ESDの推進

環境学習セミナー「環境と自然生態系—環境の変化が自然生態系に及ぼす影響を考える −」

平成26年8月16日(土)13:30~16:30に札幌市エルプラザにて環境学習セミナーを行いました。日本の森林、河川、干潟の現況を、実際に行って見てきた体験から、多数の写真に基づいて日本の自然の現状について語ります。原生の自然が、ほとんど失われた日本においては、貴重な生物が絶滅の危機に直面しています。北海道のみならず、日本全国の状況について、過去から現在までの現地の深刻な状況を紹介しました。そして、環境の変化が及ぼす影響について、参加者の皆さんと伴に話し合いました。

講演概要

環境と自然生態系~環境の変化が自然生態系に及ぼす影響を考える~
坂田義成(北海道教育大学非常勤講師)

  地球は46億年前、生命は40億年前に誕生し、光合成を行う生物(シアノバクテリア)は35億年前に海の中で誕生し、大気中のCO2を吸収しO2を放出し た。人類は400万年前に誕生した。そして1万年前、農業(農耕、牧畜)が始まり人類による自然界への影響が大きくなる。200年前、産業革命により大気 中のCO2の濃度が急上昇。70年前(第2次大戦後)頃から近代産業の急速な発展に伴い、大規模な公害が発生した。そして50年前、アメリカのレイチェ ル・カーソンは、その著書「沈黙の春」で農薬の害について告発した。このような歴史の中で人類が環境に及ぼす影響について、3つのテーマで語って頂きまし た。

森林の消失と自然生態系の破壊、日本における動物の絶滅
アマゾンの開拓による、熱帯雨林の近年の減少につ いて示し、このまま熱帯雨林の減少が続くと、地球大気の酸素収支にとって危機的状況になるが、開拓を止める権利はどこの国にもない(北海道も開拓してきて 今がある)。日本では明治以降は富国強兵、戦後は産業復興のため森林の伐採が進み、北海道では生長の早いカラマツ(北海道には従来ない種)が植えられた が、木材としては質が低く、また、こうした人工林は間伐しないと災害にも弱く、林内の生物相も薄い。高度成長期以後、林山地の買い上げによる乱開発も進む 中、知床100平方メートル運動などのように、資金を募って自然環境を保護する取り組みもある。原生林の減少にともなって、ニホンオオカミやニホンカワウ ソ、トキなどが絶滅し、シマフクロウやイトウなどの絶滅が危惧されている。巣箱をつくるなどの対症療法では根本的な解決にはならず、どうして減ってきたの かを考え、どうしたらよいか関係者が皆で協力する必要がある。

ダム、河口堰、干拓による自然環境の激変
水資源 の確保、治水、発電、農地の確保など、開発によって人間が受ける恩恵は大きい。その一方でこうした開発は川を中心とした自然生態系を破壊し、河川、干潟、 湿原に依存する生物に多大な影響を及ぼしている。現在は、このような開発が本当に必要なのかどうか、個々の事例について十分に考える必要がある。

種の保存と生物の大絶滅、自然生態系の保全の重要性
人類誕生まで、過去5回の大絶滅が起こったが、その原因は大隕石の落下、異常な火山活動(スーパープルーム)、気候変動、超新星爆発による放射線等である と考えられている。現在は第6回目の大絶滅と考えられており、年間約4万種が絶滅していると言われ、異常なスピードで進行している(1000年後には地球 生物が全滅する計算になる)。それは主に人類の活動が原因である。自然生態系は生物と環境、生物と生物が互いに関わりあって成立しているので、生物多様性 を維持するには、個々の生物の捕獲を禁じるだけではなく、環境を守り、自然生態系を保全することが必要である。

 

持続可能な開発について考える
有坂美紀(環境省北海道環境パートナーシップオフィス)

  坂田さんのお話の通り、人の開発による環境の変化が自然生態系に影響を与えている事を考え、行動しなければ、社会も地球も持続してくことは不可能です。世 界的には、1992年に開かれた「地球サミット(環境と開発に関する国連会議)」で初めて、人類共通の課題として「環境と開発」について議論され、国連気 候変動枠組条約や生物多様性条約などの重要な国際条約が誕生しました。2002年の第2回地球サミット(持続可能な開発に関する世界首脳会議)では、日本 政府から持続可能な開発のための教育(ESD)の推進が提案されました。ESDの「開発」という言葉には、持続させたい社会を実現するための「人づくり」 という意味が含まれています。2005年に始まった「ESDの10年」の最終年である今年は、ESDに関する世界会議が11月に日本で開催されます。ま た、持続させたい社会と地球の実現に向けた世界共通目標となる「持続可能な開発目標(SDGs)」が国連を中心に策定されているところです。
持 続可能な社会とは時間・地域・立場を超えて、それぞれの命が「らしく生きる」権利を持つことだと思います。そのためには「対立」ではなく「対話」が必要で あり、他者とともに解決しようとする(パートナーシップ)姿勢が重要です。こうした互いの違いを理解するための想像力、問題の本質を考え行動する能力や態 度を育てることがESDとなります。皆さんなら何から始められるかぜひ考えてみてください。
 

ワークショップ

講演のあとは皆で気になったキーワードを挙げて、様々な要因(自然、開発、教育、経済など)がどのように関連しているのか、どのような取り組みが必要なのか話し合いました。
動 植物を含めた自然生態系は様々な物が影響しあっている。環境保全を考えることは、持続可能な経済・100年先を考えたまちづくりとつながり、そのためには 相互理解が必須である。物事の関連に気づき、地球の理想の姿を共有し、行動できる人づくり、ESDが重要であるなどの意見が出されました。
 

共催

NPO法人北海道環境カウンセラー協会、環境学習フォーラム北海道

環境省 北海道環境パートナーシップオフィス(EPO北海道)