SDGs(持続可能な開発目標)

【開催報告】どうなる!?「誰ひとり置き去りにしない」新しい地球社会の目標-SDGs-(札幌 12/13)

 平成27年12月13日(日)北海道大学遠友学舎にて開催したセミナーについて、簡単ではありますが報告します。

 昨年9月、国連では新しい世界の目標である持続可能な開発目標(SDGs)が採択されました(目標は「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(外務省仮訳)」の14ページ参照)。SDGsは、貧困、気候変動、格差等世界にある様々な課題を解決するための行動目標です。

「世界の課題」と聞くと遠い存在のように思えます。しかし、世界の課題を地域に落としていくと、日本でも貧困問題や異常気象があるように私達の身近な問題とつながっています。世界の動向について知り、考え、よりよい未来を作るために、参加者の皆さんと考える機会となりました。

プログラム

第1部 SDGsってなんだ?

プレワークショップ
「世界の課題と自分のつながりをみつけよう」
進行:中村絵乃さん(NPO法人開発教育協会 事務局長)
講演
「国連におけるSDGs採択の経緯とその意義・内容について」
講師:今田克司さん(一般財団法人CSOネットワーク 代表理事)

第2部 私たちの暮らしや実践にSDGsを活かすには?

事例紹介
「市民社会からの発信」
講師:今田克司さん(一般財団法人CSOネットワーク代表理事)
「学校・地域における実践例」
講師:中村絵乃さん(NPO法人開発教育協会 事務局長)

ワークショップ「私たちの望む未来を考えよう~2030年に向けて~」
進行:中村絵乃さん(NPO法人開発教育協会 事務局長)

第1部 SDGsってなんだ?

プレワークショップ 「世界の課題と自分のつながりをみつけよう」
進行:中村絵乃さん(NPO法人開発教育協会 事務局長)

「最近気になること」をグループごとにあげてもらい、それがSDGsのどの目標と関連があるのか探してもらうことで、身近にある問題と世界の課題がつながっていることを、気づいていただくためのグループワークを行いました。SDGsと身近な話題がつながった一方で、戦争等安全保障にかかわる部分がSDGsで抜けているのではという新たな気づきもありました。

 

 

講演「国連におけるSDGs採択の経緯とその意義・内容について」
今田克司さん(一般財団法人CSOネットワーク 代表理事)

今田さん:

今朝、テレビ、ラジオ、スマフォ、新聞でニュースをチェックしてきた方はどのくらいますか。多いですね。私も朝起きてニュースを見てきました。今朝の大きなニュースの1つが、COP21。現地時間で土曜日の夜まで会議を延長して終結しました。
COP21のCOPって何でしょうか。日本語はなんでしょうか。
Conference of the Partiesといって、直訳すると締約国会議となります。21は、21回目を指します。気候変動に関する会議として、年に1回開催しています。
SDGsの目標13にあるアスタリスク(*)には「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が気候変動への世界的対応について交渉を行う基本的な国際的、政府間対話の場であると認識している。」と書いてある。なぜわざわざ書いてあるのか。「ごめん、これはあなたの領分であるが目標の中に入れないわけにもいかないので入れましたよ」として入れたためです。目標13で気候変動のことを取り上げてはいけるが、本番はCOPでやるからそんなに口を出さないでほしいとお達しがあったという経緯だということです。
京都議定書が締結されたのは、COP3といい97年に開催されました。COPは92年のリオ会議で決まって、94年ぐらいから始まって、95年から毎年開催し、2015年で21回となりました。21回目の会議で、COP3京都以来の大きな成果があったことになります。COP3で先進国の温暖化ガスの排出規制をして、それから紛糾、COP21で途上国を含めた削減目標を決めることができたのが、今朝の大きなニュースでした。
この話と今日の話は内容的に重なります。
1つ大きなポイントは、COPはConference of the Partiesで締約国であること。締約していなければPartyではない。国際条約に締約しているので、ニュースで「法的拘束力」という言葉があったと思いますが、サインをして守るという約束をしているということ。こことSDGsはちょっと違います。

 

努力目標としてのSDGs

SDGsはあくまでも目標。みんなで交渉して文章をまとめるというのはCOPと一緒ですが、目標ができても、「あとは知らないよ」と言い逃れができてしまいます。一番大事なのは、努力目標に対して市民が監視することです。指標も作るので、「指標を守ってないのはどういうこと」と問い詰めなければならないことは宿命です。
MDGsがそうでした。COPのような国際条約による取り決めと大きな違いです。条約に法的拘束力があるのは強みですが、目標にはそれがないから弱みです。目標であるからこそ市民一人ひとりが監視しなくてはならないものです。市民の関与がより強く求められているのは、むしろSDGsのような国際目標の方です。
今朝に限らず1週間ぐらいCOPの話をするとき、お金の話でもめているとニュースがあったと思います。お金の話はもめます。お金の部分は、法的拘束力があるものの外に置かれるという話がありました。
つまり、2度目標や1.5度目標については合意はしたが、特に途上国が必要なお金は誰が出すのかということが、法的拘束力があるものに含まれていないことは、大事な点だと思います。SDGsにも同じような話があるが、後でお話します。

自己紹介します。私は20年ぐらいNPO/NGOの世界で生きている人間で、2007~2013年南アフリカのヨハネスブルクにあるCIVICUSという団体で働いていました。CIVICUSは SDGsについて市民社会側からインプットしたまとめ役を行った団体で、今日はその経験からお話をします。

おさらいですが、この場に来る前にMDGsやSDGsについて知っていた方はどのくらいますか。半分ぐらいですね。ありがとうございます。
MDGsのMはミレニアムのMであるので2000年にできたものです。20世紀から21世紀に変わるときに、世界の問題、特に開発途上国の問題に対して、国際社会のコミットメントを示そうとしてできたものです。MDGsは国連ミレニアム宣言とセットになっています。

