ネットワーク形成

平成26年度ESD学び合いフォーラム(第17回高校生環境学習ポスターセッション合同開催)報告

平成26年度ESD学び合いフォーラム(第17回高校生環境学習ポスターセッション合同)開催報告

学校、NGO/NPO、企業などが行う持続可能な社会のための人づくりにつながる取り組みを推進するため、今年もESD 学び合いフォーラムを開催しました。

日 時:平成26年12月13日(土)13:00~16:00
会 場:北海道大学学術交流会館
共 催:EPO北海道、環境学習フォーラム北海道

環境省北海道地方事務所 環境対策課 永井課長 挨拶

 http://epohok.jp/wp-content/themes/epo/common/images/fckeditor/uid000004_DSC05555_20150310aa9d19d3.jpgESDとは持続可能な開発のための教育」です。地球規模で考えると、世界にはいろいろな課題があり、このままでは将来、人間社会は続かないだろうと考えられています。そのためにどのような社会づくり、人づくりを行っていけばよいのか学び、考えることが必要です。
課題解決をした先にある持続可能な社会については、皆さん、さまざまなイメージがあると思うが、環境について、地球規模から身近な足元まで幸せを実感でき る、そしてその幸せを将来の世代にも伝えていくことができる、そうした社会であると思います。ESDという視点を持っていただくと、持続可能な未来をつくる力になると思います。ESDの視点で捉えなおすきっかけになれば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

 

環境学習フォーラム 横山武彦 代表 挨拶

http://epohok.jp/wp-content/themes/epo/common/images/fckeditor/uid000004_DSC05558_201503109286c460.jpg 環境学習フォーラム北海道の横山です。環境に関わる活動の成果を、高校生の皆さんの発表の場というだけではなく、自分の中だけで、学校の中だけで閉じ込めておかないで広く知っていただこうということで、これまでポスターセッションを開催しています。
テーマも自然環境保全に限られたものだけではなく、家庭のことや、まちづくりに関することまで幅広く応募いただいています。今回の活動がさらに発展するようにディスカッションも用意しておりますので、参加された皆さんに意見をいただきながら、幅広くESDを推進していく機会になればよいと思います。どうぞ よろしくお願いいたします。
 

 

高校生環境学習ポスターセッション

「生物多様性を守るために」~北海道札幌旭丘高等学校

 http://epohok.jp/wp-content/themes/epo/common/images/fckeditor/uid000004_IMG_0872_20150310b6999287.jpg札幌市北区あいの里で活動しているカラカネイトトンボの会の活動に10年前から参加しています。現在、トンネウス沼は開削作業中なのですが、以前まで拓北高 校が調査していたトンボ相のモニタリング調査が途絶えています。そこで、トンボ相及び植生に関する調査を行っています。
トンボ相は淡水生態系の 環境指標とすることができるもので、拓北高校の調査により湿生植物の繁茂がトンボ相の多様性を低下させていることがわかっています。Shannon- Wienerの多様度指数に従って、多様度を調査しました。また、植物群落については、5mごとのメッシュで1300マスに分けておおよその割合を踏査 し、面積を調べました。クラスター分析等により、トンボ相ではどの年も優占種が多いことや、拓北高校の調査の通り、開放水面の拡大が影響していることなど がわかりました。
今年は秋山記念生命科学振興財団の科学部活動振興プログラムで、北大の方々などをご紹介いただいて学校祭の発表物等を制作した。

「家庭でできる簡単なエコ」~藤女子高等学校

http://epohok.jp/wp-content/themes/epo/common/images/fckeditor/uid000004_IMG_0879_2015031042a164ee.jpg各家庭で簡単にできるエコな取り組みについて、実際に試みた結果を紹介しました。
(1)お風呂の利用時間を調べる
・母親と自分の利用時間の比較

 ・シャワー10分間の利用で約46
・来客がある月といない月でも大きな差がある
(2)省エネ機器を用いた使用電力の測定
・予想通り、時間当たりで考えるとドライヤーが一番電力を消費している
・つながっているだけで電力を消費している機器の確認ができた
・スマホは2時間くらいで充電できるので、就寝前に充電し切るように時間を調整する
(3)電気及び水の省エネ作戦
(4)生ごみダイエット
(5)エコクッキング


