ESDの推進

【参加報告】ESD環境教育プログラム成果報告会・交流会

 環境省は、平成25年度から小・中学生向けの環境教育モデルプログラムを作成し、学校の先生などの意見を取り入れながら学校現場等で実証する事業を全国で行ってきました。

 平成27年7月29日(水)よこはま動物園ズーラシアにて、学校現場等でのプログラム実践者からの報告と、プログラムを地域でさらに発展させるため、地域の社会教育施設と協働したプログラム運営のあり方について考えるトークセッションが開催されましたので、当日の様子をご紹介します。

 

1. エクスカーション体験

【共通プログラム「ズーラシアスクール」実施の目的及び概要】

・よこはま動物園ズーラシアでは、学校向けとして学習段階に応じた環境教育プログラムを数多く用意
・月一回の連続プログラム、ズーラシアスクールあり
・「動物と人、それらを取り巻く環境について考える力を次世代へ」という目標を掲げ、ズーラシアのスタッフは子どもたちと関わっている

【プログラムA「日本の絶滅危惧動物」】

・小学校向けではあるが、大人も十分楽しめる
・テーマは「ズーラシアにいる絶滅危惧動物についてもっとよく知ろう!」
・「コウノトリ」、「ツシマヤマネコ」の2班に分かれたので、「ツシマヤマネコ」班を紹介する
・ツシマヤマネコの檻の前で、スタッフが配布した質問票を使い、「ツシマ
ヤマネコが暮らす対馬はどこにあるかな?」や「現在ツシマヤマネコの数
はどのくらいかな?」などの質問を通しながら、ツシマヤマネコが減少した
理由、現在行われている保護活動について解説が行われた

【プログラムB「身近な生きもの」】

・小学校向けのプログラム
・事前課題は、子どもたちは身のまわりの動物を探すこと
・今回は身近な野生動物をタヌキとした。
・実物を見る前に、その姿を想像して描いてみる
・その絵と実物の違いを比較することで、動物の特徴を注意深く観察できた
・このように、絵を描くなどの主体的な活動、問いかけなどの工夫を随所に盛り込みながら、動物保護活動や人と野生動物の共生について考えるプログラム
・ただ実物を「見せる」のではなく、実物を「活かす」ことで、考えたり・気づいたりする力を引き出す狙いがあった
・参加者は、自分の描いた絵との違いを見て、意外に知らないタヌキの姿に驚いていた

2. ポスターセッション

「全国8地域(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州)からの事業成果報告」
北海道からは平成26年に東川町で実施した「カメラと探検~探して、伝える、ぼくらの宝!~」の発表のために、実証校から吉川先生、教育委員会から佐藤さんにお越しいただきました。

【北海道】

写真のまち東川町にちなんで「カメラ」に焦点をあて、身近にある地域の自然を探検・撮影しながら、地域の大切なものについて考えるプログラム。詳細はこちら 

ポスターセッションの中で、「東川町ってどんなところ?」「東川町とカメラの関係は?」など地域特性を捉える質問や、成果物に関する「3~4年生の子どもたちがこうしたパンフレットを作れるのはすごい!」「身近な自然に気づいて伝えることができている」という感想から、子どもたちに身についた能力が確認されました。また、「パンフレットはどう活用されているのか?」という質問に、「道の駅で活用しており、地域づくりにもつながっている」「パンフレットに掲載している子どもたちの声・視点は教材として次年度以降の教師の参考にもなる」など、その後についての意見交換も行われました。

【東北】

「MOTTAINAI(もったいない)の松林を秋田方式で未来へ」(平成25年:秋田県秋田市)
地域に昔から存在する「松林」に焦点をあて、マツクイムシによる松枯れの防除などの実体験を通して松林の恵みに気づき、大切にする心を育てるプログラム。詳細はこちら 

「地球の仲間とつながろう 森の日と「オランウータン」と一緒に生きる喜びを!」(平成26年:秋田県大仙市) 
「絶滅危惧種」に焦点をあて、動物の気持ちになるカードゲームやオランウータンを取り巻く状況について学び、豊かな自然と生き物を守るために主体的に取り組む力を習得するプログラム。詳細はこちら 