MDGsからSDGsへ

ポイントの1つに「SDGsってたくさんあってよくわからない」があります。MDGsの方が、理念や思想の背骨が通っていて、それはミレニアム宣言を指します。市民社会、NGOの人にとって、MDGsは好きになれないけど、ミレニアム宣言はすごいという人は多い。MDGsを好きになれない人は、貧困層の半減に文句をつけて、残りの半分はどうするのかという議論をいつもしていました。ミレニアム宣言をみると崇高な理念が書かれています。詳しくは「ミレニアム宣言」で引いて、外務省の仮訳をみてください(参考:外務省 ミレニアム宣言(仮訳))。MDGsを考えるときは、理念や思想がミレニアム宣言に組み込まれていることをセットに考える必要があります。
MDGsは8つの目標、21のターゲット、60の指標で具体性を持たせています。これは工夫をしていて、目標の下に3~4つのターゲット、その下に指標があります。それで達成できたかどうかということがわかるので、言い訳がきかないです。目標だけでは「頑張った」で済まされるが、条約ではないがMDGsそういう意味で頑張ったといえます。
2005年以降、MDGsについて市民社会側はいろんな国に達成しろと声をあげてきました。同じ動きがSDGsにおいても必要であると思います。SDGsでは、国連と市民社会がタッグを組みました。各国政府に目標の達成を迫って、国連は自分達が作ったものであるからそうしたい。目標だから宣言したけど、各国政府へは市民社会からちゃんとやってよと声をあげる。という感じで国連と市民社会の利害が一致したのです。
2000年にMDGsのことを知っている人はほとんどいませんでした。2005年にG7がイギリスで開催された時にMDGsにフォーカスがあたって、市民社会もフォーカスして守らなくてはという動きになりました。
これがMDGsの目標(参考:外務省 MDGs 一覧)。
大事なことは、ほとんど途上国の目標であること。貧困・飢餓・初等教育・ジェンダーの平等・乳幼児死亡率・妊産婦の健康・感染症。途上国でやらなくてはならないこと。途上国政府が目標に対して、どのくらい達成したか出さなくてはいけないし、先進国は応援しなくてはならないものです。目標7は環境、目標8はグローバルパートナーシップ。目標8は他の目標に対して先進国が支援しましょうというもの。例えば、ODA(政府開発援助)をGNI0.7%に引き上げるという話があるが、多くの国は守っていない。日本やアメリカは GNI0.2%というレベルです。
国内でMDGsのことがわかる人は、国際協力や開発の研究者、JICA、協力隊、NGO、外務省の人達でした。
達成状況ですが、オセアニアは結構悪い、アフリカサハラ砂漠以南も悪い。目標ごとに見ると目標6(エイズ関係)の達成が低くなっています。目標1の貧困半減に関しては、悪くはないが中国とインドが経済成長によって貧困層がずっと少なくなったことが大きく影響しています。

SDGsは開発と環境の融合

MDGsの流れでSDGsが来ているので、国際社会のコミットメントを目標・ターゲット・指標の三層構造で示す点は同じです。MDGsモデルはここでも継承されています。MDGsと共通していることは、貧困削減が第一目標であること。目標1は、MDGsでは半減、SDGsは貧困層の残された半分に尊厳ある生活を保障する「誰一人置き去りにしない Leave No One Behind」がスローガンになっています。SDGsは、今年9月の国連持続可能な開発サミットで採択されました。

SDGsの大きな特徴の1つに開発と環境の融合があります。
SDGsの採択前は、この一連のプロセスを「ポストMDGs」や「ポスト2015」と呼んでいました。採択後はそのような言い方はされなくなりました。これにどういう意図があったかというと、開発の名前としてMDGsがあって、2010年ぐらいから2015年以降どうするだろう、2000年から2015年までの15年間の目標であるから、その後作らなくては・・・という話がでていました。その議論のことをMDGsの後に来るものとして「ポストMDGs」という言い方をしていました。
一方、COPはリオから始まったと言いました。リオから20年後の「リオ+20」は、2012年に同じ場所のリオデジャナイロで会議がありました。ここでは国連持続可能な開発会議として環境の流れがありました。
気候変動はCOPで行っていた。気候変動をより幅広い環境というトピックに関して、一堂に会してリオから20年後の世界はよくなったのかということを検証し、その後を展望する会議でした。中南米の国とかからSDGsはS=Sustainable(持続可能な)という文字を込めて提唱されました。
私もCIVICUSの立場でリオ+20に行っていますが、この頃開発と環境は別々に走ると思われていて、ポストMDGsは目標ができて、他方でSDGsができ、国際社会は開発と環境という2つの大きなテーマで、同時並行で走らせるのではないかと憶測がありました。
2013年ぐらいにこれを一緒にしようとなりました。開発と環境のテーマがかなりオーバーラップするという認識が広まり、2つあるとめんどくさいので統合し、「ポスト2015」にしようとなったのです。その後、コンサルテーションと言われる意見聴取や協議を国連主催で行ったり、国連が市民社会に頼んだり、CIVICUSのようないくつかのグローバルネットワークが国連から頼まれて市民社会の意見聴取をやったりする動きが2012年ぐらいから始まり、いろんな形で意見聴取が途上国中心に行われました。
COPもそうと思いますが、最後の方になると政府間協議になってしまい、市民社会の出番は少なくなってきます。私は2013年南アフリカから日本に帰ってきましたが、2012~2013年が市民社会の中ではポスト2015のコンサルテーションのピークの時でしたが、その後市民社会の参加はだんだん限られたものになっていきました。
中身は、最終的な合意文書(「我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」)を読むとしっかり書いてあります。ポイントを要約してみます。

