SDGs(持続可能な開発目標)

【ESD/ユースの取り組み(1)】ユースの可能性は無限大。大きな枠組だからこそユースの声が必要。CYJ

2009年デンマーク・コペンハーゲンで開催された「第15回気候変動枠組条約締約国会議(Conference of the Parties、COP)」に参加した若者(ユース)によって設立されたネットワーク「Climate Youth Japan(CYJ)」。CYJ代表の吉岡渚さんにCYJの取り組みについてインタビューさせていただきました。

(インタビュー日:平成28年10月11日(火))

1.Climate Youth Japanとは?

京都議定書の次の枠組が決まると期待されていたCOP15には、日本からも多くのユースが参加していました。参加した日本人ユ
ースは、他国に比べて存在感が低いと感じ、自主的に毎朝のミーティング、声明文の作成などに取り組み自分たちの意見を発信しました。ここでできた仲間が、帰国後も活動を続けユースの存在感を高めるためのネットワーク組織としてCYJを設立しました。

お話しいただいた吉岡さん

お話しいただいた吉岡さん

(1)アドボカシー活動

中央環境審議会を終えて(提供:CYJ)

中央環境審議会を終えて(提供:CYJ)

CYJは、ビジョンに「ユースが気候変動問題を解決へ導くことで、衡平で持続可能な社会を実現する」とかかげ、3つの事業に取り組んでいます。
ユースの意見を提言文として政府に出しています。パリ協定の採択を受けて、今後は国内政策への提言を強化していく予定です。また、環境省、外務省、経産省と意見交換会を継続的に開催し、ユースの声を政策に反映していきたいと考えております。また、政府のみならず企業との連携も進めています。最近では、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan-CLP)と産業における気候変動対策についての意見交換会を行いました。(報告は、こちらからご覧ください。)

(2)ユースへの意識啓発

気候変動に関するイベントを開催しています。具体的には、東京オリンピック・パラリンピックの低炭素化を目指したイベントを企画しています。イベントは、国際青年環境NGO A SEED JAPAN、Friend of Earth (FOE)、生物多様性若者ネットワーク、NPO法人エコ・リーグといった他の青年環境団体との協働実績があります。

イベント情報はこちらをご覧ください。

(2016年12/21(水)~23(金)に、北海道札幌市で、気候変動問題をビジネスから解決していくためのトレーニングイベントである「Make It Real」を開催。※インタビュー後追記)

(3)COP派遣

(詳細は、「2.COPなど国際的なつながりはどのようなものがありますか?」へ)

気候変動問題において、日本はあまり積極的ではないと感じています。私たちは、将来世代への負担を先送りにしないよう積極的な気候変動対策を国に提言しています。同時に、ユースの意識向上の必要です。

CYJメンバーの年齢制限は決めていません。社会人も含め幅広い年齢層が所属していること、また気候変動に限らず様々な背景をもつメンバーがいることにメリットを感じています。CYJ卒業後も自分がいる場から社会を変えることができると期待しています。

気候変動は様々な分野に関わるからこそ、防災や食料危機など他分野に関心のある仲間ともつながり、取り組みをしていきたいです。ユースの可能性は無限大です。

運営方法は、2つの事業それぞれに統括をおき、代表が全体の進捗をみています。それぞれの事業に興味のあるメンバーと統括を中心に企画・運営を行い、できるだけメンバーのやりたいことが実現されるようにしています。事務所がなく海外在住メンバーもいるため、連絡はSkypeやメールなどオンライン上がほとんど。直接会う方が連帯感は出てきますが、世界各地にいるメンバーが一堂に会することは難しいのが現状です。運営資金は、地球環境基金の助成を受けています。会費の徴収は現在行っていません。

2.COPなど国際的なつながりはどのようなものがありますか?

2010年COP16から毎年5~6名のメンバー派遣を行っています(2015年COP21はテロ発生のため中止)。人材育成をメインにしていたので、公募形式でメンバー募集をしていましたが、今年は国内の政策提言との結び付けができるよう、政策提言に取り組んできた既存の団体メンバー3名を派遣しました。COPへの派遣費用は、最初のころは自腹でしたが地球環境基金など助成金を活用して負担が減るように努力をしています。また、派遣の際には、気候ネットワークさんから、COP参加者枠の提供、勉強会の案内など多岐にわたって活動を支えていただいています。職員の方は長く交渉現場を追っているため、様々なことを教えていただいています。

COY12の様子(提供:CYJ)

COY12の様子(提供:CYJ)

COP開催地では、COY(Conference of Youth)という気候変動に関心のある若者のための会議も開催されます。2015年は、パリのユースから世界各地でCOYを同時開催したいという提案があり、日本で開催しました。気候変動のユースネットワーク「YOUNGO」からお話をいただき、東アジアのCOYをCYJが担当しました。中国やマレーシアなど東アジアのユースを東京に呼んで、気候変動の知識を深める、解決に向けたアクションを考える、提言文の作成を3日間の日程で行いました。パリのユースと連携しながらプログラムの検討を行うことができたのもの同時開催のメリットでした。

「Asia Youth Climate Network」に加入し日常的に情報交換を行い、COPなどでサイドイベントを企画することもあります。今後は、東アジアで共通の目的をもってアクションに取り組みたいと考えています。

3.COPなどに参加したユースの変化はありますか?

大学生の時から気候変動は大きな枠組を変えないと解決は難しいのではと思い、気候ネットワーク主催の政策や国際的な枠組に関する勉強会に参加していました。それがきっかけとなりCOP18へ参加させていただきました。

実際のCOPは、各国の利害が対立しまるで将来世代に任せるかのように、議論が全く進んでいませんでした。そのような中YOUNGOなど他国のユースが、積極的でストレートに自分たちの意見を発信する姿をみて驚きました。当時の私は、ユースは知識も立場もないので何もできないと思っていましたが、COPにいる他国のユースをみて1つのステークホルダーとして主張することが変化につながると実感しました。それからCYJに加わり活動をしています。

COP経験者の中には、私のように「なんでもできる!と可能性を感じる方」、「無力感に襲われる方」と二極化しています。ただ、どちらに転んでも自分ができる範囲でアクションする方が育っています。アクションは海外ユースをまねるだけではなく、日本スタイルで状況に応じた最適なアクションを考えていく必要があります。

4.今後の取り組みについて教えてください

CYJは、ユースのやりたいことを実現できる場でありたいです。社会において自分たちができるアクションや政策決定プロセスへの参加、その過程をとおることで人材が育つのではないかと考えています。また、ユースの声を届けることで関係者の意識が変わることも期待しています。今後は地球環境系の議員連盟と対話の場づくりなどにも挑戦したいです。

1人でも長期で関われる方がいれば情報の積み上げができますが、ユースの活動を邪魔するような存在にはなってはいけない これらを担う人材は、団体内で情報を積み上げ円滑な運営を行うために、長期的に関われる方が必要ではないかという声もあります。ただ、「ユースの自由な発想が生かされる」場であることを念頭にして人材の確保、育成をしていきたいです。

まさに国際会議と地元をつなぐThink Global, Act Local.を実践されているCYJ。政策が気候変動解決への重要なことであると力をいれ、様々な方法でアプローチされています。政策というと壁を感じますが、私たちの暮らしに関わることです。EPO北海道では政策コミュニケーションとして政策への市民参加を推進しています。社会の枠組を考える場づくりを行っていきたいです(大崎)