SDGs(持続可能な開発目標)

【参加報告】セミナー「『持続可能な消費』と消費者・事業者・政府等の役割 ~消費者市民教育・ISO26000・SDGs(持続可能な開発目標)等の最新動向も踏まえて

2015年2月25日(水)、グリーンエコノミーフォーラムが東京で開催したセミナー「『持続可能な消費』と消費者・事業者・政府等の役割 ~消費者市民教育・ISO26000・SDGs(持続可能な開発目標)等の最新動向も踏まえて~」に参加してきましたので、その内容を簡単にご報告します。

※プログラム等の詳細はこちらをご覧ください
http://geforum.net/archives/668

開催内容

第一部 報告

○報告一人目
阿南 久さん 一般社団法人消費者市民社会をつくる会理事長/前消費者庁長官
テーマ:消費者庁と持続可能な消費者市民社会をつくる!
内容:消費者市民とはどんな人か。だまされない消費者をつくるために取り組んできた。2013年度の消費者白書をみると、消費者生活に関する相談件数は92.5万件となっている。相談しない人も含めれば、この何倍にもなる。家計消費は、実は経済全体の6割も占めている。経済の持続的発展のためには、消費者が安心して消費できる市場をつくることが重要。このため、消費者教育は重要であり、2013年12月には、「消費者教育の推進に関する法律」が施行されている。消費者市民社会の形成に参画し、発展に寄与てきりょうになることがうたわれている。消費者教育を推進するための体制づくりも進められており、地域の多様な担い手の結節点として地域協議会の設置を推進している。これまで、(地域の連携を進めようとするとき)教育委員会が壁になる事が多かったものの、この法律は文科省と一緒に作った。基本的には壁はなくなったと考えている。

○報告二人目
古谷 由紀子さん サステナビリティ消費者会議代表/消費者教育推進会議消費者市民育成小委員会座長
テーマ:持続可能な社会への消費者の参画
内容:消費者市民社会・持続可能な社会の理解・普及に課題があるのでは。事例が少ない。行動に結びつかない。この課題解決のために、持続可能な消費の発見、事例整理が必要では。また、戦略的に関係者・組織のネットワーク化、協働の推進をし、市民組織から関係主体に呼びかけていくことが必要では。

○報告三人目
青柳 みどりさん 国立環境研究所社会環境システム研究センター環境計画研究室室長
テーマ:持続可能なライフスタイルと消費への転換に関する研究の最新動向
内容:国際的に持続可能な消費と生産について議論されているが、個々人のライフスタイルの理解に深く関連しているのでは。どんな人生を生きたいのか。自分が自立していかないと持続可能ではない。ゼロ成長(成長なき繁栄)などの新しい概念・考え方が提示されるようになってきた。持続可能なライフスタイルは社会的会話の意味を持つ。様々なライフスタイルは、様々な社会の文化、自然、経済や社会的な遺産を繁栄させなくてはいけない。社会の構造変化へどう対応するのか議論するため、様々なシナリオを研究し、構築してみた。8つのパターンが出てきた。シナリオ構築作業から、リスクへの対応能力、対処できる社会の構築がひついう不可欠。人が生きていくための生活を成り立たせることが基本にあり、その基礎ができて初めて、消費の話ができる。

○報告四人目
関 正雄さん 損保ジャパン日本興亜環境財団専務理事/明治大学経営学部特任准教授
テーマ:消費者・企業のこれから~ISO26000における持続可能な消費に関する議論を踏まえて~
内容:ISO26000はISO初の6つのステークホルダー(政府、産業、労働、消費者、NGO、その他有識者)が参加してつくったもの。ISO26000では、社会的な責任として7つの中核主題を挙げている。それらは相互に依存しているため切り離して考えず、有効な解決方法を出すために相互関連を考える。中核主題にある消費者課題をみてみると、ほとんどが消費者の保護に関すること。一方、現在の消費速度は明らかに持続不可能であり、持続可能な消費を実現することも課題として挙げられている。さらに、消費者課題として教育及び意識の向上が挙げられており、社会的責任を果たす重要な害ねんとしてESDについて言及されている。
持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)では、2050年に向けた具体的なアクション(Action 2020)を策定し、ビジネス・ソリューションを提供していく。

○報告五人目
足立 治郎さん グリーンエコノミーフォーラム理事/JACSES事務局長
テーマ:持続可能な消費とSDGs。
内容:1992年の国連環境開発会議(地球サミット)で、アジェンダ21を策定したが進まなかった。国内においてもローカル・アジェンダ(地域実施計画)を作ってきた動きもあったものの、実際には十分でなかった。現在、貧困層削減のためのミレニアム開発目標の後継となるポスト2015と、2012年の国連持続可能な開発会議(リオ+20)で策定が提唱された持続可能な開発目標(SDGs)が合流することとなり、そのための交渉が行われている。SDGsによって縦割り解消や多様な分野が連携するキッカケになることが期待されている。
リオ+20の合意文章「Future We Want」において、ステークホルダーの参画や動員が重要であるとされていることからも、まずは全体的なSDGsの取り組みに対する意欲を創り出すことが、公正で持続可能な社会を地球規模で構築する第一歩とすべきであると考えている。