SDGsの特徴(1)トランスフォーメーション

「リフォームではなくトランスフォーメーション」。
改革と変革という言葉が伝わるのかやや怪しいところがあるが、英語ではこの2つの言葉が対比されることが多く、「トランスフォーメーション(transformation)」、「トランスフォーマティブ・アジェンダ(transformative agenda)」という言い方をします。つまり「今までのようなやり方では世界は続かないよ」という危機感をかなり強く持っているということです。
危機感が高まったのは2008年。市民社会でグローバルに活躍する人達のなかには、2008年がターニングポイントであったと言う人が多い。それはリーマンショックの年で、あのような国際的な金融危機・財政危機があった時、政府や国際機関は大きな金融機関にどーんとお金をつけました。Too big to fail、つぶしちゃったら負の波及効果が大き過ぎる。理屈はよくわかるけれど、そこでつけた公的資金の額は、市民社会が世界の貧困をなくすためにいくら必要ですといっていた何十倍ものお金だったのです。
市民社会は貧困問題を解決するためには、お金がこのぐらい必要だといっていたが、日本も含めた先進国は財政難を理由にそれをかわしてきたのです。ところが、実は出そうと思えば出すことができることが、あからさまになりました。2008年以降も、途上国を襲う食糧危機、感染症問題、エネルギー危機。危機的状況が次々に起こるのに、既存のシステムはきっちり対応できない。だから「トランスフォーメーション(transformation)」が必要だと市民社会は強く言い始めました。そしてそれが、市民一般にも広まって行きました。アメリカのオキュパイ運動のメッセージは、We are 99% でしたね。
これがSDGsに結実したという言い方はできますが、薄まっている部分も多くあります。多国間交渉の結果ですからそういう意味ではまだら色の最終文書です。

SDGsの特徴(2)普遍性

2つめのポイントは、「先進国、途上国問わず大きな課題となっている問題への取組=普遍性」です。
MDGsが目標1~6まで特に途上国の問題を扱ったものと話しました。それに比べてSDGsは、先進国と途上国両方に当てはまるものが多くみられます。それを「普遍性(ユニバーサリティ)」という言い方で表します。例として目標1を見てみましょう。

我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」14ページに目標の羅列があり、15ページから目標とターゲットという形で書かれています。
「目標1.あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」
1.1~1.bという構成で、それぞれの目標の下にターゲットが書いてあります。指標までの3層構造のうち2層まで書いてあって指標はまだ書いてありません。1.aや1.bもターゲットですが、ローマ字で書いているのは主に実施手段に関わるターゲットという位置づけです。
「1.1 2030 年までに、現在 1 日 1.25 ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。」これがLeave No One Behindを端的に表わすターゲットです。貧困半減がMDGsであり15年たって、あらゆる場所で終わらせるが2030年までの目標です。
「1.2 2030 年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、 女性、子どもの割合を半減させる。」 ここで、「各国定義による」に注目してください。ここで日本も入ってきます。日本に1.25ドル以下で生活する人はごくごく少数であり、この数値は基本的に途上国の話ですね。ところが、「各国定義による貧困状態を半減させる」ということは、今盛んに先進国内での格差の問題がスポットライトに当たっていますが、経済協力開発機構(OECD)が使う1つの考え方に「相対的貧困率」があります。日本では国内の貧困問題を取り上げるのに、通常相対的貧困率を使います。OECDの定義によれば世帯ごとの所得の中間値よりも半分以下が相対的貧困状態です。
例えば子どもの貧困16%とニュースでありますが、日本の子どもの貧困率は上がっています。SDGsの目標1ターゲッット1.2を適用するのであれば、2030年までに日本は相対的貧困率を半分にしなくてはならないというわけです。

SDGsの特徴(3)アカウンタビリティへの注目

3つ目のポイントに移ります。
15年前と比べて大きく違うのはアカウンタビリティへの注目です。行動する市民が必要であること。市民の監視によって約束を守らせるというのがアカウンタビリティのキモです。

その他のポイント

その他にもポイントはいくつかありますが、例えば、交渉プロセスの特徴として「政府間交渉の産物で、全体の一貫性・整合性よりも各国の主張を妥協的に取り組むことが優先」という点は、先ほど述べた目標の主眼が薄められているとこと関連します。SDGsは最終的に17目標169ターゲットとなりましたが、MDGsは、8目標、21ターゲット、60指標。8なら頑張れば覚えられるが、17目標は大変。169になるとそもそも覚えるという数ではなく、批判の的になりました。2013~2014年に、政府間交渉に移るときに「もっと減らそう」という声がありました。17の中には関連するものがあるのでこれを集約すると減らせるとイギリスあたりが主張しましたが、却下されました。多国間交渉でここまで積み上げてきて、みんなでいろんなやり取りをして結果としてこうなったと正当化されたのです。最終文書を読んでもいろんなことが書いてあって、あまり元気になる文章ではありません。ミレニアム宣言は元気の出る文章ですが、こちらはそうはなっていないのは残念です。

大事なのは「民間セクター」です。国連にはグローバルコンパクトという企業が関わる機構があって、そこを中心にSDGsを企業がどうやって実施するのかというガイダンスが出ています。日本の中で現段階でSDGsにアンテナを張っているのは企業が多いです。

資金について、外務省のサイト(持続可能な開発のための2030アジェンダの策定 プロセス全体像)を見てみましょう。
冒頭のCOPと関連がありますが。2015年7月に第3回開発資金国際会議がエチオピアのアディスアベバで開かれました。SDGsでしっかり目標とかターゲットを作っても、実施手段をどうするのか、お金をどうするかという会議です。こちらの会議で、合意文書はできましたが、市民社会の意見はあまり取り入れられませんでした。先進国は、「新興国もあるし、途上国も経済的に豊かになったので、それぞれの国内の資金調達の割合を増やしてどうにかしてください」という意見が多い。途上国は、「それはないので、先進国の皆さんお金出してください」と綱引きがあって、結局しっかりした合意に至っていません。市民社会は国境を超えた徴税機関を提唱しましたが受け入れられませんでした。残念ながら、SDGs実施にかかるお金は誰が出すの?に答えはありません。それが今の国際社会の現状であり、限界でしょう。

