「開発教育教材体験ワークショップ&入門セミナー」に参加してきました!
平成27年4月29日(水)かでる2・7 北海道立道民活動センターにて、標記セミナーが今年の8月に開催される第33回開発教育全国研究集会に向けたプレイベントとして行われました。
当日は、開発教育に興味のある学生を初め、NGO、教諭、事業主等、約70名が参加していました。開発教育もESD(持続可能な開発のための教育)同様、一人ひとりの意識が変わり、より良い社会形成に向けた行動を起こしていく教育が重視されていることから、参加し勉強させて頂きました。
セミナーの内容をご紹介いたします。
(1) 教材体験ワークショップ①「フィリピン・スタディツアーで作成した教材」
発表者:東峰 宏紀氏 北海道開発教育ネットワーク(D-net)
・2013年にフィリピンを襲った台風ヨランダを元に、復興支援を模擬体験する教材
・小学校6年生を対象
・スタディツアーの際に出会ったある少女の実体験を紙芝居で紹介
(紙芝居は子ども達へ効果的に言いたいことが伝わるとのこと)
・参加者を支援者(フィリピン政府、村の自治体、国連、国際NGO等)と被災家族5家庭に分け、それぞれの役割について理解する(写真1)
・復興支援の目標はすべての被災家庭の完全復興
・復興度合は各家庭にあるメーターによって示される。支援者が振ったサイコロの目の数によってメーターが上昇し、10となれば完全復興となる。(写真2)
・作戦会議(4分)→行動(サイコロ振り)→振り返り(4分)×5回というサイクル
気づき
→ルールもよく理解できず、話し合いの時間も少ない中、的確な指示を出せるリーダーもいないまま、行動しなくていけず、支援がされない家庭がある等不公平で非効率的な支援となっていた。
→声の大きな家庭に支援が先にされてしまう等、支援の奪い合いが目立った。
→複雑なルールを理解できないまま、行動しながらルール等が理解されていったことは、実際の現場においても、状況がつかめない中、被災者のために行動を起こすことは想定される。このような体験をすると「自分ができることから」と冷静に判断できると考える。
(写真1 役割カード) (写真2 各家庭のメーター表)
(2)教材体験ワークショップ②「パーム油のはなし~地球にやさしいって何だろう?」
発表者:八木 亜紀子氏 開発教育協会(DEAR)
パーム油とは
・植物油脂として生産量は「No.1 パーム油 No.2 大豆 No.3 菜種」
・日本の消費量は「No.1 菜種 No.2 パーム油 No.3 大豆」
・日本人のパーム油の消費量は1人当たり5㎏/年
・パーム油は油やしの実から採取。1つ20㎏(写真3)
・原産は西アフリカですが、現在マレーシアとインドネシアで生産量の90%を占める
・日本はマレーシアから98%輸入している。
なぜ消費が増えているのか。
・価格がオリーブオイルの1/10、無味無臭のため汎用性が高い、バイオディーゼルにも使用されている、「見えない油」といわれ、加工食品に使われる(写真4)
生産現場は・・・
・農薬と殺虫剤。(写真5)
・下草を農薬で枯らし、熱帯雨林特有の多様性が全くない。
・油やしは20年後には作業が大変になるとのことで、枯らしてしまうこともしばしば。
・ロールプレイングで政府、村長、日本の洗剤メーカー、マレーシアの環境NGO、農村開発企業に分かれて、それぞれの立場からパーム油に関連したロールプレイを行った。(写真6)
気づき
→ほとんどの方がパーム油を採取できる植物をココナッツと勘違いしていた。(写真7)
→パーム油の生産現場について、あまり知られていない。
→「パーム油=環境にやさしい」というイメージづけがされている。
→普段使用しているものがどこからきて、どのように生産されていてを知ることが重要であり、すぐに取り組めることである。
※参加型教育の手法:モノランゲージ、フォトランゲージ、3択クイズ、ロールプレイ、ランキング
(写真3 油やしの実) (写真4 身近なものに入っているパーム油)
(写真5 左から2枚目 マスクとゴム手袋をし、手には農薬を油やしの根幹に注入するための注射を持つ)
(写真6 政府の例) (写真7 左下のイラスト:)多くの方イメージしていた油やし)
(3)レクチャー「開発教育って、ESDってなんだ?」
講演者:岩崎 裕保氏 帝塚山学院大学リベラルアーツ学部教授
・開発(de-velop 否‐閉じる)→開いた関係となる。
・積極的平和主義は戦争も貧困もないことである。
・経済成長を優先した結果、東西問題や南北問題が発生してしまった。
・1992年リオデジェナイロにおいて行われた地球サミットにおいて、当時12歳だったセバン・スズキさんが「あなたが世界を変える」というスピーチを各国代表に向けてスピーチ
・2002年のヨハネスブルグ・サミットにおいて当時の小泉首相が2005~2014年の10年間を「国連持続可能な開発のための教育の10年間(国連ESDの10年)」を提案。万場一致で決議。
・昨年名古屋でユネスコ世界会議が行われたがNGOは入れなった。援助者と被援助者の接点はできなかった。
・NGOはボランティアであるという認識が強い。
環境問題の解決には「1人ひとり」の意識と行動が不可欠です。パーム油も需要があるから、かけがいのない森林資源を失ってまでもパーム油の生産を拡大してしまうのです。パーム油すべてをなくしてしまうのではなく、過剰な生産を止めるにはどうしたら良いのでしょうか。
世界で起こっている問題は私たちとも深く関係していることが多いのです。それについて学べるのが、開発教育そしてESDの良い点ではないでしょうか。(大崎)