EPO活動情報

【開催報告 1】シンポジウム「これからの環境教育のありかた~藤田郁男さんの功績と思いをつないで~」

EPO北海道は5月13日(火)、札幌市エルプラザで、札幌市環境プラザ(指定管理者:公益財団法人さっぽろ青少年女性活動協会)、環境学習フォーラム北海道、NPO法人環境活動コンソーシアムえこらぼ、NPO法人ねおす、NPO法人北海道環境カウンセラー協会、公益財団法人北海道環境財団、認定NPO法人北海道市民環境ネットワークと協働で、シンポジウム「これからの環境教育のありかた~藤田郁男さんの功績と思いをつないで~」を開催しました。さらに、開催にあたり、北海道GEMS、NPO法人ezorock、真駒内川水辺の楽校さんにもご協力をいただきました。みなさん、ありがとうございました。

今回のシンポジウムは、2月に亡くなられた藤田郁男先生を偲びつつ、その思いを未来につなげていくことを目的に開催しました。藤田先生にはEPOも大変お世話になりました。
藤田先生は「環境教育」を軸として、高校生の理科教育や教員の養成から、企業の環境活動の指導、地域での野外活動、海外での教育政策の支援まで、多様なフィールドで幅広く、深く活躍されました。
そこで、このシンポジウムでは藤田先生の多様な活動を知る人たちから、その活動を聞き、参加者と共有することを通じて、「環境教育」とは何かを考え、今後の環境教育の進展のために私たちができることは何なのかを考えました。
簡単ではありますが、ここに当日の様子を報告させていただきます。
プログラムは以下の通りです。
16:00 開会の挨拶:岩嵜義純さん(札幌エルプラザ公共4施設館長)
16:05 メインスペーチ1:横山武彦さん(環境学習フォーラム北海道事務局長)
16:20 メインスピーチ2:高木晴光さん(黒松内ぶなの森自然学校、NPO法人ねおす)
16:55 パネルトーク
<パネリスト>
河村 勁さん(元 北海道理科教育センター)
高木晴光さん(黒松内ぶなの森自然学校、NPO法人ねおす)
横山 武彦さん(環境学習フォーラム北海道)
田中 裕紀子さん(元 石狩kids代表)
<進行>
久保田 学さん(公益財団法人北海道環境財団)
岡崎 朱実さん(NPO法人環境活動コンソーシアムえこらぼ)
19:00 閉会(~20:00 参加フリーの懇談会)

開会挨拶:岩嵜さん
環境プラザは今年で開設11年目を迎えました。展示スペース等があり、子どもたちの環境教育に力を入れている施設です。次世代にどのようにプレゼントを残していけるかというコンセプトで作られました。プレゼントとは環境教育です。
環境問題はひとつの団体では解決できません。学校、企業、個人が立場の壁を乗り越えて、つないでくださったのが藤田郁男先生です。環境プラザでも、事業検討部会のご意見番の委員を長く勤めていただきました。
私達のお手本として、藤田先生の歩みから学びたい。そして将来を見つめていきたいと考えて企画を進めてきました。主催、共催の団体がたくさん並んでいますが、すべて藤田先生が関係された団体です。準備不足で至らない点もあるかと思いますが、どうぞ時間の許す限り、語り合い、藤田先生が見つめていた天の高みに、そしてその先に、私たちが行くことができることを願って、本日の開催の挨拶とさせてください。

メインスピーチ1:横山さん
藤田先生と環境学習フォーラム北海道の運営をしてきました。今日は環境教育がこれまでどんな歩みで進められてきたかを振り返ってから、藤田先生がどういうお考えで携わってこられたのかを考えていきたいと思います。
まずは、生活と環境の歴史について。環境悪化により滅亡した古代文明もあれば、中世では伝染病、近年は公害問題が挙げられます。現在は、公害だけではなく、食物連鎖や生物濃縮という形で地域から地球規模に広がりをもってしまっており、生物の活動の中で汚染が進んでいます。単なる汚染の問題ではなくて、持続可能という視点を入れなくてはならないということになり、ESDの10年を契機として法律的な見直しも進んでいます。
藤田先生は全道、全国の環境カウンセラー協会の立ち上げに関わられ、環境教育のオピニオンリーダーであり、環境教育のオーガナイザーでした。実践に裏付けられ、科学的、論理的裏付けのある手法をみなさんに示してきたのではないかと思います。その視点はローカル~グローバル、現在~地史的過去、また行動は、住まいの地元地域~国際的なもの、地元の町内会からフィリピンまでといったように幅広いものでした。さらに言うと、具体的に携わってきたのは、幼児から高齢者まで。学校から市民活動まで、ものすごい広がりが見られました。
環境課題はたくさんあります。環境教育の狙いは実践的なものであり、今日は皆さんのお話を通して、広がりのある藤田先生の活動を知り、協働の重要性が確認できるのではないかと思っています。ありがとうございました。