SDGsは採択されましたが、三層構造の指標はまだです。17の目標169のターゲット。実際に達成できた、できないを判断するのは、指標レベルです。交渉途中で、来年3月ぐらいに最終的になると言われています。

SDGsの国内実施について

「SDGs採択を受けて、日本も含めて世界各国で国別実施計画をつくるハズ」と書きました。それぞれの国で実施計画を作ってくださいと書いてあるが、条約ではないので拘束力はない。市民社会が日本はどうするのかと声を上げていかなくてはならない。ここは後半で話をします。

私は、動く→動かすという国際協力NGOネットワークの代表をしています。ここや環境系のNGOが中心となって去年から「ポスト2015NGOプラットフォーム」を作っていて、外務省との交渉の窓口となっています。2か月に1回ぐらい会議をしています。
採択されて国内実施はどうするのですか?と外務省に訊くと、「外務省から外に出して省庁横断的なスキームで行う」と言っています。一方環境省では積極的に日本としてどう実施していくか計画を立てています。

国連レベルでハイレベルポリティカルフォーラムがあり、定期的にSDGsの進捗レビューを行います。来年の5月末に日本でG7伊勢志摩サミットがありSDGsの話をしようという流れになっています。SDGs採択後最初のG7サミットなので、話題にはなるでしょう。
日本の市民社会は、普遍性の精神で、従来の開発の枠組みにおける先進国の責任としての取り組みと、国内課題をSDGsをテコに解決しようとする取り組みと、両にらみの戦略作りをしようとしています。北海道だけではなく、地域発の取り組みもいろいろなところでおこってきていますが、まだ始まったばかりです。

なお、「目標12持続可能な生産と消費」は先進国よりの目標です。これを見て、国内の企業を中心に目標12に積極的に取り組もうという動きがでています。

ありがとうございました。

質疑応答

会場:1日1ドルから1.25ドルに変わった仕掛けはあるのか。グローバルコンパクトとして企業が力を入れているようだが、どこまで企業がSDGsや途上国の問題解決に親身になっているのかみえてこない、軍事産業もふくめて、リーマンショックの時にお金を出していたがそうでないときもあった。経済界と企業の関係や「1日1.25ドル」というのは具体的な根拠が知りたい。何かの指標であるのか。

今田さん:
1ドルから1.25ドルというのは、絶対的貧困ラインの改訂です。世界銀行が中心になって専門家を交えて議論しています。今年の後半に1日1.90ドルという貧困ラインを世界銀行が出しましたが、2008年ぐらいから1.25ドルが基準として使われています。

企業については15年前よりも、開発・環境の分野で果たす役割が大きくなって認められています。企業が持っているお金もそうですが、技術であり専門性。特に環境においては、エコプロダクツとして環境に配慮した製品を作れる能力は誰が持っているのかという問いに対し、多国籍企業を中心とした大きな企業の役割に注目が集まっています。
また、企業がCSRや社会貢献を超えて、本業の部分で自分達がいかにして社会に貢献するのかということに敏感になっています。企業を取り巻くそのような仕組みも、市民社会のアドボカシーもあって整備されてきています。例えば、採掘産業は環境負荷の高い種類の産業なので、透明性イニシアティブという国際的な決まりを作って、透明性を確保させようとしています。
ESG原則、「Environment」「Social」「Governance」投資も注目の度合いが増しており、この3つの要素に配慮した投資が進められています。企業がお金を調達する時に、ここに力をいれていないとお金が調達できないような仕組みが育っています。

会場:「SDGsの今後」というスライドにある「従来の改革の枠組みでの」をもう一度説明してほしい。

今田さん:
MDGsの時は、市民社会が行動して、政府に働きかけて、国際協力の分野でやっていた。日本の市民は、日本政府に呼びかけて、日本政府が海外でODAとかでやっていることをMDGsの達成に役立ててもらうようプッシュする必要がありました。
今後もそれはそのまま生きているという意味が「従来の」という言い方です。日本が海外諸国のSDGsを達成しようとする努力を助けるため、海外協力の部分で何をおこなうか、日本の企業が海外で何をやるのか。関心や注意を払って、SDGs達成のために注意していかなくてはなりません。
もう一方で、SGDSが普遍的なものになったことを受けて、日本国内、地域づくりや地域づくりのために何が必要であるのか。SDGsという国際的な枠組みをどう活用するのか、やっていかなくてはならないのです。

第2部 私達の暮らしや実践にSDGsを活かすには?

事例紹介「市民社会からの発信」
今田克司さん(一般財団法人CSOネットワーク 代表理事)

今田さん:
前半の話しでも、日本として対開発途上国と国内で何をしなくてはならないのか両にらみ作戦が必要と申し上げました。2つは実は同じ根っこであり、つながっている事を実感できることが今後の勝負になると思います。普遍性に関しては、ニューヨークで、日本も含め「みんな途上国だ」というスローガンを聞きました。先進国と途上国を分けて考えるのではなく、「1人の市民として何ができるか」考えようということだと思います。
具体的に考えると、日本国内の課題をSDGsの枠組みに捉えることから始められます。例えば、動く→動かすのパンフレットをみると。「女性の権利5、エネルギー7、仕事づくり8、格差是正10、防災減災11、生産消費12」とあります。これらの目標からはじめて、日本でもSDGsをテコにした取り組みができるのではないかとっ考えています。
SDGsは2016年から始まるもので、最初の1~2年はのらりくらりとなるのか、バンッとやることになるのかは予測がついていません。省庁横断的に展開することが必要ですが、省庁の縦割りの中で横ぐしをとおすことができるのかはまだわかりません。

スウェーデンの場合

ストックホルム環境研究所が今年、SDGsの国内策定を先取りする形で出している報告書があります。169のターゲットのうち実施手段(1.a等)と目標17のターゲットを除外した107から、スウェーデンに必要な取り組みとして81のターゲットを抽出しています。目標4、8、10、12、13、14を選び、例えばこのような組み立てはどうかと国に提案しています。日本の国内実施のために参考になるかもしれません。
これは、国レベルで見るとき、日本が当てはまることを全体としてみることに価値がある一方で、今日みたいな地域ベースでの取り組みもどんどんやっていくとよいでしょう。