 

講評:北海道立教育研究所付属理科教育センター次長 唐川智幸さん

http://epohok.jp/wp-content/themes/epo/common/images/fckeditor/uid000004_IMG_0884_20150310926b4f75.jpg 日ごろの環境学習に関する実践をまとめて、すばらしいポスターを作成していた。
それぞれの実践が地域で、そして北海道全体で積み重ねていくと、どのような効果があるのか整理をされると、広がっていくのではないかと思う。いずれのポスターも実践をまとめており、地域性や学校の特色を表れていると思う。実践や研究を続けて、生徒の皆さんが環境に対する意識を高めていくこととあわせて、一般の方々に環境の重要性を発信していけるとよい。
冒頭、ESDのお話があった。ESDは、国を挙げて進めている重要なテーマである。環境にとどまらず、経済的な視点、社会・文化的というさまざまな視点から持続可能な未来社会を構築するために、行動できる人材をつくるというところがねらいになっている。日本においては若干、浸透していないのが現状である。 このポスターセッションのように、地道な学校の活動を取り上げて発信するという取り組みが、ESDの目標の達成につながっていくのではないかと思う。高校 生の皆さんには、ESDという視点を踏まえて、それぞれの現状について、環境のみならず経済や社会・文化の視点から課題を整理して、課題を解決するために どのような方策があるか、どう取り組んでいけばいいか、意識しながら取り組んでもらいたい。 今後の一層充実した実践や研究活動に期待する。
 

地域連携のESD事例発表

たきかわ環境フォーラム 平田剛士さん

http://epohok.jp/wp-content/themes/epo/common/images/fckeditor/uid000004_IMG_0891_2015031088af3230.jpg たきかわ環境フォーラムは「エコアップ」を理念に、地元・滝川市内外の自然環境についての情報を収集し、成果の発信(エコカフェ)を行っている。

滝川市はジンギスカン料理発祥の地と言われている。市内ではかつてたくさん羊を飼っていた。軍事用の綿羊生産が目的で、その名残から、現在も農業系の研究施設が市内にある。その敷地内にコウモリがたくさんいると知り、種名や数、生態、そしてどう保全していけばいいのか、知りたいと思い、フォーラムの活動として観察調査を始めることにした。私自身はこれまでコウモリのことをまったく知らなかったので、専門家を頼って指導を受けつつ、まず調査計画の立案、資金調達、関係機関との連携を進めようと考えた。「多様なセクターの協働で地元の自然を見つめる」ということを意識した。

調べていくと、大きな農機具庫内にカグヤコウモリという種が数百頭規模の集団を形成していることがわかった。非常にアメイジングで、いろいろな方々と一緒に調査することになった。オサラッペ・コウモリ研究所(旭川市)の出羽寛さん、独立行政法人森林総合研究所北海道支所の平川浩文さん、また地元の北海道滝川高校理数科チームに調査に加わってもらった。市民団体と地元の学校、プロの専門家の三角関係を結んで、できるだけ詳しく調べて、成果を発信している。

北海道滝川市内の農機具庫を利用するコウモリたち>>http://ecoup.la.coocan.jp/kaguya/index.html

自分の職業はフリーライターで、取材活動や、こうした地元でのボランティア活動の経験を踏まえて、ESDについて考えてみた。自然環境からの恵み、いわゆる「生態系サービス」をいつまでも享受できるように「生物多様性を守りましょう」といわれている。東京電力・福島第一原発の過酷事故で最悪の放射能汚染を被った福島県浜通り地方の生物多様性について取材して、北海道に戻ったときに痛感したのは、こうしてカグヤコウモリの調査や、札幌ワイルドサーモンプロジェクト(札幌・豊平川で野生サケの復元を目指す市民運動)といったフィールド活動ができることが、いかに幸せかということだ。当たり前だと思っていることが当たり前にできることは「幸せ」なことなのだ、と意識すると、持続可能とはどういうことか、何をしたらいいのかということもおのずから見えてくる。「地元の不思議を見つける」 「謎を解こうと調査や観察をしてみる」「その謎解きの結果を皆さんにお伝えしていく」「楽しいことに、どんどん人を巻き込んでいく」「自分もどんどんまきこまれていく」。これがESDの極意だと思う。 

