政策コミュニケーション

【開催報告】平成29年版 環境白書を読む会

平成29年版環境白書を読む会のようす

 

平成29年版白書を読む会を、去る8月25日(金)に開催いたしました。当日は50人近い方に来場いただきました。今回の白書のテーマは「環境から拓く、経済・社会のイノベーション」。

環境省から環境白書・生物多様性白書・循環型白書それぞれのご担当の方が来札、内容について説明いただきました。

当日の発表内容は以下を参照ください(PDFファイル)。

 

 

行事概要

日時:2017年8月25日(金) 13:30~16:00(開場13:00)

場所:札幌市環境プラザ 環境研修室1・2(札幌市)

次第:
1.開会
2.平成29年版環境白書の説明
①全体構成及び環境白書概要の説明  
大臣官房 環境計画課 企画調査室 飯塚友洋氏
②生物多様性白書概要の説明
自然環境局 自然環境計画課 生物多様性戦略推進室 澁澤悠哉氏
③循環型社会白書概要の説明
環境再生・資源循環局 総務課 循環型社会推進室 金田栄氏
3.休憩 
4.意見交流
5.閉会 

[主催]環境省北海道環境パートナーシップオフィス(EPO北海道)、NPO法人北海道環境カウンセラー協会
[共催]環境省北海道地方環境事務所
[協力]札幌市環境プラザ(指定管理者:公益財団法人さっぽろ青少年女性活動協会)、札幌市
[後援]北海道

意見交換内容

【全体構成及び環境白書概要】

SDGsについて

・環境省が直接所管していないSDGsの項目についてどのように実効性を高めていくのかのか。
 → SDGsは環境省だけでなく政府全体が取り組むものとしており、政府のSDGs実施指針に基づき、各省庁で施策を行っていく。
・SDGs達成度に関して、日本の達成度が低いと評価された指標についてはどこで確認できるのか。
 → ベルテルスマン財団、SDSN「SDG INDEX & DASHBOARDS」で確認することができる。
  ・ベルテルスマン財団 http://www.bertelsmann-stiftung.de/en/home/
  ・SDSN「SDG INDEX & DASHBOARDS」 http://www.sdgindex.org/
ひとつのゴールにいくつかある指標の中で一番低い指標の達成度がそのゴール自体の達成度として評価される。つまり、全体的な底上げを目指した指標となっている。達成度が低くても、国としても力を注いでいないということではないことは理解いただきたい。

パリ協定について

・パリ協定の発効について。アメリカが協定に参加していないことを白書の中では評価しているのか。
 → 白書は6月6日に閣議決定。トランプ大統領の発言はその近辺であったので、白書には盛り込まれていない。

エネルギー関連

・環境省は、放射性廃棄物の関係も所管している中で、原子力事業についてどのように考えているのか。省としては長期的なスパンにたってコストやリスクの面からも原発事業をどのように位置づけているのか
 → 前山本大臣の言によると、再エネは推進する。原子力は原子力規制庁で安全に管理されたものについては事業を認めるというスタンス。問題があればストップをかける立場にあるが、問題がないとされたものは認めざるを得ない。
・フランスやドイツではディーゼル車の販売を禁止しているが、日本ではどのような取り組みを行うのか。
 → 排ガス規制、エコカー減税等が推進されていくのではないかと考える。
・エネルギー構成のビジョンとしてはどこに力を入れていくつもりなのか。
 → 環境省としては再生可能エネルギーを活用していきたい。再生可能エネルギーですべてをまかなうことは難しいので、環境負荷の大きいエネルギーを削減していきながら、環境負荷の小さいエネルギーを広げていければと考えている。

その他ご意見

・難しい文章が多い。
 → できるだけ平易な文章になるよう心がけているが、環境白書は法定白書であり、各省庁との協議の結果、正確な表現を優先して、難しい文章になってしまうことがある。
・介護保険のように、みんなが負担する環境税があってしかるべきではないか。
・動画等でPRしても広がらないことに対して検証を行っているのか。国・省の方針を市町村にどう広げていきたいのか。