日本の地域での取り組み

数週間前に愛媛県の内子町で地域の課題とSDGsをどうやって結びつけるかという議論に参加してきました。内子町のまちづくりで、小規模分散型農業、生産者の稼ぐ力の育成がSDGs目標2や8と結びつくのではという発想だったり、道の駅のようなところで、雇用創出、農業森林業の再活性化、エコロジータウン、バイオマスエネルギーの活用等まちづくりの総合計画のキーワードとSDGsのターゲットと結び付けていくみたいな話をしていました。
議論の中で、「地域の課題としてみられていること」と「SDGsをつなげることの意味・意義」として2通りあるのではないかという話になっています。日本の地域課題と世界の課題は概念的に結びついています。実は、タンザニアで農村開発をしている人が頑張っていることと、内子町でこういったことを行っていることは、同じ根の同じグローバルの課題をやって、連帯を醸成することに意味があるのではないかというのがひとつ。もう1つは、こういったSDGs等をいつどのように国として達成目標を明示するのか、不明瞭な事態があることに対し、先取りした取り組みを地域発で動くことにより、地域レベルでのいろんな取り組みが国や国際社会に注目されてモデル地域的に取り上げられる可能性があるのでないか、ということ。そうなるともしかしたら人とお金も集まる。日本は行政主導の国であるので、地域の行政や首長をその気にさせて、その結果、「これはいいね!」と世界に発信する材料になったら、現実的にまちづくりや地域づくりが前に進む。行政が注目することによってお金や人、リソースがつき、SDGsという看板を地域としてあげることでできるかもしれない。
そういった思惑を持って動いている人も出てきています。内子の強さは、首長が町全体でこれを行おうという意思があることでしょうか。あとは市民サイドが自発的・積極的に動きはじめると面白いですね。両方あることが理想的です。
北海道の中でもおもしろい動きをつくっていってほしいなと思います。

まとめ

日本全体としてSDGsについての取り組みを行うことが今後必要です。一部とはいえ企業は前向きになっているので、市民社会が置き去りになってはいけない。G7に向けてこのような動きを加速化していこうという動きはあります。
もう1つ大きな節目が「東京オリンピック」ではないでしょうか。それに向けた取り組みはもう始まっていて、環境や労働、調達の問題等でSDGsと絡む部分もあります。日本国内でSDGsを知っている人はまだまだ少ないですが、東京オリンピックはみんなが知っています。オリンピックとSDGsを結びつける議論を加速させると面白いと思います。
「東京中心の動きと地域中心の動きを融合させていく、あるいはこれからを包含する全体の動きをつくっていく」予測であり希望であり、こういうことやりたいというのであり、発展途上でこれから起こることであり、皆さんがSDGsを使って北海道や道央圏と全国を見ながら、そことどのように連動させていくべきか考えるといいかなと思っています。

質疑応答

会場:課題が普遍的というとことだが、逆にその普遍性によって、地球温暖化等もそうだが、問題が大きくなってしまって、現実性を失ってしまう恐れがあると思った。また、外国の問題に取り組もうとすると、国内でも地方と大都市でそれぞれ問題があって、そこで地方も海外の課題にコミットメントしていくというところに少々浮足立った話のような気がする。例えば、今まであまり海外のことに関心を持っていなかった地方自治体というのはどういう方向でそういう問題を内的なものに変えていくのかが疑問である。

今田さん:
SDGsについて、「良いニュースと悪いニュースがあります」という話しがあります。SDGsの良いニュースは、これがすべてあることです。皆さんが気にしている課題は、すべて含まれていることです。悪いニュースはSDGsにはすべて含まれていることです。おっしゃったとおり。
要するに「これはなんだっけ?」となる危険性がある。何か特別これだと思うイシューの突破口を作るためにこれを使うのは大いにありだと思います。ただ、その時に全体像を見失わないようにすることが必要です。

 

「学校・地域における実践例」
中村絵乃さん(NPO法人開発教育協会 事務局長)

中村さん:
この時間は、SDGsの中でも、特に、学び・教育に特化してお話ししていきます。持続可能な開発目標の「4.学び・教育」に関わる事例を紹介します。皆さんにも配られた最終文章(我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダのタイトルには、「我々の世界を変革する」と書いてあります。改革ではなく「変革」です。つまり、一部を変えるだけではなく、全体を変えて新しくなることです。考えらますか?社会を変革するというのは、とても強い言葉だと思います。

自分は、このままで何も変わらず、誰かを変えることはできません。私達自身も変えていかなくてはならない。そのぐらいの覚悟が必要な大きなメッセージだと思います。なんでそこまでいうのか。最終文章の4ページ「今日の世界」の説明では、貧困、不平等、機会と富と権力が不均衡、ジェンダーが不平等、失業、自然災害があって、紛争、暴力的解決主義が、天然資源の減少、砂漠化等の問題が羅列されている。ひどい世界である。
「目指すべき世界」は2ページにあります。人権や多様性が尊重され、暴力から解放され、全部逆のことが書いてあります。社会的・経済的障害がなくなって、公正、衡平、寛容、包摂性のある世界が示されています。
このような世界を実現するために何ができるか、を考える前に、なぜ、今の世界はこうなってしまったのか?いつから?誰がこうしたのか?責任は誰にあるのか?今の世界で得しているのは誰?一番損をしているのは?困っている人は誰か? 等を改めて考える必要があります。変革が必要であると言われているような社会を作ってしまったのは誰か、日本に住む私達も全く関係ないとは言えないと思います。

