地球環境基金との連携事業

【地球環境基金 全国ユース環境活動発表大会】「ササの有効利用2015~森林バイオマスとしてのササ資源の利用~(旭川農業高校森林環境班)」についてお話を伺いました

 平成27年度第1回全国ユース環境活動発表大会(主催:全国ユース環境活動発表大会実行委員会(環境省/(独)環境再生保全機構地球環境基金/国連大学サステナビリティ高等研究所)に参加しました旭川農業高校の森林環境班が取り組むササの利用や同大会に参加した感想などについて、旭川農業高校森林科学科の須山佳彦先生にインタビューさせていただきましたので、ご紹介いたします。(インタビュー日:平成28年9月28日(水))

 

 

ササに着目したきっかけは?

 「本校では授業の一環として木育など4つのテーマを設けた班があり、私は森林環境班を担当しています。前任者は川と関連した取り組みを行っていましたが、赴任してから生徒に原点である森林に立ち返ってみることを提案してみました。生徒と話していく中で、林業の課題になっている『ササ』に着手することとなりました。
本校の演習林ですらササが生い茂り刈っても刈ってもすぐに生え、道を塞いでしまいます。稚樹に太陽光が届かず生育を妨げているのです。これは道内の森林とも共通する課題であり、ササの利用を促進することで林業の活性化に貢献できると考えてます。」

どのようにササを活用していますか?

「竹を使ったキノコ栽培の経験があったので、それを応用し刈り取ったササを培地にしたキノコ栽培に取り組んで、7年目になります。実は竹とササの成分は似ています。生徒からは他にも、ササを使った燻製やカゴをつくるなどおもしろいアイディアがでてきました。燻製に挑戦しましたが、味や香りはイマイチ・・・(笑)。また大量消費という面ではどれも劣っていたため、最終的にキノコの培地にすることとなりました。
方法は、粉々にしたササで培地をつくり、本校の前庭に生えているウスラヒラタケの菌を使い、『オリジナルウスヒラタケ』を栽培しています。味は癖がなくそこそこ・・・です(笑)。キノコの販売なども考えていきたいですが、様々なハードルを乗り越える必要があります。今は、ササがまた森林に戻るような循環ができるように力点を置きます。」

キノコの培地をさらに利用するとも伺いましたが?

 「廃培地の利用はキノコ業界では課題があり、その糸口を見つけることができればと思いキノコの培地を紙にする取り組みを行っています。木の繊維にはいろいろな種類があり、キノコの菌糸は紙づくりに不要となるリグニンを分解する効果があります。紙を作るとき薬品は必要ですが、リグニンが少なくなることで薬品の使用量も減らすことができています。
リグニンがなくなるとセルロースを分解してしまいますが、上質な紙を作ることに力点を置いていないため、神経質にならずリグニンが少なくなることに着目をしています。」

◆作った紙はどうされていますか?

「年賀状などを作ったりしますが、造林に結びつける目標があるため、カミネッコンとして苗木のポットとして使っています。来春はカミネッコンで育てている苗木(トドマツ)を演習林へ初めて植林します。ただし、紙作りはすべて手作業のため2時間で10ポットの完成という状況。道具や時間が限られた中での大量生産は難しいです。
刈り取ったササが造林に結びつく循環のサイクルができあがってきました。実験段階のためこれからも改良を重ねていきたいと思います。」

第1回全国ユース環境活動発表大会の応募のきっかけは?

「本校に東京から講師の方がいらして、持続可能な開発のための教育(ESD)をテーマに生徒へお話いただいたことがありました。そのつながりがあったため大会について知る機会となりました。」

第1回全国ユース環境活動発表大会に参加していかがでしたか?

「農業クラブの発表会もあるため、生徒は人前での発表に慣れておりその点について心配はしていませんでした。生徒がこのような大会に参加できたことは、教育の視点からも生徒が成長する場になったと思います。発表者の1人は大学でも研究を続けたいと、本校の取り組みデータをもって静岡大学に入学しました。
発表者であった3年生(当時)から「2年生の時に出場できていれば、ここで得たことを自分の取り組みにさらに生かすことができた」と話していました。実は、農業高校の世界は狭く農業高校以外との接点がない状況です。大会に集まった様々な高校生と話すことは新鮮であったようです。
また、全国の取り組みが自身の勉強になるだけではなく、自分たちの目指す方向が正しいかどうか確認する機会にもなりました。会場が国連大学のこともあり、世界をみながら私たちも取り組む必要があると生徒たちは実感したようです。アメリカ行きの副賞をねらっていただけかもしれませんが(笑)。知識の面だけではなく、まるでスティーブ・ジョブズのような発表など同世代の方による多種多彩な発表の工夫も拝見し学ぶことが多かったです。
大会の様子を聞いた後輩たちは『この取り組み引き継いでいきたい』と使命感がでていました」

須山先生ありがとうございました!

林業にとって身近な植物である「ササ」から社会の課題を解決に向けた素晴らしい取り組み、全国レベルの大会に参加した生徒さんの成長について、お話を伺わせていただき誠にありがとうございました。この取り組みは高校生環境学習ポスターセッションセッション(主催:環境学習フォーラム北海道)にて優秀賞を受賞されています。
道内の環境に取り組む高校生の活動が全国に知っていただけるよう今年度も「第2回全国ユース環境活動発表大会」の参加校を募集しています。興味・関心がありましたら、まずは資料請求をしてみてください!応募締切は、11月11日(金)です。 (大崎)

[募集対象]
高校生の環境活動(高校、所属団体からご応募ください)(注)
(注)ここでいう「環境活動」とは、環境の保全を目的として行う、研究活動、普及・啓発活動、自然保護活動等の総称を指します。

[応募方法]
・応募希望団体は、まず別紙「問合わせ用紙」に必要事項を記入の上、FAXまたはメールで以下の事務局に資料請求を行ってください。
(全国の高校に送付する冊子「全国ユース環境ネットワーク」に同封している資料請求シートを事務局へFAXしていただいても構いません。)

・資料請求のあった団体に対し、事務局より全国大会実施要領を送付します。

応募先) 独立行政法人環境再生保全機構 地球環境基金部内事務局
TEL:044-520-9505 FAX:044-520-2192 Email:youth@erca.go.jp
事務局URL:http://www.erca.go.jp/jfge/youth/index.html

☆選考・審査基準など詳しくはこちらをご覧ください
http://epohok.jp/gyousei/index.php?page=article&storyid=1969