札幌市豊平川さけ科学館 前田有里さん

http://epohok.jp/wp-content/themes/epo/common/images/fckeditor/uid000004_IMG_0895_201503102c7d650b.jpg 札幌市豊平川さけ科学館は自然史系の博物館として運営しておりますが、今回はサケではなく、アメリカザリガニについてお話しします。
2008
年に博物館実習に来ていた学生から、札幌市内にアメリカザリガニが多く生息する川があることを聞き、大変驚いた。川へ見に行くと、調査する前から、目視でたくさん棲息していることが確認できた。2010年に酪農学園大学の学生が卒業論文で調査していたのに続けて2011年に調べてみた。どうやら創成川の下水処理場が関係あることがわかったので、2年間、110カ所で調査を行い、 35カ所で計268匹のアメリカザリガニを見つけた。その影響はあまり明確になっていなかったので、情報を集めてみたところ、国内でのアメリカザリガニの 被害状況として、希少種のトンボが居なくなった、水棲植物も壊滅的な状況であるといった事例があった。
そこで、2011年からは外来種の分布状況について広く発信する活動を展開してきたが、水辺の環境は変化をし続けるもので、こうであればよいという解答はない。アメリカザリガニは外来生物なのでいないほうがいいというのが一般的な解答だが、人によっては、子どもの遊び相手としていた方がいいという人もいる。しかし、他の生き物に甚大が被害が出て駆除を選んだとき、被害が拡大していれば、すぐゼロにすることは難しい。
今後どうしたらよいか考えると、継続してモニタリング調査を行うことと、コンパクトな発信方法で、直接会って口で伝えることが必要であると考える。それと同時に普及してくれる仲間づくりが大事だ思う。そのためにもこうした場に出て発信することは大事だと思っている。
 

パネルディスカッション「調べて、伝えて、つながる取り組みとは」

コーディネーター:ソーシャルベンチャーあんじょう家本舗 松田剛史さん

 http://epohok.jp/wp-content/themes/epo/common/images/fckeditor/uid000004_IMG_0899_20150310e93e8afc.jpg今日の最初のお話では「自分の頭で考える」「行動する」「伝える」というところが大切で、それは人づくりなのだろうなということを言っていた。
またみんなが幸せを実感できる社会をということも言っていて、私もそう思う。いまの世代も、将来の世代もこれまでの実践をESDの視点で捉えなおしましょうということも言っていましたので、この部分がディスカッションの柱になるかと思う。

○平田さん
自分たちが楽しまないと、続かない。最初は盛り上がっても、興味が薄れてくると、2、3年で終わるかなということもある。そこで次々にあれはどうだろう、これはどうだろうと広がっていくのは楽しみによるもの。新しいテーマを見つけて取り組んでいくというところが工夫のしどころか。

○宇久村さん(北海道札幌旭丘高等学校2年)
自分たちの取り組みは大半がずっとトンボをとっているか、草をとっていることだが、珍しくカワセミを見つけたりすると「あっ」と思うことが楽しい。

○木根さん(藤女子高等学校1年)
このごろ父親が電気料金を削減することにはまっていて、ランタンを一人ひとつ持つようにしようとしている。暗くて支障があるので、やめてほしい(笑)

○前田さん
子どもたちの純粋な、まっすぐな質問が驚き。子どもの不思議に同感するので、早く調べたいという気持ちになる。

○松田さん
本日参加している会場のほかの高校の皆さんはどうか。

○函館水産高等学校
ESD
という活動は一人ではできない、周りを巻き込む。自分たちの活動は、越境大気汚染物質が北海道にどう影響を及ぼすかということを研究していた。北海道や日本だけでは調査できないので、隣国と連携をとって国レベルで協力して進めないといけないということを、ESDの活動を通して感じている。