このような問題を考えるとき、個人で解決できる部分もありますが、多くの場合は、現在の経済・社会・政治的な構造、仕組み、枠組み、ライフスタイルそれぞれを疑うこと、見直すことから始められると思います。変革が必要と言っているのであるから、明日も同じ生活をしていたらダメです。これだけ電気を使う、資源を使う、快適な生活自体を見直すこと、私達が当然と思っている、仕事のあり方、教育、消費のあり方を疑ってみることが重要です。

私は教育に関わっているので、教育のあり方を見直すのであれば、たとえば、次のような質問が考えられます。「今の教育は就職のため?教える教えられる関係は、いつも先生が教えて生徒は聞くのか?なぜ全国同じカリキュラムなのか?なぜ学校に行かなければならないのか?誰が教育内容を決めているの?そもそも学ぶとはどういうこと?何のために学んでいるのか?何歳まで学ぶのか?何を学ぶのか?」すべてのことにおいて改めて疑問を出しあって、みんなで考えていくことができると思います。
そういうことを改めて考えると少し変革に近づくかもしれない。今日とはちょっと違う明日になるかもしれない。今田さんも、先ほどの話の中で、「変革」のメッセージが薄まっているとおっしゃっていたし、市民が政府に言っていくことが重要であるとおしゃっていたが、変革をどのように進めるのかは、私達自身につきつけられた問であり、それを考え、声を上げていかない限りこのような理想の世界は起きないと思います。

目標4(我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ 17ページ)「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」について見てみましょう。特にターゲット4.7の中には、ESD(持続可能な開発のための教育)にもグローバルシティズンシップ(地球市民性教育)にも言及されています。先進国も途上国もすべての人に質の高い教育が必要であるといっており、ESD、グローバルシティズンシップ、開発教育、人権教育がその教育の中身になっています。そのような教育は、生涯学習として重要で、学校だけはなく、地域や家庭において、誰にとっても必要なものであると書いてあり、教育関係者にとっては、元気づけられる目標ではないかと思います。

SDGsの中で言われている教育をちょっと違う視点で行った例を紹介します。
今田さんが代表をされている「動く→動かす」主催の国際的なキャンペーン「action/2015」のイベント中で、「15人の15歳が考えた15年後の世界と日本」というイベントを行いました。今15歳の中学生は、MDGsが始まった2000年に生まれた子ども達です。
10月7日参議院会館で、中学生が議員に対して15年後になっていてほしい未来、そのために考えてほしいことを提案しました。中学生達は、かなり時間をかけてSDGsの中で、興味のあるテーマを見つけて(ジェンダー、エネルギー、教育)、問題の背景や原因、解決方法を考えて提案しました。
ジェンダーのグループは、女性の社会進出が必要であるが、国会議員や社長たちがもっと、世の中のお母さんたちの大変さを知るべきである、と提案しました。
また、エネルギーのグループは、クリーンエネルギーの展開が必要であること、具体的には中古の太陽光パネルの利用を提案しました。共感した議員が、知り合いの企業に声をかけてくれることになり、その後企業からも子ども達に返事が来て、動きだしそうになっていました。
教育のグループは、軍事費と教育費を対比させ、軍事費を減らして、もっと教育に予算を充てることを提案しました。
参加した生徒達からは、「普段授業をしている中で、そこまで自分が社会に影響を与えられるとは思っていなかったが、今回の経験でもしかしたら世界を変えられるかもしれないと思えた」、「自分が知りたいことが増えた」「中学生だって、大人に自分の意見を伝えていいし、自分ができることが必ずあると気づいた」という感想がありました。

今回参加した生徒達の所属する埼玉県の上尾市立東中学校では、文科省の研究開発学校に指定されて「グローバルシティズンシップ科」の授業を新設し全校で取り組んでいます。先生が教えるのではなく、ファシリテーターとして生徒から意見を引き出していく役割を担い、生徒が主体的に学んでいます。授業を通して生徒の方が先に変化し、「グローバルシティズンシップでやるだけでなく、他の授業でも生徒主体で行ったほうがよい」という発言が生徒から出てきたりして、そのような生徒の変化を見て、先生も少しずつ変化しているそうです。
生徒の学びは、教科や教室、学校を超えて地域や学校をよいものにしたい、という考えに広がっています。生徒が教師の話を聞く授業ではそのような意見は出てきません。生徒が考えられるように、あなたは何を考えたいの?どういう社会をつくりたいの?を問うことで、生徒が主体的に学んでいくことにつながっています。

もう1つの例として、フリースペース「えん」を紹介します。ここは、神奈川県川崎市子ども権利条例をもとに、市とNPOの協働事業として公設民営型のフリースペースとして運営されています。DEARも機会があって、定期的に関わらせてもらっています。
学校に行っていないということだけで、「えん」に集ってくる子どもや若者達は好奇心旺盛であり、そこで、開発教育のワークショップを行っています。もちろん、教室でおこなっているようにはいかず、彼らの興味がなくなればすぐにいなくなってしまう。子ども達からは、「自分には学校も先生もいらない、学びたいことは自分で決めればいい、先生は探せばいい、生きるに必要なものは、大体自分で作れる、家族と友人と知恵があれば、大丈夫」という声があがります。中学生くらいの子は、「暴力に対して、暴力で対抗しない。競争よりも協力を選ぶ」等の意見もありました。いろいろな子どもがいて、その中でも学びのあり方の多様性を私達も学んでいます。
これから学校が変わっていく必要があるし、関わる大人が変わっていくことは重要です。実際に全国で不登校児童・生徒も増えているので、多様な学びをすすめていくことはSDGsの教育目標に当てはまっていると思います。

