないか」-。との話を受け、市役所から動物園に移動。 円山動物園の再生に向けた取組みを行う中、動物園でも人気を誇っていた、円山動物園で生まれ育ったホッキョクグマのピリカに注目が集まりました。以前から 動物園を訪れるお客さんから「ピリカグッズはないんですか?」と聞かれることもあり、「ピリカのグッズを作ろう!」と、Tシャツの発売が決まりました。 案として出てきたデザインはふたつ。ひとつはTシャツにシロクマの写真をつけたもの。もうひとつは、ピリカの顔をモチーフにしたもの(右図参照)。このピ リカの顔デザインを見た瞬間、「いける!」と大きな期待を寄せたものの、写真デザインが採用となりました。しかし、「売れない・・・」。
 
 ● 株式会社GEL-Designのひらめき。
株 式会社GEL-Designは、2006年3月末に、保冷ランチボックス「GEL-COOL」の発売を開始しました。蓋の部分に保冷ジェルが入っており、 中身を冷たく保ったまま使えるランチボックスで、9月には、「グッドデザイン賞」を受賞しました。 2007年の「札幌スタイル運営委員会」に参加していた附柴社長は、そこで見た「ピリカデザイン」から、GEL-COOLとシロクマのコラボレーションを ひらめき、そこで「名前はGEL-COOま。来月には販売します!」、と決意表明。 株式会社GEL-Designは、それまでにも下川町の森作りに貢献など、環境配慮やCSRの意識もありましたが、「もっと分かりやすいものを」、「環境 配慮は行動とモノで」、という意識が強くありました。その点、「GEL-COOま」は非常にわかりやすいもの。ですが同時に、旭山動物園が注目されていた ので、その尻馬には乗りたくない。また、円山動物園は札幌市の運営なので、中は行政の人。話が通じないのではないか。スピード感がないとつらい・・など、 色々な思いを抱いていました。

● シロクマが結んだパートナーシップ
一 方、Tシャツの販売後にも事業の展開を図っていた円山動物園では、さまざまな企業とのパートナーシップが考えられていました。北川さんは、企業とパート ナーを組んでCSRに取り組む際に大事なことは、?,?客さんが共感できること、?△笋辰討い襪海箸?事実に基づいていて、真剣であること、??きちんとしたス トーリーを持ったパートナーであること、と言います。 附柴さんの決意表明の数日後、「GEL-COOま」の話を偶然聞いた北川さんは、一瞬で「いける!」と判断。ピリカは2007年の2月で帯広に移動になっ てしまったものの、「GEL-COOま」の話は、キャッチーでイメージしやすい。また、北川さんをはじめ、Tシャツ作成の際にボツになっていた「ピリカデ ザイン」のリベンジ!と、共感する方たちの努力もあり、関係機関との調整の話もまとまり、数日でGOサインが出ました。こうして、GEL-Design は、ピリカデザインを蓋の部分に使ったランチボックス、「GEL-COOま」の販売に向けて動き出しました。オス、メスの2種類が作られ、単位は「頭」。 1頭の売り上げで、動物園のホッキョクグマにお魚一匹がプレゼントされます。そしてその中で温暖化や絶滅危惧種について考えるきっかけを、お客様に提供し ます。 「動物園の最も大きな役割は、ホッキョクグマはじめ絶滅危惧種が生息している環境を保全・回復するために、温暖化などの地球環境問題について考え、私たち にとってもかけがえのない地球を守るために、できることから行動するためのきっかけとなるメッセージを発信することだと思います」(円山動物園ホームペー ジより) 「絶滅危惧種ホッキョクグマを守るために・・・GEL-Designは札幌市円山動物園を応援します」 (GEL-Designホームページより)
 
 ● 2007年7月 販売、そして完売
  5月22日。遂にオンラインストアでの発売が開始され、一晩で200頭(個)以上が販売されました。ランチボックスのそれぞれに手書きのメッセージが添 えられ、地球温暖化とシロクマの現状が説明されました。更に6月には、一度ボツになっていたピリカデザインのTシャツが遂に発売されることになり、GEL -Designのオンラインストアにて販売されました。 6月30日には、円山動物園で「お魚贈呈式」が行われ、当日はGEL-Designの社員の皆さんは勿論のこと、ピリカデザインのTシャツを着た多くの子 どもたちが集まり、ホッキョクグマにお魚がプレゼントされる様子が見守られました。 発売開始から約2ヶ月。7月28日にオンラインショップでは「GEL-COOま」は完売。 最後は、ピリカが嫁いだ先、帯広のお客様でした。

● 今後の展望は?
  株式会社GEL-Design:「子どもが増える」 今回オス・メスのペアで作った「GEL-Cooま」の子ども、という意味でも、絶滅危惧種のホッキョクグマの子どもが増える、という意味でも、また更に、 このような活動が広がっていくという意味でも、次世代に続くことを期待している。 札幌市円山動物園:「Zooを舞台にEcoを!」 円山動物園はいろいろなところとパートナーシップを組んで、活動の展開を図っている。パートナーとの相乗効果が出るような形で、どんどん円山動物園を活用 し、環境保全、環境教育の場として活動を展開してほしい。 ピリカデザイン復活のきっかけとなった、同じ目的を持つ企業と動物園のコラボレーション。附柴さんの言うとおり、「次の世代につながる」ように、今後もユ ニークなCSR活動や環境保全活動が展開されていくことを期待しています。 (文中の写真は、札幌市円山動物園、および株式会社GEL-Design提供)

株式会社GEL-Design
  所在地 札幌市北区北21条西12丁目 コラボほっかいどう(北海道産学官協働センター)2階
連絡先 tel 011-709-2260
CSR・環境報告書の発行 無
CSR担当部局 無
URL http://www.gel-design.co.jp/
 
札幌市円山動物園
所在地 札幌市中央区宮ヶ丘3番地1 連絡先 
 tel  011-621-1426
URL http://www.city.sapporo.jp/zoo/

( パートナーシップ事例 / CSR事例 )