【ESD】濤沸湖水鳥・湿地センター
平成28年3月2日(水)に濤沸湖水鳥・湿地センターを訪問し、センターの取り組みについて、細川英司さん(網走市市民部生活環境課参事兼センター長)と秋山恵美子さん(網走市市民部生活環境課 濤沸湖水鳥・湿地センター)にお話を伺いました!
濤沸湖水鳥・湿地センターとは
濤沸湖水鳥・湿地センターは、濤沸湖における環境学習・保全活動を推進するための拠点施設として平成24年にオープンしました(環境省の設置、網走市の管理)。
濤沸湖は、アイヌ語の「ト・プッ(湖の口)」を語源とする海跡湖。海岸草原と湿地に囲まれた汽水湖で、水鳥や花など様々な生きものが生息しています。年間を通して250種ほどの野鳥がみられ、国内有数の渡り鳥の中継地として国指定鳥獣保護区(平成4年)及びラムサール条約登録湿地(平成17年)となりました。
センター内は、野鳥観察スペース(双眼鏡・望遠鏡あり)、映像による濤沸湖の四季紹介(多言語)、手にとって楽しく学ぶことができるハンズオングッズ、濤沸湖の自然、歴史や地域の方との関わりなどの概要、標本、調査・研究の展示スペースがあり、濤沸湖を様々な角度から学ぶことができるようになっています。また、夏は自転車の貸出を行っており、センター周辺の観察ポイントをサイクリングすることができます。
環境教育プログラム
濤沸湖水鳥・湿地センターは、植物や野鳥の観察会の実施をはじめ、学校教育との連携も行っています。学校の「総合的な学習」の時間では、映像学習→館内見学→バードウォッチングという流れが一例ですが、学習の目的に合わせてプログラムを作成しています。「近隣の学校に通う子ども達は、センタースタッフの解説があると時間を忘れて鳥を見入ってしまいます。」と、ゆっくり鳥を見る貴重な機会になっているようです。
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センターの希望としては、市内の全ての小中学校に「“環境学習の場”として利用してもらえれば。」とのことですが、各学校のスケジュールなどの制約から、なかなか難しい状況。「教育委員会とセンターが上手に連携することで、ラムサール条約や湿地の動植物などについて、子ども達に伝えることができるのでは。」と期待されていました。
普段心がけていること
冬期は天候が厳しい場所であり、開館5年目でもまだセンターが知られていないこと、また、網走市は他の学習施設も充実しているため、センターを選んでもらうための努力が必要であることから、ホームページで生きもの情報の発信(スタッフブログをご覧ください)や子どもの利用促進を図るため、子ども向けニュースレターの発行など、情報発信を大切にされていました。
また、センターへの来館促進をねらいとして、年に2回ほどセンターを所管する網走市生活環境課主催の環境関連イベントや市教育委員会主催の生涯学習イベントで、ラムサール条約や濤沸湖の生きものへの興味・関心が高まるような展示内容による出張ブースを設置。子ども向けに、遊びながら学べるようにクイズやパズルなど(スタッフさんの自作です!)もおき、センターのPR活動にも努めていらっしゃいます。
秋山さんは「楽しみながら学んでもらえるように心がけています。学校の受け入れではスライドなどで学習をした後に野鳥の観察をすることで、自然の大切さや新たな気づきを自ら得ることを大切にしています。もちろん、ラムサール条約、汽水湖のこと、生態系など様々な生命のつながりを伝えていきたい。」と。
また、希少種や繁殖にかかる情報は、SNSなどによる情報拡散が短期間の集中的な利用を招きかねないことから、自然環境や動植物への影響を考慮し、慎重に取り扱いを行っていらっしゃいます。
様々な方との連携について
センターに登録しているボランティアさんで結成された「濤沸湖ファンクラブ」には約50名の方が入会しており、「皆さんには、望遠鏡の操作や使い方の指導などの来館者案内、主催事業への協力、子ども向けの講座のアイディア出しやプログラムの一部で講師を務めていただいたり、メーリングリストを活用した自然情報提供、調査保全活動、施設の環境整備など多岐に渡りお願いしています。将来的には、センターの行事や展示を一緒につくりあげていくことを目指していきたい。」とお話しされていました。
東京農業大学オホーツクキャンパスの先生には、講演会の開催やセンター運営委員会の委員に開館当初から就任いただくなどの関わりがあり、地域の方が濤沸湖の魅力を再認識する機会として、「学生さんの濤沸湖関連の卒業論文を発表するような場を、定期的に設けることができれば、」とお話しされていました。
また、北海道ラムサールネットワークや道東自然系施設ネットワークに加盟し、情報交換などを通して関係各団体・施設との連携も大切にされています。
網走市と小清水町では濤沸湖と周辺域の環境保全に向けた「濤沸湖環境保全活用ビジョン(PDF)」を策定しています。年に1度、濤沸湖周辺の清掃活動(ゴミ拾い)を地域住民と協働で行い、周辺環境の美化にも努めているとのことです。同じく網走市と小清水町が協働で事務局を担う「濤沸湖エコツーリズム推進協議会」では、「濤沸湖保全と利用のためのルール」をつくり、濤沸湖の環境保全と賢明な利用(ワイズユース)が両立できるよう努めています。
濤沸湖水鳥・湿地センターの今後に向けて
「地域の方はオオハクチョウ、ヒシクイなどの野生生物を暖かく見守って生活されています。濤沸湖では近年、タンチョウが増加傾向にあり、今後、更に増えれば新たな問題が生まれるかも知れません。地域の産業と両立する環境保全のあり方を考え、行動していく人を増やしていくことが必要と思い、できることから一歩ずつ進めていきます。濤沸湖ファンクラブの会員さんと協働で濤沸湖の生きもの情報をデーターベース化しています。大学などとも連携して調査を充実させ、濤沸湖の新たな可能性を探っていきたい。」とお話しいただきました。
濤沸湖には小清水原生花園もあります。是非、訪れてみて下さい。
貴重なお話をいただきました細川さん、秋山さん、ありがとうございました。(大崎)
●オホーツク地域の情報は、こちらもご覧ください。
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