2015年5月に韓国仁川(インチョン)で世界共通の教育の目標を考える会議があり、世界から政府やNGO、研究者等が集まり議論をしました。教育の中のキーワードとして、「権利・人権」、「衡平性」「包摂性」「質の高い教育」「生涯学習」がありました。
SDGsに「人権」そのものは書かれていませんが、全ての目標にかかわるキーワードだと思います。持続可能な生活を送るためのもっとも必要な権利としての教育を考えていく必要があります。
「衡平性」については、スライドを見て下さい。衡平性(equity)と平等(equality)はちょっと違う。公平は平等とも同じ意味に使われることもあるので、ここではあえて難しい「衡平」という言葉を使います。重要なのは「出口が衡平である」こと。入り口はもともと違う状況であり、環境や立場も違うのにみんなに1ドルあげました「ハイ、衡平」というのは本来の衡平ではない。本当の意味での衡平を保っていく必要があります。

「包摂性」は、先ほどもでてきたインクルーシブ教育や障害や文化の違い等を含めたいろいろな立場の人達と学んでいくこと。「質の高い教育」がどういう意味であるかは各国や各地域で考える必要があります。さらに、生涯学習も重要視されたことは今後の日本の生涯学習にも影響があると思います。
教育に関しては、ESDの後継としてGAP(グローバル・アクション・プログラム)が国連から出されました。これは2014年の名古屋のユネスコ会議で発表されたものであり、教育を再方向づけし、変革すると言っています。そういう意味ではSDGsとおおいに重なります。
SDGsやGAPの推進においては市民社会の参加を重視しています。インチョンの会議でも、市民社会の参加は非常に重視されていました。政府が勝手に決定するのではなく、市民の声を最大限に生かしていく仕組みづくりがされていました。

今後は、実際にGAPも国際レベル、国家レベルで実施計画を作っていくことになります。先ほど出てきたように、衡平性(equity)は必要な支援をされていて、出口が平等であることです。一人ひとりの子どもにとって必要なことは何であるのか。その達成に向けてみんなで協力することを考えるためのキーワードだと思います。
具体的には、現在文科省が中心になってGAPの国内実施計画が作られており、もうすぐパブリックコメントの募集がでるはずです。皆さんからどんどんパブコメを出してほしい。政策策定に市民が関わるための機会を作ることはSDGsの実施に繋がっていくし、実際に市民の力は大きいと思います。草の根で活動している市民団体は、身近な子ども達や市民が抱える問題をよくわかっています。市民が声をあげるスペースをもっと作っていきたいし、日本で行われている教育をウォッチすることも市民や教育関係者の役割です。SDGsに書かれていることを自分のものとして意識していくこと、利用することに価値がある。目の前の子ども達や大人と一緒に学びのあり方を考えるきっかけになります。

現在の教育や社会を疑うことから始めるのは良いと思っていて、みなさんの関心のある消費でも労働でもいい、何かを伺うこと、自分は何に疑問を持っているのか出してみると、それを変革するきっかけになると思います。
ありがとうございました。

質疑応答

会場:equityやインクルーシブとか日本語としてなじみがなく、また日本の文化や教育として訳語がなく、元々は欧米にあった考え方で日本にはないから日本語がないのか、あるいは訳し方が悪い、もっと簡単な訳がないのか。SDGsも同様で、日本語としてわかりにくい。そもそも日本にはない概念なのか、その辺はどのようにお考えか。

中村さん:
おっしゃる通りと思う。ただ、逆にそれらの概念を日本語でどのように表すとよいのか、自分達にとってはどういう意味なのか、一緒に考えるきっかけになると思います。図を出したりして、言葉はよくわからないが、考えてみようから始めるのがいいと思う。言葉がわかりやすくないと広がらないのは確かで「持続可能性」も、自分にとって、地域にとってどういう意味であるか議論ができると思います。
話はずれるかもしれないが、今「中立性」がよく言われている。学校現場でも中立になりなさい、政治的中立をと。でも、私達から考えると、教育の中立性も価値が入ってくる。中立を議論するよりは公正を議論することが必要だと思います。中立といってしまうと、力関係に偏っているように見えます。どのような言葉を使うかは注目されることです。

会場:僕はゆとり教育世代。批判的に言われるが、僕はよかったと思っている。なぜか。今の教育は高校、大学の入試のための教育であった。中高で行われている教育は大嫌いであったが、小学校の時はそういうのは少なかったので、学びたい気持ちは強かった。中高でそういう気持ちが薄くなって大学まで行った。学びたいことを学べるようになり、それを入試のためとか考えないで、現在起きている世界や日本で起きている事をきちんと大学で学べているので良かった。質問は、中高で習う入試のための勉強を変えることはできないのか。

中村さん:
新しい学習指導要領が2020年には施行される。今まさに、議論されているが、そのような声をあげた方がいいと思います。実際に、本当に多くの子ども達がドロップアウトしているし、多くの方が思っていることだと思う。海外の大学の方が進んで変わってきています。先生方から意見はありますか。

会場:小学校の教員である。教育政策の策定に市民社会が参加すること、耳が痛いですが、教育再生実行会議が次々と打ち出してきている。まさに「変革」ですが、全く自分事にできない。国民のほとんどが知らない、現場の教師も知らない、教育再生執行会議の中身は通り過ぎてしまっている。気がついたら多勢無声で、圧倒的な権威の力で変えられてしまう。そこに危機感を持っている。生涯学習は、平成8年ころから言われていた。これだけ高齢化して、介護保険制度がどうしようもない状況になっていて、生涯学習の予算は北海道が大変なようである。生涯学習の話から義務教育の学童に対する支援が始まって、平成19年に全国実態を把握するための調査であったが、北海道は全国の最下位。現状どうやっても難しいです。

ワークショップ「私たちの望む未来を考えよう~2030年に向けて~」
進行:中村絵乃さん(NPO法人開発教育協会)


4~5人のグループで「気がついたこと、印象に残ったこと、よくわからならかったこと、もっと知りたいこと等」を出しながら今日の振り返りをしました。

そのうえで、私達が「SDGsに貢献するためにできることは何か」を考えていく前に、道内でSDGsに関連した取り組みを行っている方よりご紹介いただきました。

1.RCE北海道-道央圏

金子正美さん(酪農学園大学 教授、RCE北海道-道央圏設立準備会 代表)