【四国】

平成26年の「よいまちつくろう~菜の花プロジェクト~」(平成25年愛媛県松山市)
「菜の花」に焦点をあて、菜の花の種まきからの栽培や花を飾ることを通して、地域方々に喜んでいただくまちづくりを児童で考えるプログラム。また、防災の視点も入れて菜の花をお粥や雑炊にして食べる体験も行った。詳細はこちら

 発表者や参加者からの声として、「子ども達にとって身近な存在であるものを題材にすることが理解促進につながる」「ゲストティチャーの登場は子ども達にとって記憶に残る」「先生が策定委員会であったので現場とのつなぎがスムーズであった」「今まで当たり前におこなってきたものごとの背景が知れたことが収穫」「ESDは楽しいことが一番である」「来年も行うかとなっときに、子ども達がやりたいのかどうか選択ができるようにすることが大切」「子どもの成長があるので、次年度も行うのであれば工夫する必要がある」など伺えた

3. トークセッション「教育施設におけるESD展開の可能性」

講師

村田浩一氏(よこはま動物園ズーラシア 園長)
石田好広氏(足立区鹿浜第一小学校 校長)
小玉敏也氏(麻布大学 教授)

Q.エクスカーションについて
石田氏:ズーラシアは展示の目的をしっかりと持っておられる。絶滅危惧種を目の前にして学べる素晴らしさをエクスカーションで実感した。自分の想像と本物を目の前にしたときの違いを知ることで、よい学習に繋がる。
小玉氏:社会教育施設でも動物園は騒がしくしてもいい場所。誰に対しても開けた場所となっている。動物園は世界を覗くための窓でもある。

Q.ズーラシアの秘訣について
村田氏:ズーラシアでは、小・中・高・大向けと様々なプログラムをスタッフが作成している。スタッフ同士でお客さんへの伝え方は適切であるかどうか、確認し合い改善点を発見する。
あるプログラムの感想に小学生から「私たちの生活や暮らしを変えるしかない」という感想をいただき感動した。

Q.ESDの視点から地域への展開可能性
石田氏:動物園というフィールドを巻き込むことが必要。外来種を含めたペットの飼育に責任を持ってもらうメッセージを発信できるのではないか。
欲を言えばズーラシアの環境教育を受けた人が次のプログラムを考えるような仕組みづくりができるといい。
小玉氏:GAPのつながりがこれから問われてくるのではないか。ESDの10年間で関係者が自身の地域を好きになり地域の課題解決へとひろがった。大人が悩んでいることを子どもに投げて子どもとの意見を共有することが大切になってくるのではないか。
村田氏:鳥の羽1つとっても自然の素晴らしさはお伝えできる。自然の驚きや感動を子ども達の感性に働きかける動物園でありたい。

北海道からご参加いただいた吉川さんと佐藤さんから、感想をいただきました。

吉川 克幸氏(東川町立第二小学校 教諭)

 他の実践からは、各地域における「環境問題」に対し、課題意識をもって取り組みを続けてきたという印象を受けました。そこに、私たちの実践との差があったように思います。また、動物園が身近にありながら、積極的に活用されていないことに気付きました。学校として、有効な活用の仕方を検討していく必要があると感じました。

佐藤 拓氏(東川町教育委員会)

 今回の報告会に地域コーディネーターとして参加させていただきました。エクスカーションでは「日本の絶滅危惧種」に参加し、よこはま動物園ズーラシアの職員の方から懇切丁寧な説明をいただき、絶滅危惧種の理解を深めることができました。
ポスターセッションでは、実証内容について説明を行いました。同時に実証校が作成したパンフレットと共に東川町のパンフレットを配布させていただき、東川町の宣伝も同時にさせていただきました。
トークセッションでは各プレゼンターの方々の興味深いお話を伺うことができ、ESDの理解をさらに深めることができました。
暑い中ではありましたが、大変意義のある報告・交流会に参加できましたことに感謝いたしております。

私たちの身近にある動物園は環境教育には適切な場所です。動物園は、世界の縮図として、海外へ行かなくても海外に生息している生き物を直接みて、生態や生息環境について知ることができる貴重な場所です。
ESD環境教育プログラムでは、「生徒にとって身近な素材」を活用していたため、キーワードである。普段の授業で触れていたり、目にしていたりするものを違った視点で捉えて活用できることが、ESDの良い点だと思います。
身近なところからESDを推進できるようEPO北海道でも取り組んで参ります。