第2部 意見交換

座長:古沢 広祐さん 國學院大学教授/JACSES代表理事
司会:黒田 かをりさん CSOネットワーク事務局長/グリーンエコノミーフォーラム理事

古沢さん:新たな展開に向けてネックになっていることは何か、また、希望の光はあるのかについてお聞きしたい。

黒田さん:会場から質問をお受けしたい。
会場1:持続可能な森林経営のために消費者が対応してくことに関心がある。マーケット側がマーキングしたものの動きについて、EU圏とアジア圏で違う気がする。消費者の意識に違いがあるのか、ビジネスの行為の差なのか。
会場2:人間環境開発会議以来、国連は地球の有限性を認識していた。OECDもその有限性を認めたが、経団連ではどうか。
会場3:株主へのリターンに対応することと、持続可能性に関する責任を対応することと異なると思うが、両者についてどのように対応しているのか。

古谷さん:消費者の意識が大事であるが、その意識を向上させるためにはまず情報提供が必要。ただし、マークだけでは分からない。消費者が自分たちの置かれている立場を理解していない場合が多い。社会から影響を受ける存在である一方、影響を与える存在でもある。後者の認識が薄い。
阿南さん:日本の消費者の権利が明記されたのは、2004年。それまで消費者は主役ではなかったということ。情報を得る権利を持つことを消費者は知らなかった。権利と責任があることを自覚してもらうための取り組みが必要。正確な情報を明記することで責任を果たす。
青柳さん:ドイツと日本の消費者を調べた結果、日本人は受け身であり、情報は自ら取りに行かないことが分かった。さらに、所得格差のため選択できない人が増えている。選べない人がいるという現状をまずは知ってほしい。
古沢さん:欧米、特にイギリスでは、グリーンコンシューマー、エシカルコンシューマーがタイトルの本がベストセラーになる。日本では、消費者の自覚確立が残念ながらできて来なかった。
関さん:地球規模の中で生きていかねばならず、有限性が前提になるはず。経団連では、(この分野について)先進的なことをやってきた。CBCCなど1990年前後にできてきた。当時の経団連は一歩、半歩先に行くようなことをしていた。今は引っ張るよりも最大公約数的な動きが大きいと個人的には思う。経団連というより、自分の企業の話がもっと大事であり、個別企業と経団連と別の動きをしている。投資家の動きも大事。

足立さん:我々にとっての富は何か。大切なことは何か。合意を取るためには妥協も必要。各国が厳しい目標ではできない。戦争をしている国もある中で、厳しい目標をつくると、国益に結び付かない。SDGsはペナルティがない。つまり、目標として高いものが立てられるとも言える。議論する過程で交渉官らが大事なことに気付くキッカケにもなる。
古沢さん:消費についても敏感な部分がある。指標化するのが難しい。ピケティが拡散の問題を提起したが、平等の指標を入れようとすると議論が止まってしまう。触れない形でどう入れ込むのかを考えているところ。
阿南さん:国際交渉の場に出ていく日本が縦割りになっている。日本の実情を知った人が行っているのか。消費者も守られていない。ただ、縦割りになっているのは行政だけではなく、NGOも市民も同じ。共有することが大事。各地で始まっている取り組みや地域での円卓会議が持たれることを期待している。

古谷さん:世の中が複雑で縦割りで、余計に困難にしている。行政ではなく、認識している人が動き、行政を動かしていくという方法が良いと思う。何が問題で、何が必要かを政府が入らないでもやっていく。自分たちが動こうという芽が出てきている。希望の光を感じる。地域がそれぞれの課題を広げていく必要がある。
青柳さん:一方で、容器法など法律の効果は大きい。法律に対応し、消費者が行動できるかというとそうでもない。みんながどう認識しているのか見える化するのが私の仕事。持続可能な消費は、「べき論」になりがち。現場を知り、分かりやすく状況を見せる必要がある。「べき論」ではない持続可能な消費を見せていく。
ちなみに、社会のあり方、考え方に関して欧米と日本を比較すると、欧米では社会から借りて事業が成り立つと考える。
関さん:皆が手をつなげばいいのか。問題は目的地はどこか。将来の目的地が日本にはなく、手探り状態。目的がないのが一番の問題で、共通の価値観、持続可能な社会の具体像を詰める必要がある。その時に必要か。ESDだと思う。要するに、共通の価値観を持つこと。意思決定する大人の教育が大事。SDGsの目標4.7にある“Education for All(万人の教育)”。価値観の共有と目的を持つことが大事。
足立さん:突破口は「元気」。目標を高く掲げ、できるか分からないことでもチャレンジする。ネックはせこさと思い込み。違う意見を認めない。お金を囲うこと。思い込みを乗り越える。ネットワークだと違うことを言う人もいる。人間的な寛容性。リーダーは特に自分の主張をするとともに、自分たちを顧みること。自分自身を厳しくみて乗り越える。我々に対する異論、反論は大歓迎。

 

以上、簡単ではありますが、当日の内容をお伝えしました。
消費するということは、わたしたちが普段何気なく行っていることかもしれませんが、実は、世界共通目標となるSDGsに含まれている項目です。消費者は社会に影響を与える側であることを認識し、選択することで世の中を変えていけることを意識したいですね。(報告者:有坂)

※参考:国連事務総長、持続可能な開発に向けて統合報告書を発表 - The Road to Dignity by 2030 -

http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/11211/