○北海道当別高等学校
造園の勉強している。今年は緑化についても勉強しようということで、景観に取り組んで、それからフットパスに発展。3回、実施した。地域の人たちに協力してもらわないとできないので、自分たちで行き先も考え、協力を依頼しに行ったりすることでいろんな人たちと出会った。巻き込むためにはどうすればいいのか、アドバイスをいただきたい。

○平田さん
手当たり次第、人に当たる。一人見つけると、ぱっと広がることがある。自分の場合は取材記者なので顔が広い。便利なやつを一人つかまえる。中間支援組織にあたってみる。

○前田さん
お声かけいただくことが多い。巻き込まれたときに、自分の抱えているトピックを話して巻き込む、仲間を増やしていく。やり方でもあり、楽しみでもある。

○木根さん
中学2年生のときに、いま入っている同好会が発足した。周りの友達と顧問の先生を探した。最初は7人だったのが20人になった。楽しいことをアピールすること大切だと思う。

○宇久村さん
7月中旬に旭丘祭があって、生物部では生き物40種類を展示する。いままでは部活内だけの展示だったが、今年の6月くらいに秋山財団が活動に関心を持ってくれて、大学や大学院に声をかけて協力してくれる人を探してくれた。また、今回のようにいろんな大会に出させていただいたりすることで、輪が広がるのが楽しい。

○松田さん
つながって、つながれていく。チャンスをとらえて広がっていく。それもまたESD的なところかもしれない。手あたり次第であったり、とりあえず出してみたり、そうしたチャレンジがいい。
みなさんの活動は今後、ESDとしてどんなように展開ができるか。将来こういうふうにしていきたい、なっていくとよいということなどどうでしょう。

○前田さん
やりたいことはいっぱいあって、ニーズもいっぱいあって、でもできない。それであればいっそ、だれかといっしょにやることにしよう、さけ科学館として完結することはやめようということで、まずはイベントから、現在は調査活動なども協働で取り組んでいる。ひとつひとつのモニタリングなどの活動は時間がかかるが、ゆっくりゆっくり成果があがっている。協働でやると、人のつながりも無限に広がっていくので、とらえどころのない、正解のないものを扱うのに有効ではないかと思う。人がなくて、お金がなくてもやれることを考えようと思っている。

○平田さん
環境保全と考えたときに、大雪山とか、そうしたすばらしい自然環境を守ることだけではない。持続可能な、ということを考えると、自分の住んでいる環境、地域の自然を守っていかなければならない。
コウモリはあれだけギャアギャア言っているのに人間には聞こえない。人間が知覚できないところで生態系に位置づけられているということを見つけたときには新鮮だった。コウモリだけではなく、身のまわりの自然にもそういうものが残されている。もう一度、自分の住んでいる地域の環境のことを見直す、自分が持続可能になるように調べてみるということができるかなと思う。

○宇久村さん
今回はNPO法人カラカネイトトンボの会の発表であるが、ほかに6年間、同じ調査をしており、そこでまた調査を続けて、新たな発見をしていきたい。人数が少ないが、違うところにも展開していきたい。それから植生について、手を加えてみるということもできるかと考えている。

○木根さん
母親や父親を巻き込んで、省エネを進めていきたい。自然環境を保護しようという大きなものはやってみたいなと思うけれども、忘れてしまいがちなので、巻き込まれて、違う人を巻き込んでいきたいと思う。

○松田さん
4人の方が巻き込まれる、つながるということを言ったが、そうしたことが「みんなが幸せを実感できる社会」につながると思う。自分で考えていろんなことにチャレンジしたりとか、自分でいろんな人にあたってみるといった行動や、最後に伝えることが大事なのではないか。意識や価値観を持つ人を育てることが、教育というところに課せられた使命なのかなと思う。課題解決のための方策はなんだろうか、そうしたところを私たちはあらためて考えながら、このフォーラムを閉じたいと思う。