ESDを地域レベルで実現しようとしてRCEを作ろうとしています。国連大学が窓口になって認定してくれる。世界中にESDを行うための地域拠点といって、RCE(Regional Center of Expertise on Education for Sustainable Development;持続可能な開発のための教育に関する地域拠点)は、136か所の拠点が世界中にある、日本には6か所仙台、横浜、中部、神戸、岡山、北九州。
仙台以北はなかったので、北海道にも作ろうと周りの方と話してきて、北海道の道央圏にも設立をしたく皆さんにもお声掛けさせていただき、申請している。SDGsのローカル版として道央圏で解決をする具体的な取り組みをしようと考えていて、酪農学園大学と北海道大学環境科学院、北海道環境財団、さっぽろ自由学校「遊」、中小企業家同友会をサポートメンバーとしている。
道央圏は石狩、空知、後志、胆振、日高、南は黒松内、北は深川、東は様似、SDGsをローカルで実現をしていこうとしている。来年から本格的に動いていく。
どうぞ、一緒に活動いただきたい

有坂美紀さん(RCE北海道-道央圏設立準備会 事務局)

目的地へ行くためには地図がないと迷ってしまう。自分はどこにいて、なんのために動き、どのように行こうとしているのかを知ると効率的に目的地に到着することができる。SDGsは多様な課題を解決するための地図のようなもの。社会課題を解決するため、自らの役割や活動の意義をSDGsという地図を開き振り返ることで、課題に対して効率的にアプローチでき、モチベーションもあがると思う。SDGsは世界共通の目標であり、私たちも達成する責任を担っており、また北海道にはSDGsを達成する力があると思う。
皆さんの課題解決に対する行動や思いを「見える化」して、世界、日本、北海道の人に発信していきたい。RCEは世界に約130か所あり、その中には北海道と同じような取組を行っている地域もある。世界の人たちと情報共有しながらモチベーションをあげ、課題解決のための新しい手法や考え方を発見するような活動をRCEで進めていきたい。
※RCE北海道-道央圏は、平成28年3月16日に設立されました。
RCE北海道-道央圏ホームページ
RCE北海道-道央圏フェイスブック

2.SDGsのローカルアジェンダづくり

小泉雅弘さん(NPO法人さっぽろ自由学校「遊」)

NPO法人さっぽろ自由学校「遊」もRCEの呼びかけの1つ。
SDGsのローカルアジェンダづくりをRCEの協働事業としてこれから本格的にスタートする。今日のセミナーは、そのスタートという位置づけでもある。今日だけでは終わらず、具体的に北海道の地域性に引きつけて、自分達のアジェンダを作っていくことをしていきたい。
どうしてそれが必要か。自由学校でもESDの活動に関わってきた。ESDは入口がいろいろあり多様な実践があるのだが、ではどこに向かっているのか、「持続可能な開発」は人によってとらえ方が違い、ぼやけている印象がある。1つの共通のビジョン、今日も出てきた普遍的なビジョンが必要かなと思う。
ESDを行っている中での印象として、「持続可能性」、あるいは「教育」については意識されていた。だが、「開発」の部分はESDの中でどこまで焦点があたっていたかなって思うと、疑問。
いろんな理由があるが1つは、日本語の「開発」と「Development」のニュアンスが少し違う。日本語の「開発」は公共事業のイメージ。SDGsの子ども向けガイドブックによれば「十分に食べられなかったり、学校に行けなかったり、病気でも病院にいけなかったり、住んでいるところがとても危険だったり、暴力をふるわれたり、自由に意見が言えなかったりすることをなくして、みんなが安心して、自分の能力を十分に発揮しながら満足して暮らせるようにすること」、これが国際的な「Development」のイメージである。SDGsをみるとそこを基本においていると思う。
ただ、国際的なDevelopmentがバラ色かというとそうでもない。今田さんの話にもあったように、国連は基本的には国家の首脳が集まって決めているので、いろいろ制約がある。制約がある中で、開発、平和、人権等普遍的な理念をまがりなりにも打ち出している。そこと自分達の活動がどう繋がっていけるかと考えたいと思う。別の言い方をすると、私達の生活というのは意識するしないに関わらず、国の政策なり考え方なりに大きく規定されていると、特に最近つくづく思う。地域には独自の歴史、文化、環境があり、それをストレートに自分達のビジョンとして出してみたい。国でSDGsの国内実施政策を作るかもしれないが、薄められたものが地域に落ちてきて、もっと薄められてくる。そういうものではなく、グローバルな目標と直接的につながっていけるといいなという想いがある。
これからSDGsのローカル版を作りを呼び掛けていくのでご参加ください。
連絡先:小泉雅弘さん(NPO法人さっぽろ自由学校「遊」)koizumi@sapporoyu.org
NPO法人さっぽろ自由学校「遊」ホームページ

最後に、今日の話と2つの事例紹介を振り返ってみて「私はこれをしてみたい、これならできそう、考えたいこと」ということを参加者の方にあげていただきました。

会場:最近このような会議に参加させてもらうが多い。教育現場が腐っていると思う。自分が考えを浮かべることで、自分の視線を変えて子ども達が変えれば、組織を動かして、変えるぞ!となる。このような場に参加し続けることで、自分を変えていきたいと考えている
会場:1つの分野に関わらないで、様々な分野に関わっている。たくさんの分野を学んで自分の意見を持っていきたい。やりたいことが見えてくるかなと思う。
会場:半径5メールとの人が笑顔になって、それをみた自分も笑顔になれる活動を続けていきたい。

  


アンケートからも概ね好評をいただきました。こちらにアンケート結果を掲載します。
ご参加いただきました皆さま、関係者の皆さま、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

[主催]第1部:NPO法人さっぽろ自由学校「遊」
第2部:環境省北海道環境パートナーシップオフィス(EPO北海道) 
[協力]RCE北海道‐道央圏設立準備会
[後援]札幌市、北海道
※第1部は平成27年度独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて開催されます。