メインスピーチ2:高木さん
私と藤田先生がお付き合いをしているのを意外に思った方もいると思いますが、藤田先生とは20年ぐらいのお付き合いをさせていただいています。藤田先生には黒松内ぶなの森自然学校の運営協議会の副委員長をしていただいていました。
藤田先生には、NPO法人ねおすをはじめてから2、3年目に出会いました。初めてお会いした時には高校の先生をされていて、フィリピンでの環境教育にも造詣の深い方だとお聞きしました。この出会いがあって、ねおすで行っていた指導者養成コースの講師として藤田先生をお呼びしました。そして、この言葉を教えられたのです。それは「巡検(じゅんけん)」です。
巡検とは、フィールドワークのこと。藤田先生に巡検に連れて行っていただくと、博物学的に歴史、文化、自然と、何から何までお答えになる。すごい人だなと感動し、その中でいろいろ学んできました。ガイドのコツ。学び方のコツ。これは藤田先生とお付き合いする中で、私の中に醸造されてきたものです。
ひとつは「見えるものを見せる」こと。気づかないと分からず、素通りしてしまうものを気付かせるということが大事だということを藤田先生を通して学びました。もうひとつは「見えないものを見せる」こと。あたかも見えるように想像させてみること。これも藤田先生から学んだ手法です。そして、藤田先生はいつも楽しそうで、難しいことを楽しく話してくださいます。
また、私はガイディングする時、ややすると感性的なことばかり言ってしまうのですが、目の前にあることを科学的にきちっとしたことを言うことが重要と学んできました。今の若い人たちは学歴が高くても、科学的なことを上手に伝えられなくなっています。それでは子どもたちに知的好奇心を投げかけることができません。ものごとを科学的に見た上で自然活動にいかないと、単に「楽しかった」で終わってしまいます。そのあとに、「自然のために」という気持ちが出てくるのです。
これからの時代は「共感力」が大事だと思っています。かつてはナンバーワンよりオンリーワンというようなことが教育方針の中で歌われていて、おかしいと思っていました。いまの時代だからこそ、違いがあっても、こことここは同じ、というところを見つけられる力が大切だと思います。
次代は難しい時代に入ってきて、藤田先生がそのなかで我々に残してくれたものがあります。たまには怒られ、たまには馬鹿話に付き合ってくれていましたが、やっぱり今の僕を構成している中で藤田先生から教えていただいたところはとても多いと思っています。改めて思い返して、そう思っています。
もう一つ、想い出で「フラクタル」構造の話があります。「自然の中では無理やり何かをしようとすると壊れてしまう。その場に任せながらよりよい方向を取っていったら、カオスが整っていく。これが自然だ」と。素敵な考え方だと思っています。仕事のやり方、生き方に一致しています。
ねおすツーリズムの方針の中に、時空のデザインをするというのがあるのですが、フラクタル構造のことを思い出して、それは間違っているのではないかと思いました。デザインしてはダメではないか。ベターベターの選択をしていった方が徐々に整っていくのかな、というのをここへ来るときに藤田先生のことを考えながら気づきました。その辺のところをもう一度、今日を原点にして、そんなに仕組まない、時と空間を醸成していこうという方がいいんじゃないかなと思っています。
空間や時間的視野を広げるというのが学校教育でもありますが、その時空をデザインしすぎない。より良いものを選択していくと整っていくのではないかというのを肝に銘じていきたいです。
環境学習、環境教育で育まれる力は3つあると思っています。
1つは「夢を見る力」。未来はまんざらではないぞ!というのが子どもたちや今の世代に必要です。そして、それを実現するための「あきらめない力」。混迷すればするほど、あきらめないでやっていると変化が起こってくる。その時に、「変化を恐れない」こと。自分も自然と変化の時空に乗りながら、変化を恐れない。それを環境教育が育む力だと思っています。

ここに来る途中、余市や仁木の目抜き通りを通ってきて、どんぐりの芽吹きが淡く、すごく美しくなっている。かつての自分はそれを楽しめなかった。自分の中で見れるようになったキッカケをくれてたのが、藤田先生だなとつくづく思います。私は還暦になりますが、藤田先生のところに到達するとは思えません。やっぱりすごい。ここから20年…と改めて感動と感激をしながら、お話をさせていただきました。私のできることをしていきたいと思います。藤田先生のご冥福と、今日、このような時間をいただけたことに感謝いたします。

~~~今回の報告はここまで~~~
パネルトーク等につきましては、端折った部分がありますがご了承ください。このあと、パネルトークへと続きますが、そのご報告は後日改めてさせていただきます。まずは、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。