【生物多様性白書】

生物多様性を巡る4つの危機について

・生物多様性第2の危機「里地里山など人の働きかけの減少による影響」への対処法はあるのか。
 → 内閣府により、地方創生に絡めて、地域の力を取り戻そうという取組が行なわれている。自然には価値があるということを武器にして地域を盛り上げていくなかで、地域の環境は資源であるから大切にしていく、という取組が考えられます。
・第3の危機に「外来生物による生態系の攪乱」があるが、長期的にみると在来種と外来種はない、という考え方もあるという。
 → 「外来種」というのは「侵略的外来種」というのが正しい呼び方であり、生態系に害を与える、人間以外を与える、という「侵略性」がポイントになっている。
また、攪乱のスピードが速すぎるという問題がある。人為的に入ってきたものについてはどう影響するか不明、または影響を与えた場合、生態系の破壊が加速するという事例が多いため、防ぐ必要があると考えている。

国立公園を取り巻く状況

・国立公園満喫プロジェクトについて、利用と保全のバランスは配慮されているのか
 → 国立公園に指定されているところでは、入ってくる人の行為を制限することが可能(マイカー規制、持ち帰りの禁止等)であり、保全とのバランスをとることができる。
・インバウントについては、日本は小さい国なので最低限でよいのでは?
 → 日本は南北に長く、島なども含めると大変広い。自然も変化に富んでおり、多彩な魅力がある。その魅力は外貨を獲得する有効なツールであるとされ、インバウンドが進められている。しかし、そのために破壊されることがないよう、保全を図っていくことが重要。
・「世界水準の『ナショナルパーク』」とは。海外の国立公園のように観光スポットとしての整備を行うということか。アメリカのようなフロントカントリー・バックカントリーのような考え方もあるが、日本の国立公園はどのようにしていくのか。
 → アメリカと日本では事情が異なる。日本の国立公園は国立公園内に家があり(「地域制国立公園」という)、自然と人が融和・共生しているところが最大の魅力。日本独自の魅力を打ち出していこうとしている。

野生生物を取り巻く状況:希少種保全

・動物園や植物園が希少種保全において重要とのことだが、人間が育てたものが野生復帰することは可能か。
→ 可能たらしめるべく努力をしている。トキが成功事例。他の種に関しても取り組みを進めている。

野生生物を取り巻く状況:侵略的外来種

・年々増加する外来種の対策をしてほしい(オオハンゴンソウ等)。ニセアカシヤの植林等が問題になっているが、いかがなものか。
 → オオハンゴンソウ等(特定外来生物)は駆除すべきであると考え、環境省としても駆除事業を実施しているところ。
   ニセアカシヤの植林については、資源としては木材・はちみつ等で有用だが、生態系を破壊するリスクがあるため、植林の際は綿密な計画が必須である。

【循環型社会白書】

3Rについて

・3Rから2Rへということだが、コストのかかるリサイクルへの支援は必要では?
 → 環境省としては企業にはリサイクルしやすいように生産をしていただければと考えている。しかし環境配慮設計には多くのコストがかかり、企業にメリットが少ない。環境省として企業にどのようなメリットを示せるかが重要。
・資源生産性の推移グラフが近年横ばいであるが、なぜか。
 → 資源生産性はGDPから天然資源等投入量を割って算出する。GDPに関しては大きな変化はないため、天然資源等投入量の数値が減っていないということになる。数値が減らない原因としては、2R(リユース、リデュース)が進んでいないのが原因。
・ペットボトル・ゴミ袋など海洋汚染の原因となっていて、各国では規制しているが、わが国ではどうか。
 → 今すぐの規制は難しいが、マイボトルの活用等、リデュースの意識を醸成していきたい。

エネルギーについて

・地熱の利用はなぜ進まないのか。実現性はあるのか。
 → コストが高いこと。開発する場所の確保が難しいこと等が原因となっている。
・水素エネルギーについては、コストは高いが実現性はあるのか。
 → 将来性はあると考えられる。

廃棄物について

・廃棄物の回収については、発想を変えて、生産者や販売者に責任をもってもらい、引き取ってもらえるようなルールに変えてはどうか。
・廃棄物処理法には拡大生産者責任が記載されている。そこに罰則をかければよいのでは。
・産業廃棄物に関連して、岐阜で山崩れが起こっているが、以前からあのようなことがあったのでは。チェックが甘いのでは。

福島の除染について

・福島の除染について、森林、野原などまだまだ除染が必要ではないか。説明をうかがうと除染が進み帰還も順調のように感じるが、現実は決してそうではないのではないか。客観的な表記を望む。
 
以上